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3人での不倫セックス、謎の姉。名誉毀損裁判でわかったアンバー・ハードについてのいくつかのこと

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 名誉毀損裁判でジョニー・デップが勝訴して、ちょうど1ヶ月。ひと区切りついた今振り返ってみると、6週間にわたって多くの人が証言したあの裁判では、実にいろいろな詳細が出てきたことが思い出される。裁判の結果に直接影響を与えないちょっとした事実にも、意外だったこと、知らなかったことがあった。そのいくつかをここで挙げてみる。

アンバー・ハードには姉がいた

 アンバー・ハードにウィットニー・ヘンリケスという妹がいるのは周知の事実(ヘンリケスは彼女の夫の名字)。ヘンリケスは、デップとハードが同棲を始めるとまもなくデップが所有する5つのペントハウスのひとつに引っ越し、ハードのそばで暮らした。ヘンリケス自身、ハードからしょっちゅう暴力を受けてきたのだが(デップによれば、ハードはヘンリケスをサンドバッグのように扱っていた)、裁判ではハードがデップから殴られるのを目撃したとハードのために証言をしている。デップがハードに暴力をふるうのを見たと証言したのはヘンリケスだけだ。

 ウィキペディアにもハードには妹がいるとしか書かれておらず、世間はずっと、ハードはふたり姉妹なのだと信じてきた。だが、裁判での証言の初日、ハードの弁護士に基本的なバックグラウンドを聞かれた時、ハードは、テキサス州オースティンの「誰も聞いたことのない小さな街」で、「父、母、妹と育ちました」と言い、さらに「私には姉もいます」とつけ加えたのだ。

 ハードはあくまでさらりと言ったが、これを聞き逃さなかった人たちにとって、これはちょっとした衝撃だった。カップルだった頃、ハードの家族にたっぷりサービスしてあげたデップからもこの姉の存在が聞かれたことはないし、結婚式にも姉は来ていない。ネットで検索しても姉の情報は一切出てこず、彼女がどんな人でどこにいるのかは謎のままだ。ハードが「父、母、妹と育ちました」と言っていることからも、一緒の家に住んでいなかったのは確か。ソーシャルメディアでは、ハードの父が別の女性との間に作った子供ではないかとの憶測が強い。この裁判でハードの嘘が大バッシングされる今、なおさらこの姉は出てきたくないことだろう。

 ところでハードは初日の証言で住所を聞かれた時に「カリフォルニア州ヤッカ・バレー」と答えている。ハードがロサンゼルスを離れ、ジョシュア・ツリー国立公園に近い砂漠の地に一軒家を買っていたことがわかったのも、このひとことがきっかけだ。今回の裁判の弁護士代は、この家の保険から出たようである。家の保険が名誉毀損で訴えられた場合の弁護士代をカバーすることがあるというのも、多くの人が今回初めて知ったことだった。

デップとの結婚中、ハードは3人で不倫セックスをしていた

 デップと結婚していた頃に、ハードがジェームズ・フランコを家に引き込んでいたことは、裁判で再生された防犯ビデオが証明している。だが、彼女の不倫相手はフランコだけではなかった。ハードの親友ラケル“ロッキー”・ペニントンの当時の婚約者で、デップが所有するペントハウスのひとつに住まわせてもらっていたジョシュ・ドリューは、ハードがイーロン・マスク、女優のカーラ・デルヴィーニュと3人でセックスをしたと聞いたと証言しているのだ。

 ただし、その部分は、裁判には出てきていない。ドリューは裁判所に出廷せず、事前にビデオ録画する形で証言に応じたのだが、その発言は編集でカットされていた。裁判では、誰かがこう言っていた、という他人経由の話をするのが禁じられていたからだと思われる(たとえば、デップにひどい態度を取るハードに腹を立てた長女リリー=ローズちゃんがハードに送ったメールの内容をデップが言おうとした時も、ストップがかかった)。

 しかし、ドリューがそれについて語る部分のビデオがメディアにリークし、人はその事実を知ることになったのだ。2019年11月19日のタイムスタンプが押されたそのビデオで、顔の見えない男性は、ドリューに「ジョニー・デップと結婚している時にアンバー・ハードがイーロン・マスク、カーラ・デルヴィーニュと肉体関係を持ったとロッキーは言っていましたか?」と聞いている。それに対し、ドリューは「イエス」と答えた。さらに男性が「まだジョニー・デップと結婚している時に、アンバー・ハードは、イーロン・マスク、カーラ・デルヴィーニュと一緒に一夜を過ごしたと彼女(ロッキー)は言ったのですか?」と聞くと、ドリューはまた「イエス」と答えている。「それはつまり3人での関係を持ったことですか?」とさらに聞かれると、ドリューは「その通りです」と述べた。

 裁判で、ハードは、何の根拠もないのに自分の浮気を疑ったとデップの嫉妬深さを責めている。だが、デップが本当に嫉妬深かったかどうかはさておき、根拠はあったのだ。それを知っていた身近な人たちは、自分たちに家をタダで提供してくれているデップに、そのことを隠していたのである。

当時のハードの取り巻きはもう誰も残っていない

 そんな親密なことも教えてもらえるほど親しかったペニントンは、もはやハードの友達ではない。ビデオでの証言で、ペニントンは、かつてハードと「とても仲良しでした」と認めつつ、今は「私たちはお互いと話しません。敵だというわけではないですが」と語っている。疎遠になった原因を聞かれると、「自分の人生にいる別の人たちともっと時間を過ごしたかったからです。ほかの人間関係を優先したいと思いました」と、曖昧な答をした。

ビデオで証言をしたラケル”ロッキー”・ペニントン
ビデオで証言をしたラケル”ロッキー”・ペニントン写真:代表撮影/ロイター/アフロ

 ペニントンとドリューが交際を始めたのは、デップとハードが恋人同士だった2014年6月。先にペニントンがデップの所有するペントハウスのひとつに住み始め、婚約した直後の2015年秋、ドリューもそこで同棲を始めた。ふたりは2018年秋に離婚をしており、ペニントンがハードと連絡を取っていない今、ドリューとハードの関係も切れている。

 もうひとり、やはりハードがとても親しくしていた人のひとりであるIO・ティレット・ライトも、ビデオでの証言で、1年前にハードとの友人関係は終わったと述べている。彼とハードが友達になったのは2011年末で、2013年8月から10ヶ月ほど、彼はデップの所有する家のひとつに無料で住まわせてもらっていた。

 そんなふうにかつての取り巻きを失ったハードだが、新しい強力な味方ができたことも、この裁判で明らかになっている。イヴ・バーロウというイギリス人の音楽ジャーナリストだ。彼女は裁判で、法関係者が座る前の席を陣取って、あたかもハードの弁護士のひとりであるかのように振る舞っていた。法廷内からツイートをしたり、テキストメッセージを送ったりしたことで判事から追い出されたが、その後も彼女はツイッターで徹底的にハードを弁護し、デップの支持者を執拗なまでに攻撃し続けている。

 バーロウがハードの親友なのか、新恋人なのかは不明。だが、ハードのためにヴァージニア州の裁判所まで来てくれたのは、妹とバーロウだけだ。バーロウのハードへの忠誠心は相当なもの。控訴を誓うハードにとって、彼女は今後も欠かせない存在になりそうである。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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