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イスラエル首相の逮捕状請求にジョージ・クルーニーの妻が関与。キャリアへの影響はある?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ジョージ&アマル・クルーニー夫妻(写真:REX/アフロ)

 世界が注目する国際紛争に、ハリウッドスターの名前が絡んできた。国際刑事裁判所(ICC)が、イスラエルのネタニヤフ首相、ガラント国防相、イスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏などに対する逮捕状を請求したことに、ジョージ・クルーニーの妻アマル・クルーニーが深くかかわっていたことがわかったのだ。

 アマルは人権弁護士。クルーニー夫妻は、人権を侵害された人に無料の法律相談を提供する非営利団体Clooney Foundation for Justice(CFJ)を運営し、ウクライナの状況にも注意を払っている。これまでガザ地区で起きている状況について何も発言しなかったことはソーシャルメディアで批判されたりもしたのだが、現地時間20日、アマルは、CFJのウェブサイトを更新し、今年1月、ICCから法律の専門家のひとりとして招かれていたことを告白。ほかの専門家たちと状況を分析した結果、これらのリーダーのやったことは戦争犯罪、人権侵害であると、全員一致の結論に達したと明かした。

 だが、アマルがその声明を出したのと時をほぼ同じくして、バイデン大統領は、ICCの逮捕状請求を「言語道断」と批判。長年の民主党支持者で、本人も政界入りを狙っていると噂されたことがあるジョージは、来月行われるバイデンの選挙資金集めイベントにも出席が予定されている。ジョージ本人はこの件について何も発言していないが、ムードが複雑になったのは否めない。

 そもそも、イスラエルとハマスの紛争は、ハリウッド関係者が強い関心を持つ事柄だ。今年のオスカー授賞式で「関心領域」のジョナサン・グレイザー監督がバッシングを受けたのは、最も良い例。「関心領域」はホロコーストを舞台にした映画だが、受賞スピーチで、これは過去についてだけではなく現在についても語るものだと、グレイザーがイスラエル、ガザの名前を出してきたことが、多くのユダヤ系業界人から反感を買ったのである。ユダヤ系を撲滅しようとしたホロコーストと、今起きている戦争を一緒にするべきではないというのが、抗議する人たちの主な主張だ。ちなみにグレイザーもユダヤ系で、彼をサポートする声もある。

 一方、「AND JUST LIKE THAT.../セックス&ザ・シティ新章」に第1シーズンから出演してきたサラ・ラミレスは、第3シーズンをクビにされたのは自分が親パレスチナの姿勢を取っているせいだと述べた(ただし、事情に詳しい人は、メディアに対し、ラミレスが降板させられたのはストーリー上、今後あまり必要がないと判断されたからに過ぎないと語っている)。また、スーザン・サランドンも、親パレスチナの集会に出席し、スピーチをした結果、タレントエージェンシーから契約を切られている。

スピルバーグやカッツェンバーグのホームパーティには呼ばれなくなる?

 今回の件が、ジョージのハリウッドでの立ち位置に何らかの影響を与えるのかどうかはわからない。だが、ソーシャルメディアにはすでに「この夫妻はもうスピルバーグやカッツェンバーグの家でのディナーパーティには呼ばれないだろうね」などという書き込みが見られる。

 バツイチで、ラスベガスのカクテルウエイトレスやイタリアのテレビパーソナリティなど、あらゆる若い美女と交際してきたプレイボーイのジョージが、レバノン生まれのイギリス人アマル・アラムディン(旧姓)と婚約したのは、今からちょうど10年前の2014年春。同年秋、ふたりはイタリアで結婚式を挙げた。当時、ジョージは53歳、アマルは36歳。2017年6月には、ベイビーが誕生。高齢だったことと、男の子と女の子の双子だったこともあり、体外受精かとの憶測も出たが、ジョージは、自然な妊娠で、1ヶ月早産だったと語っている。

 ジョージの最近の主演作は、ジュリア・ロバーツと共演した「チケット・トゥ・パラダイス」(2022)。近年、ロマンチックコメディを劇場でヒットさせるのは難しいと言われてきたが、この映画は全世界で1億6,800万ドルを売り上げ、成功した。昨年末には、監督作「The Boys in the Boat(原題)」が北米公開に(日本公開については未定)。来月日本公開予定の「ブルー きみは大丈夫」には声の出演をし、ノア・バームバック監督の次回作も撮り終えている。共演はアダム・サンドラー、ローラ・ダーン、グレタ・ガーウィグ、アイラ・フィッシャー、パトリック・ウィルソン、ジム・ブロードベントら。

 夫妻は結婚直後、アマルの実家に近いイギリスのソニングに豪邸を購入した。しかし、お金をかけた大規模な改装工事が終わっても一家は姿を見せないまま。そこへ、最近になって、夫妻がフランスに800万ドルの不動産を購入し、そこを本拠地としたことが判明。アマルは子供たちをロサンゼルスやイギリスの学校に通わせるのを嫌がり、この場所での生活を気に入っているとのことだ。結婚前にジョージが購入していた家を含め、夫妻はほかに、カリフォルニア、イタリアのコモ湖、ニューヨーク、メキシコのロス・カボスに不動産を所有している。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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