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美貌に秘めたハングリー精神と役の深掘り。永瀬莉子が青春映画で「普段の食べ方や歩き方も役に寄せました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
ポニーキャニオン提供

「Seventeen」の専属モデルとして人気を博す一方、ドラマや映画出演も相次ぐ永瀬莉子。6月に公開された青春映画『君は放課後インソムニア』では、森七菜と奥平大兼が演じた共に不眠症の高校生の同級生役で出演し、Blu-ray&DVDも発売された。美麗なルックスの裏で「ハングリー精神は強い」と言い、毎回の役作りも人一倍、念入りに取り組んでいるそうだ。

現場の雰囲気作りは積極的にやっています

――この2年、ほぼ毎クール、ドラマに出演しています。

永瀬 とてもありがたいです。毎回しっかりお芝居をしたい想いが強まって、良いエネルギーに変わっています。

――4年前に女優デビューして、演技に関して、どこかで“掴めた”みたいな感覚もありました?

永瀬 ABEMAでやった『17.3(about a sex)』は印象深いです。初めて座長の立場になって、現場での立ち居振る舞いを学びました。スタッフさんに積極的に声を掛けてコミュニケーションを取ったり、雰囲気作りをすることが大切だと実感して、その後も継続してやっています。

――現場の雰囲気が良ければ、演技にも良い影響が出ると。

永瀬 そうですね。自分のことをスタッフさんに知ってもらって、こちらもスタッフさんがどんな方かわかると、また会いたいなと現場に行くモチベーションにもなります。あと、あのドラマはお芝居の面でもすごく挑戦ができました。

――高校生の性がテーマでした。

永瀬 センシティブな内容でしたけど、10代の私たちだから伝えられたものがあって。「保健体育の授業で観た」という声を聞くと、やって良かったと思いました。

頭で考えるばかりでなく川の流れのように

――逆に、演技で壁に当たったこともありますか?

永瀬 『アンサング・シンデレラ』ではⅠ型糖尿病の役で、撮影に入る前からインスリンを打つ勉強をしたり、しっかり役作りをして臨みました。でも、涙を流すシーンが何度もあって。石原さとみさんと背中合わせで泣くシーンは、思ったように涙が流せず、悔しくて、もどかしい想いをしました。

――結果的には良いシーンになっていました。

永瀬 石原さんが「何回でもやろう。時間を掛けて良いものを撮ろう」と言ってくださったんです。それで肩の力が抜けて、リラックスした状態でできました。そういうふうに広い視野で周りを見て、声を掛けられる石原さんは素晴らしいなと思いました。いつか私もそんな存在になりたいです。

――他にも、監督や先輩に言われて刺さったり、演技の指針になった言葉はありますか?

永瀬 18歳くらいの頃、監督に「川の流れのような気持ちでいることが大切」と言われたのは覚えています。頭で考えるばかりでなく、臨機応変に変わればいい。そのためにリラックスしておくことを学びました。それからは現場でガチガチに緊張するより、楽しもうという想いが強まりました。

――裏を返せば、永瀬さんは頭で考えがちだったんですか?

永瀬 お仕事を始めた頃は特にそうでした。頭で考えて答えを見つけようとしていて。でも、お芝居に正解はないと気づいて、今はその場で感じたことを大切にしています。

ハン・ソヒさんのような幅広さが理想です

――日ごろから、演技力を高めるためにしていることもありますか?

永瀬 人間観察は好きです。電車に乗ったりカフェに入っても携帯をいじらず、「この人、これからどこに行くんだろう」とか「あの2人はどういう関係だろう」とか、想像しています。

――それが演技に役立っていて?

永瀬 作品に入るごとに役の人物像は深掘りしますけど、台詞の言い回しは決めないで、現場で新鮮にできるようにしているんですね。日ごろ想像していたことが咄嗟に出たりして、役立っていると思います。

――自分で映画やドラマを観たりもしてますか?

永瀬 大好きです。『ビューティー・インサイド』という韓国映画が、ありえない設定ですけど、寝て起きると性別も年齢も国籍もすべて変わってしまう男性が主人公で、その人を愛せるか……というストーリーなんですね。映像は台詞がない表情とかに時間をたっぷり取って、すごく美しくて、何度も観ています。あと、女性のアクションものも好きです。

――好きな女優さんもいますか?

永瀬 韓国の方ではハン・ソヒさんです。役によって、本当に別人のようで。

――『わかっていても』では恋愛に振り回される役で、『マイネーム』では父の復讐のために警察に潜入する役でした。

永瀬 その2作は同じ時期に撮ったようですけど、カメレオンみたいな演じ分けができていて、ギャップがすごくて。ひとつのキャラクターにハマるだけでなく幅広く、というのは私が理想としている形です。

心理はわからなくても一番の理解者でいたくて

――永瀬さんも『君は放課後インソムニア』の元気な女子高生や、引きこもり系YouTuber、ITの天才の学生起業家など、様々な役を演じてきました。ひとつひとつ深掘りしてきたわけですか?

永瀬 そうですね。たとえば、まだやったことはありませんけど犯罪をする役だったら、その心理はわからないとしても、一番の理解者ではいたくて。そこは絶対に怠らないようにしています。『夫を社会的に抹殺する5つの方法』のときは、挑発する感じのユーチューバーの方を調べて観まくって。当時の履歴はそういうのばかりになりました(笑)。

――準備に特に力を入れた役というと?

永瀬 『君ソム』のカニ(蟹川モトコ)役では、監督とも話して、日ごろから所作や食べ方、歩き方を寄せて生活していました。他にも、この子のカバンの中はきれいに整っていないだろうなとか、細かいところも意識しました。

――所作ではどんなことを?

永瀬 ガサツなんですよね(笑)。文字を書くにしても、きれいな字でなくてササッと殴り書きだったり。みんなでごはんに行ったときも、お箸を配ったりはしない。わがままで末っ子っぽい気質だろうなとか、すごく考えました。そしたら、キャストのみんなも「カニっぽいね」と言ってくれるようになりました。

やりすぎと思うくらいのテンションで

――蟹川モトコ役は永瀬さんの素とは違っていたと?

永瀬 素とは全然違って、すごく苦労しました。

――全然というほどですか? 永瀬さんも元気なイメージはありますが。

永瀬 私も元気で人と話すのは好きですけど、カニは目についたら何でも言っちゃうキャラクターなんですよね。

――掃除のシーンで「窓が多くない?」と校舎にやたら文句をつけていたりで(笑)、「口がフル稼働」と言われてました。

永瀬 テンションを上げるのは難しいなと感じました。声を張るとか声量だけでなく、常に自分ではやりすぎと思うくらいのものを、出すようにしていました。

――かなりエネルギーを使いましたか?

永瀬 確かに、ホテルに帰ったら、電池が切れたようにぐっすり寝てました(笑)。

――一方で、「七つの橋を思い人と無言で渡り切ると両思いになる」という話を聞くと、「いいなー」とクルクル回っていました。

永瀬 ピュアさも秘めた子なので、高校生らしくかわいらしい部分があって。イヤな子みたいに見えないように気をつけてもいました。

――実家のお好み焼き屋を手伝っているシーンもありました。

永瀬 石川での撮影期間中に、お好み焼き屋さんに行って、店員さんがどういう感じで働いているのか、どういう仕事をするのか見てました。せっかくずっと石川にいたので、そこで吸収できるものは活かせたらいいなと思って。

放課後に友だちとしゃべるのが好きでした

――永瀬さん自身は広島出身ですが、高校時代は東京で過ごしたんですよね?

永瀬 高2から上京しました。

――「Seventeen」モデルや女優の活動も始まって。

永瀬 雑誌の撮影が終わってから、そのまま学校に行ったり、学校を途中で抜けて制服で現場に行ったりしていました。放課後に友だちとワチャワチャしゃべるのが好きだったので、間に合うなら5~6時間目からでも学校に行っていて。冬にお店で焼きいもフェスティバルみたいなことをやっていたら、みんなで食べに行って、そのまま映画を観たりもしていました。

――そういう青春も実際に送っていたんですね。

永瀬 はい。やっぱり制服を着られる年代って、すごくキラキラしていますよね。『君ソム』を観る方も年齢を問わず、こういう時代を思い出したり、こんな生活を送りたいと思ってもらえたらいいなと思います。

現場で撮った写真はみんなニコニコしていて

――永瀬さんにとっても、『君ソム』の撮影自体が青春の思い出になったのでは?

永瀬 まさにそうです。現場でカメラが流行って、七菜ちゃんがフィルムカメラを持ってきたり、奥平くんが一眼を持っていたりで、撮った写真をアルバムにしたんです。あとで見ると、みんなニコニコして楽しそうで、本当に青春でした。

――永瀬さんも写真を撮ったんですか?

永瀬 私は写ルンですで、みんなの合間のオフショットを撮っていました。

――映画の中で、森七菜さんが演じた伊咲と奥平大兼さんが演じた丸太を見ると、どんなふうに感じました?

永瀬 何もしゃべらなくても通じている感じで、お互いを支え合う存在になっていて。素敵だなと思うシーンがいっぱいありました。別々の場所にいても想い合っていることがわかるのが、印象的でした。

――よくあるラブコメとは違う感じですよね。

永瀬 王道の胸キュンはないかもしれませんけど、何気にキュッと胸を締め付けられるシーンが散りばめられています。

胸キュンもののヒロインをやってみたい

――『君ソム』では主人公の同級生役でしたが、ヒロインや主役をどんどんやりたい気持ちもありますか?

永瀬 胸キュン映画のヒロインもやってみたいです。あと、朝ドラのヒロインも目標です。事務所(ソニー・ミュージックアーティスツ)の先輩たちがたくさん出られているので、あとを追えるように頑張ります。

――朝ドラヒロインの先輩では倉科カナさん、土屋太鳳さん、黒島結菜さんがいますね。胸キュンものも好きなんですか?

永瀬 好きですね。中学生の頃、友だちと『ヒロイン失格』とか『アオハライド』とか観に行っていた世代なので。原作があるものもいいし、感動してもらえるような作品はよりやりたいです。

――同世代との共演も多いですが、刺激になりますか?

永瀬 「Seventeen」でも同世代が多いですし、ライバルというわけでなくて、自分ももっと頑張ろうと思う活力になっています。

初めてフェスに行って屋外ライブは楽しいなと

――森七菜さんとは一緒に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に行かれたそうですね。

永瀬 プライベートでごはんを食べたりもしています。フェスは2人とも観たことがなくて、どういうものなんだろうと行ってみたら、すごく楽しかったです。タオルとかTシャツとかグッズも買って。ただ、観たいステージがありすぎて、回り方が難しかったです。

――お目当てがあったんですね。

永瀬 マイヘア(My Hair is Bad)の椎木(知仁)さんのソロはマストで観たくて。あとは緑黄色社会さんとかいろいろ生で観て、屋外のライブってめちゃめちゃイイなと思いました。

――そういえば、ソニー・ミュージックアーティスツにはビッグなアーティストもたくさん所属していて、永瀬さんもお父さんが書類を送ってオーディションを受けたとき、歌ったそうですね。

永瀬 そうなんです。アーティストを目指す方のオーディションしかなくて、飛び入り参加みたいな形で。当時の朝ドラ主題歌だったAKB48さんの『365日の紙飛行機』を歌ったんですけど、全然ちゃんと歌えませんでした(笑)。

負けず嫌いで心の中ではメラメラしてます

――女優を目指した原点は何だったんですか?

永瀬 気づいたら……という感じです。事務所に入って、当時の(若手女優による)劇団ハーベストさんと一緒に演技レッスンを受けていたんですね。お芝居に触れて自然な流れで、女優さんになりたいと思ってきました。

――今、出演作が相次いでいるのは、自分の何が強みになっていると思いますか?

永瀬 どの作品にも120%の力で臨むようにしています。自分に対して負けず嫌いで、できないことが何より悔しくて。なので、お仕事に対する熱量、ハングリーなところは誰にも負けません。それが自分の芯にあって、表には出しませんけど、心の中ではメラメラしています。

――うまくいかなかったときは、どう立ち直るんですか?

永瀬 お仕事を始めた頃は、電車で泣きながら帰ったこともあります。でも、ズルズル泣かず、「過ぎたことは糧にして次!」と切り替えていて。寝たらリセットされます。

初めて口にする言い方で意図が体感できて

――先ほど役の深掘りの話が出ましたが、そういう作業が不要なくらい、素に近い役もありましたか?

永瀬 女子高生役はたくさんありましたけど、素に近いと思ったことはないかもしれません。自分よりハツラツとしていたり、性格が真反対だったり。だから毎回、深掘りをしています。

――それが演技の面白みでもあるんでしょうね。

永瀬 そうです。台詞でも「こういう言い回しがあるんだ」と思ったりもして、役を通して自分が言えるのは楽しいです。

――『君ソム』でもそうでした?

永瀬 初めて口にするような言い方ができました。カニは「ダルい」とか「メンドくさい」みたいな発言が多いですけど、みんなに構ってほしいんですよね(笑)。言ったら本当に構ってもらえて、役の意図が体感でわかった部分もありました。

いつか海外に住んで仕事もできたら

――今後も女優とモデルの両輪でやっていくんですか?

永瀬 「Seventeen」は10代向けの雑誌なので、いつまで専属でできるかわかりませんけど、やれる限りはどっちも頑張っていきたいです。雑誌の撮影も好きで、お芝居とまた違った楽しさがあるので。でも、軸は女優業にしていきたいです。

――スタイルキープのために努力していることもありますか?

永瀬 食べることは大好きなので、誰かと外食するときは、その前後で調整します。運動は唯一ピラティスに通っていて、あとはいっぱい歩きます。音楽を聴きながら歩くのが好きで、1万歩や1万5千歩くらいはよくいきます。

――モデルでの永瀬さんは明るく元気な印象が強いです。

永瀬 「Seventeen」で着る服の系統から、そう言ってもらうことは多いです。外に出たら明るい気持ちで仕事をしたいので、よくしゃべったりしますけど、家族や仲の良い友だちだと、話してくれたことにレスポンスする感じです。三姉妹の末っ子で、姉とは年が離れているので、どちらかというと頼りたいタイプです。

――仕事以外でもやってみたいことはありますか?

永瀬 いつか海外に住みたいです。ヨーロッパに行ったことがないので、フランスとかいいですね。お仕事でも海外に行きたいです。

――配信系で日米合作ドラマなども増えています。

永瀬 多いですよね。いろいろな作品が出ていて、気になっています。ハングリー精神から、そういう作品にもチャレンジしたい気持ちは強く持っています。

ソニー・ミュージックアーティスツ提供
ソニー・ミュージックアーティスツ提供

Profile

永瀬莉子(ながせ・りこ)

2002年8月13日生まれ、広島県出身。

「ミスセブンティーン2018」グランプリから「Seventeen」専属モデルに。2019年にドラマ『ココア』に主演して女優デビュー。主な出演作はドラマ『17.3 about a sex』、『クロサギ』、『夫を社会的に抹殺する5つの方法』、『春は短し恋せよ男子。』、『この素晴らしき世界』、映画『左様なら今晩は』、『君は放課後インソムニア』など。

『君は放課後インソムニア』

Blu-ray&DVD 発売中

監督/池田千尋 脚本/髙橋泉、池田千尋 原作/オジロマコト 配給/ポニーキャニオン

公式HP

(C)オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会
(C)オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会

『君は放課後インソムニア』安斉星来インタビューはこちら

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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