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ワンコインランチがふたたび脚光をあびるワケ

坂口孝則コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家
500円で食べられるワンコインランチが人気です(写真:アフロ)

このところワンコインランチがふたたび脚光をあびています。500円以下で食べられるランチ。インフレの時代のはずなのに逆行しているのでしょうか。

【マクロ的観点】

1.まずやむなき側面があります。大企業は賃上げが実現するかもしれませんし、ボーナスもある。でも日本の大半の75%は中小零細企業で働いています。実質賃金が伸びていないのです。

下のニュースを含め、22ヶ月連続で実質賃金がマイナスだったと報じられました。

【速報】「実質賃金」22か月連続マイナス…物価上昇に賃金上昇追いつかず 毎月勤労統計調査1月分

2.そして、さまざまな推計がありますが、2024年(あるいは2024年度)は家計負担が前年比+5万円~8万円/年とされます。これだけ年間の負担が増えてしまうわけです。エネルギーも商品も、値上げが続いているためです。

そこで、一年間は52週間ありますから、52×1,000円=52,000円。つまり、週に1,000円ほど節約できれば、負担増と同額になります。あるいは週に2,000円くらい節約すると、家計負担増ぶんを取り返す計算です。

ざっくりとですが、700円のランチを500円に切り替える。そうすれば週に5日出勤していたら、200円×5=1,000円で節約が実現します。だから、ワンコインランチを求める、節約志向が高まるのは必然といえます。

【ミクロ的観点】

下のニュースが各社の動向を伝えています。

物価高で「ワンコイン」昼食どうなる? 「500円」こだわる松屋やサイゼ、セブンは399円弁当拡大 低価格競争の行方

コンビニも400円程度の弁当と、PB(プライベートブランド)のペットボトル飲料をセットで購入してもらって500円。ワンコインとして、街の飲食店のライバルになったわけです。

実際に各種のアンケートを見ても、ランチを500円以下にしたと回答が増えています。またランチに使う支出金額も微減しています。

さらに昼食を食べない、という人。自炊で弁当を持っていく(+水筒)派も増えています。あと何ヶ月で実質賃金が上向くかは不明ですがあと何ヶ月かは工夫で乗り切りたいものです。

【飲食店側からの見方】

なお、ワンコインランチとして提供する場合、コスト削減といっても限界があります。ただでさえ人手不足ですからね。仕入れを下げるとか、効率化といっても、なかなか難しい。

だから、現在は「マーケティング(宣伝広告費)としての割り切り」「ついで買いの誘発」になっています。前者はランチで店を知ってもらい、夜に食事に来てもらう。昼は現金・キャッシュを確保し、店のPRとしてワンコインランチを活用。

思うに、ワンコインランチや、その他の激安メニューはたしかに安いのですが、それ以外は「そんなに安くないな」と感じることは多いでしょう。

また後者は、文字通り、他の商品もついでに注文してもらうこと。業種は違いますがスーパーマーケットでは、激安商品はたしかに安いのですが、ついでに買い物を重ねてもらうことで粗利を確保するモデルです。

背景にはまだ強い節約志向があります。はたして、どれくらい続くことでしょうか。

コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家

テレビ・ラジオコメンテーター(レギュラーは日テレ「スッキリ!!」等)。大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務、原価企画に従事。その後、コンサルタントとしてサプライチェーン革新や小売業改革などに携わる。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、サプライチェーン学講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)、『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)、『モチベーションで仕事はできない』(ベスト新書)など著書27作

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