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アンバー・ハード、さらに泥沼。当てにしていた保険会社が支払いを拒否

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 アンバー・ハードがさらに苦境に追い込まれた。頼りにしていた保険会社が、カリフォルニア州の裁判所を通じてハードへの支払いを拒否してきたのだ。

 ハードが加入しているのは、ニューヨーク・マリン&ジェネラル社の賠償保険。名誉毀損を含め、何らかの賠償責任を負うことになった場合、ハードはこの保険から上限100万ドルの支払いを受けることができる。

 ただし、それはあくまで本人が知らないうちに誰かの名誉を毀損してしまったケースに対してだ。カリフォルニア州では、「保険加入者による意図的な行動のせいで損害が生じた場合、保険会社には支払い義務がない」と規定で定められており、今回はそれに当たると、ニューヨーク・マリンは主張してきたのである。陪審員の判決でも、ハードの書いた意見記事が「ジョニー・デップについてのもの」であり、「悪意があった」とされたのだから、当然だろう。

 デップがハードに払わなければならない200万ドルを差し引くと、ハードが払う賠償金は835万ドル。たとえこの保険金が貰えたとしても到底足りないが、100万ドルは日本円にするとおよそ1億3,500万円だ。少しでもお金が必要な時にそれが入って来なくなるのは、痛いに違いない。

 これとは別に、ハードは、保険会社トラベラーズの家の保険に加入している。家の保険の中には、名誉毀損で訴訟された場合の弁護士代をカバーするものもあり、ハードの弁護士代はそこから出ていた。裁判の終わりのほうでハードの弁護士イレーン・ブレデホフトがちらりと言ったところでは、ハードの弁護士代は600万ドルにも上るらしい。この保険に入っていて本当に良かったと、ハードは胸をなでおろしたはずだ。

 だが、そんな多額の費用をカバーしてきたトラベラーズは、ニューヨーク・マリンに対し、半分を負担するよう訴訟を起こしたのである。それを受けて、ニューヨーク・マリンはトラベラーズを逆訴訟した。デップ対ハードというメインのバトルの外では、そんな別の争いも起こっていたのだ。ハードの周辺は、まさにめちゃくちゃ。昔の友人とも縁が切れているし、見渡す限り泥沼である。

陪審員がなりすましだったとしても裁判やり直しはない

 当のハードは、とにかくデップへの支払いを免れようと、判決の無効と裁判のやり直しを要求している。だが、それに関して、ハードに不都合な事実が浮上した。

 ハードの弁護士チームは、名誉毀損裁判で陪審員を務めた男性のひとりが、陪審員として呼ばれた本人ではなく、同じ家に住む同姓同名で25歳若い別人だったと主張。それは大問題であり、ハードは不利益を被ったと述べている。その意見書は、独立記念日の連休前の現地時間今月1日に提出され、8日に補足の書類が追加された。裁判所からの返答は、まだない。しかし、陪審員に関するヴァージニア州の規定8.01-353に、このように書かれていることが判明したのだ。

「裁判で陪審員を務める人々のリストは、3営業日前までに、裁判にかかわるすべての弁護士に配布されなければならない。そのリストには、陪審員全員の名前、年齢、住所、職業、勤務先が記載されていなければならない。このリストの情報に何か間違いがあった場合、それは判決無効や控訴の根拠とはならない。これらの情報が正しいかどうかを確認するのは、裁判にかかわる両者の責任である」。

 裁判所側の答は、ここにある。その陪審員が本来呼ばれた男性の息子だったにしても、それを早くに突き止めなかったのはハードの弁護士の責任であり、それを理由に判決無効を要求することはできないのだ。

 これでハードは八方塞がりになってしまった。裁判のやり直しが無理となると、最初の宣言に立ち戻って控訴となる。控訴の期限は2週間後。控訴するには、ハードが払うべき賠償金全額と、年6%の利子が必要だ。そんな中で保険会社が正当に支払いを拒否してきた。今やハードにはお金も、時間もない。彼女と彼女の弁護士チームは、果たして次にどう出るのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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