Facebook:メッセンジャーからSMS送受信が可能に:もうSMS収入に頼れない通信事業者
Facebookでメッセンジャー開発を務めているDavid Marcus氏は2016年6月14日に、Facebookが提供している「メッセンジャー」でしょーとメッセージ(SMS)の送信が可能になることを自身の投稿で明らかにした。まずはAndroid版のみに対応していく。メッセンジャーからSMSが送信可能な地域は限定的で、日本では利用できない。
メッセージアプリからショートメッセージ(SMS)送信へ
Facebookのメッセンジャーの連絡先とスマホの電話帳の連絡先を同期すると、メッセンジャーで繋がっていない友人・知人が紫色で表示される。紫色になっている連絡先の友人ともメッセンジャーでSMSの送受信ができるようになる。Facebookは2013年にもメッセンジャーとSMSの連携を行っていたが利用者が伸びなかったので提供停止していた。使い勝手が悪かったのだろう。Facebookは全世界で毎月16億人が利用しており、メッセンジャーは10億人以上が利用している。
コミュニケーションの中心はSMSからメッセージアプリへ
日本ではガラケーの時代から携帯電話ではメールが利用できたので、誰もが携帯電話でのコミュニケーションではメールを利用していたのでショートメッセージ(SMS)は普及していなかったので、現在でもほとんど利用されていない。通信事業者が異なるSMSの送受信も長いことできなかったこともSMSが利用されてこなかった要因の1つだ。
しかし海外では携帯電話でのコミュニケーションは音声通話とショートメッセージ(SMS)が主流だったし、現在でも多くの人がSMSを利用している。そしてスマホが登場すると多くの人がWhatsAppやメッセンジャーなどメッセージアプリを利用するようになった。SMSは国や通信事業者によって違うが「1通につき数円」なのでユーザーも利用料金を気にしながら利用していたが、メッセージアプリの登場で利用料金を気にせずにメッセージのやり取りができるようになった。
欧米のような先進国ではスマホが普及しSMSが無制限に利用できるポストペイドの料金プランに加入している人が多いことから、今でもSMSを利用している人も多い。一方で、特にインドや東南アジア、アフリカなど新興国ではスマホが普及してもプリペイドのSIMカードが主流である。プリペイドでは使いたい時にSIMカードを購入し、残金が無くなったら必要に応じてチャージをしていく。そのため、1人で複数枚のSIMカードを持っている人が多いので、携帯電話の人口普及率は100%を超えている国がほとんどである。1人で1つの会社のSIMカードを複数持っていることも珍しくない。常に新しいキャンペーンを行っていると「キャンペーン対象のSIMカード」を購入して通信費用を少しでも安く済ませる。そしてキャンペーン期間が終了してしまったら、そのSIMカードは使われなくなることも多い。
減少するSMSの利用
SIMカードは1枚につき1つの電話番号である。プリペイドのSIMカードを頻繁に買い替えている人が多いということは、その都度電話番号が変わってしまう。電話番号が変わると相手にSMSを送付しても、相手はその番号をもう利用していないということになる。1人で複数枚SIMを利用している場合、そのSIMの電話番号にメッセージを送付しても携帯電話に挿入してない、ということも多くある。
新しいSIMカードにした時に仲が良い友人や家族にはすぐに通知するだろうが、頻繁にSIMカードを買い替えていくうちに、通知するのも面倒になってくることがある。もはや電話番号に基づいたメッセージのやり取りが面倒になってしまう。そうなると、例えば以前に電話をかけた番号、SMSを送信した電話番号ではもう連絡が取れなくなってしまい、人間関係に問題が生じたり、連絡が取れずにタイミングを失して仕事が来なかったりすることもよくある。こうなると仕事にもプライベートにも支障をきたすことになる。
そこでSIMカード(電話番号)を変えても自分であることが認識されるメッセージアプリの方がSMSよりも使い勝手が良くなる。SIMカードが変わって電話番号が変わったとしても、メッセージアプリであれば、相手に新しい電話番号を通知して自分であることを認識してもらう必要はないから利便性が高い。
このような背景もあって新興国を中心にコミュニケーションの中心がSMSからメッセージアプリにシフトしていき、SMSの利用は減少していった。日本ではSMSはほとんど利用されていないから、SMS利用者が減少しても通信事業者の収益に大きな影響はないが、海外の多くの通信事業者にとってはSMSの通信収入は重要な収入源だったが、年々減少している。そして価格競争も激しいことから、今後もSMS収入が回復する見込みはない。そのことは海外の通信事業者もよく理解しており、いつまでもSMS収入に依存しようとは思っていない。通信事業者としてはSMSの利用促進でSMS収入の回復を図るよりも、メッセージアプリやFacebookなどのソーシャルメディア、YouTubeのような動画視聴を利用してもらうためのデータ通信の利用を促進していく方が効率的だ。