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今年最もイタかったセレブ:アンバー・ハードが受けた屈辱はすべて自業自得

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
泣き顔でも涙を出せなかったアンバー・ハード(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 2022年の終わりも、もう秒読み段階。この1年、悪い意味で最も注目されたセレブを挙げるなら、アンバー・ハードは間違いなくそのひとりだろう。

 今年4月に始まったジョニー・デップとの名誉毀損裁判では、ハードがついた嘘が次々に暴露された。それだけでも十分恥ずかしいが、この裁判ではほかにもいろいろと屈辱的な事実が露呈されている。

 たとえば、演技力のなさ。デップはふたりの出会いのきっかけとなった「ラム・ダイアリー」のために彼女をオーディションした時、演技力に不安があったと証言しているし、後にハードが「アクアマン」の役を獲得できたのも、デップがワーナー・ブラザースの重役3人に電話をかけたおかげだったことがこの裁判でわかったのだ。だが、コネのおかげで実力に見合わない役を得ても、ボロが出るのは当然。主演のジェイソン・モモアに匹敵するスターのカリスマはハードにはなく、続編では彼女の出番が大幅に縮小されることになった。ワーナー・ブラザースの重役が、そう証言している。

 さらにハードは、裁判中にライブで演技力のほどを世間に披露することにもなった。デップから受けた暴力について証言するハードは、顔は泣いていても、涙がまるで出ていない。ハードは昔から泣く演技が苦手だったそうだが、自分の人生がかかっている時でも一滴の涙も出せないとは、プロの女優としてかなりお粗末である。

寄付をすると言いつつするつもりがなかった偽善

 デップとの離婚で700万ドルを受け取ることになった時、ハードは、その全額をアメリカ自由人権協会(ACLU)とロサンゼルス子供病院に半分ずつ寄付すると宣言した。しかし、実際のところ、彼女は「全部寄付をした」と言いつつ、ほとんどのお金をキープしていたのだ。デップ側は、明確な証拠とともに、陪審員にその事実を突きつけている。

 ハードと彼女の弁護士イレーン・ブレデホフトは、ハードが約束通り寄付をできないでいるのは、デップがこの裁判を起こしたせいで弁護士代がかかるからだと言い訳をした。それも嘘だ。なぜなら、彼女の弁護士代は、彼女が加入するホームオーナーズ保険から出ているのである。しかも、裁判に先立って、ハード側は、弁護士代がどこから出ているのかを裁判で持ち出さないよう要求していた。彼女らは、自ら望んだ取り決めを破ったのだ。

 そもそも、「寄付する」などという余計なことを言わなくて良かったのである。離婚でもらったお金を寄付するべきだなどとは、誰も言っていない。だが、”お金目当てではない良い人”を装いたいがために、ハードはやるつもりのないことをあえて約束した。その結果、本当の彼女がどんな人なのかを晒すことになってしまったのだ。

結婚中も平気で不倫をしていた

 この名誉毀損裁判で、ハードは、何の根拠もないのにデップは常に自分の浮気を疑ってきたと証言した。とくにジェームズ・フランコとの関係を疑い、彼のことを嫌っていたとも、ハードは述べている。

 しかし、デップが疑う理由は十分にあったのだ。それはデップの弁護士が持ち込んだ防犯ビデオに明らかだった。その防犯ビデオは、デップとハードが住んでいたロサンゼルスのペントハウスのエレベーターに設置されたもの。ビデオの時刻は午後11時になろうとしている頃で、ハードがひとりでエレベーターに乗ってきたところから始まる。1階に着いて扉が開くと彼女は出て行き、まもなくフランコと一緒に入ってくる。ふたりはエレベーターの隅で親密そうに身を寄せ、扉が開くと一緒に出ていく。この夜、デップは、ロサンゼルスに所有するもう一軒の家に泊まっていた。

 また、ハードの元親友ラケル“ロッキー”・ペニントンの当時の婚約者で、デップが所有するペントハウスのひとつにペニントンと無料で住まわせてもらっていたジョシュ・ドリューは、デップと結婚していた時にハードがイーロン・マスク、カーラ・デルヴィーニュと3人での不倫セックスをしていたと証言している。その話はペニントンから聞いたそうだ。この裁判では、誰かから聞いた話について証言することが禁止されていたため、その部分の映像は陪審員に見せられなかったが、メディアにリークした。ハードは、彼女自身が言うような、夫のことを心から愛しているのに疑われる可哀想な妻では決してなかったのである。

ハードの2023年はどうなるのか

 6月に出た判決で、ハードはデップに1,035万ドルの賠償金を払うよう言い渡された。納得がいかないハードは控訴をし、デップも受けて立ったが、今月、ハードがデップに100万ドルを払うことで和解が成立している。100万ドルは、ハードの弁護士代を払ってきた保険会社が出す。デップはそのお金を寄付すると宣言している(ハードがそう言いつつ実行しなかったことを踏まえて、デップの弁護士は『寄付すると約束するし実際にする』と声明で述べている)。

 こちらはこれにて終了したが、ハードは保険会社のひとつからも訴訟されており、来年も裁判所との縁は切れそうにない。本業のほうは相変わらず何もないが、「アクアマン」続編が来年末に公開なので、その頃にはまた彼女のシーンについて話題が出るのかもしれない。

 示談が成立した後にインスタグラムに投稿したメッセージで、ハードは、「これからも恐れずに真実を語り続ける」「誰も私から声を奪うことはできない」と書いている。それはつまり、来年も彼女はDV被害者として活動を続けるつもりということだろう。裁判に負けた後には、ハードが告白本を書くつもりだという報道も出た。それが本当ならば、来年、彼女はその執筆で忙しくなるのかもしれない。しかし、彼女の言っていることが嘘だという判決が出た今、その嘘をまた語る本を出そうという出版社はあるのか疑問だ。もしあったとして、出版後、再び訴訟される心配はないのだろうか。

 ハードにとって2022年が人生で最悪の年だったことに疑いの余地はない。その年を来年もさらに引きずるのか、それともこの年のことはすっぱり捨てて新スタートを切るのか。それは彼女自身が決めること。それによって彼女の2023年は変わる。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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