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米菓でコメ不足の不合理な現実~サプライチェーンの問題

坂口孝則コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家
コメが足りない問題をご存知でしょうか(写真:イメージマート)

現在、日本の米菓業界は未曽有の試練に直面しています。原材料である国産米の価格が高騰し、さらには人手不足という問題も重なっています。

有名な製造各社(大手企業)は、生産効率の向上や原料の安定供給に試行錯誤を重ねていますが、コストの上昇と供給不足が市場全体に影響を及ぼしています。

今回の問題が生じた理由

国産米の不足と高騰は、昨年の猛暑による高温障害が主な原因です。

これにより、米の生産量が激減しました。また、円安の影響で輸入米も高騰しており、原料コストの増大が避けられません。

さらに、COVID-19の影響で長引く人手不足が、生産ラインの維持を困難にしています。

調達・サプライチェーン観点からの解決策

代替原料の模索:外国産米の使用増加や他の穀物への部分的な切り替えを考慮する。

契約農家との連携強化:契約農家との長期契約を増やし、より安定した米の供給を確保する。

技術革新の推進:生産効率を高めるための技術革新を進める。具体的には、自動化と省人化技術の導入を加速する。

サプライチェーンの観点から

現在の米菓市場は、消費者のライフスタイルの変化に強く影響されています。

特に「おうち時間」の増加によるスナック菓子への需要は顕著であり、消費者は健康や環境への配慮を重視する傾向にあります。

このニーズの変化は、米菓製品の開発に新たな方向性をもたらしており、以下の点が注目されます。

健康志向製品の開発:米菓業界は、低カロリー、低糖質、または栄養強化など、健康を意識した製品の開発に注力しています。例えば、糖尿病患者や健康を気遣う消費者向けに、血糖値の上昇を抑える種類の米を使用した新商品の開発が進んでいます。

持続可能な調達方法の導入:環境への配慮から、地域限定の小規模農家と連携し、持続可能な農法で栽培された米を使用する動きが見られます。これにより、環境負荷の低減だけでなく、地域経済の活性化にも寄与することが可能です。

*また、供給チェーン全体のカーボンフットプリントの削済に向けて、輸送ルートの最適化や再生可能エネルギーの使用を積極的に推進しています。

消費者との直接的なコミュニケーション:SNSやオンラインプラットフォームを活用して、消費者と直接的に交流することで、消費者の声を製品開発に反映させることが増えています。これにより、より個人のニーズに合った製品を市場に送り出すことが可能になっています。

ただ単に商品を供給するのではなく、消費者の生活スタイルや価値観に合わせた商品を提供することを目指すべきでしょうね。その結果、消費者の支持を得ることができ、長期的な顧客関係を築くための土台となるはずです。このようにして米菓業界は、持続可能で競争力のある市場を形成していくことを期待したいですねえ。

コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家

テレビ・ラジオコメンテーター(レギュラーは日テレ「スッキリ!!」等)。大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務、原価企画に従事。その後、コンサルタントとしてサプライチェーン革新や小売業改革などに携わる。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、サプライチェーン学講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)、『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)、『モチベーションで仕事はできない』(ベスト新書)など著書27作

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