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若月佑美の「自信がない分の強み」。クールな美形でコメディも。本日からNHK夜ドラで丸山礼にツッコミ

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/河野英喜

昨年も『invert 城塚翡翠 倒叙集』で最後のどんでん返しを演じたりと、年末まで出演作が相次いだ若月佑美。本日スタートのNHK夜ドラ『ワタシってサバサバしてるから』では、丸山礼が演じる主人公の同僚役。クールな美形ながら振り切ったコメディまで幅広く演じて、独特なポジションの存在となっている。その演技の裏の想いを語ってもらった。

かわいい女の子の役には苦手意識があって

――昨年も出演作が相次ぎましたが、忙しかった実感はありますか?

若月 夏に1年半ぶりの舞台があって、二科展に出した絵も描いていました。その頃は毎日、決まった時間に起きて稽古に行くという、規則正しい生活を久しぶりに送って。自分の働き方について、改めて考えたりもしました。

――その舞台『薔薇王の葬列』では両性具有の主人公役。男装は昔から似合いますよね。

若月 自分でも好きではあります。私は「頭の中は男性だね」と言われることが多くて、母にも「あなたの考え方はお父さんにそっくり」と言われるんです。そういうところを役で活かせるなら、今後もどんどんやっていきたいです。

――演じられる役柄もシリアスからコミカルまで幅広い若月さんですが、自分の中では得意な役とか入りにくい役とか、ありますか?

若月 自分で決めつけてしまっている部分があるかもしれませんけど、私は声が低くて、性格的にもサバサバとか男前とよく言われて。少女マンガのキャラクターやフワフワしてかわいい女の子の役には、ちょっと苦手意識があります。アニメとかでそういう女の子は、声が高めだったりしますよね。私は高く出したつもりでも、まだ足りないと言われて、キャピキャピした感じが出せなくて。そこが壁に思えてしまいます。

――『ブラックナイトパレード』の赤井稲穂も、そっち系でした?

若月 映画ではそこまで出番はなかったんですけど、原作ではあざとい系のかわいい女の子で人気コスプレイヤーで、荷が重いと思っていました。もし続編があったら、苦労するかもしれません。でも、そういう役も克服していきたいです。

低い声や男性っぽさを活かせるのは強い役かなと

――得意なのは、福田雄一監督に見出された『今日から俺は!!』のようなヤンキー系の役ですか?

若月 そういう役は多いです(笑)。自分の持っている男性っぽさやドスの利いた低い声を活かせるのは、強い女性の役かなと思います。「そこの枠の女優はあまりいないから貴重だよ」と、監督やご一緒した方に言ってもらえるので、大事にしていきたいです。

――ヴィジュアル的なイメージからは、Netflix映画の『桜のような僕の恋人』のカメラマンのような、クール系の役がハマる感じがします。

若月 コメディとどちらもやらせていただけるのは、心のバランスも取れてありがたいです。両方を合体させたような、鋭くツッコむ役も多くて。『今日から俺は!!』では橋本環奈ちゃんのボケにツッコんでいましたし、『アンラッキーガール!』でもそんな立ち位置でした。そういう役にはスッと入っていけます。でも、私自身は普段、プライベートでは意外としゃべらないので。もの静かな役が合う気もしています。

――出演したことによって、自分の何かが開いたような作品もありますか?

若月 『桜のような僕の恋人』では、お芝居の新しいやり方を教えていただきました。深川(栄洋)監督から「ギアを入れないで」と言われたんです。同時期にドラマ『結婚できないにはワケがある。』を撮っていて、そちらはコメディだからオーバーリアクションで、表情もコロコロ変わる役。でも、深川監督は「人は苦しくても、その場をやり過ごそうとするから、苦しい顔はしないでください」と。自分の幅を広げていきたいと思うきっかけでした。

コメディを超えてコントのような自由さがあって

――『ワタシってサバサバしてるから』はコメディで、得意分野ですよね?

若月 今回はコメディを通り越して、コントのような感じがしました。実際にコントとまで言っていいのかわかりませんけど、ドラマながら「台本通りにやっても面白くない」という撮り方なんです。その場で作らずに出たものが面白いと。いちおうOKが出たあとに「自由にやってみよう」というテイクを撮ったりしています。

――演出の伊藤征章さんはフジテレビで『笑う犬』シリーズや『ワンナイR&R』といったコント番組を手掛けた方ですね。

若月 そうなんです。一番大きいのは、主役の丸山礼さんがお笑いが本業の方で、その強さを現場で見せていただきました。目の前にあることに対して、どう反応していくか。そのスピードと瞬発力がすごくて。あらかじめ作られた面白さでないところに、コントの生な感じが出ているように思います。

――アドリブが多いんですね。

若月 多いですね。使われたのかわかりませんけど、「何だ、そのカーテンみたいな服は?」とか言われました(笑)。福田組でもアドリブはありますけど、キャラクターとして出る言葉なんです。丸山さんは最初に撮った合コンのシーンから、アドリブの自由さと役の網浜奈美の自由なキャラクターが一緒になって出来上がって。それで自分もどういうキャラクターでいくか、決めることができました。

面白すぎて原作より仲良い感じに

――若月さんが演じる安藤晴香は網浜の雑誌編集部の同僚で、今回もツッコミ役ということですね。

若月 丸山さんが演じる網浜さんは、原作よりキツい感じがなくてコミカルなんです。原作はもちろんリスペクトしつつ、実写にして網浜さんのサバサバ感が鼻についてしまったらもったいないので、安藤も「明るい人だな」と思って仲良くしているところがあります。

――原作では、バナナジュースの売店に並んでいるところに網浜が現れて、安藤がドヨーンとした表情になる場面がありました。

若月 そこはドラマだと、丸山さんが面白すぎて大変でした(笑)。合コンのシーンでは座りだったのが、あそこは立っていたので、よりいろいろなアドリブを入れてこられたんです。安藤としては、網浜さんの言動に引いてしまうというより、今まで出会った人にいなさすぎて面白いと思っているので、そこも原作とちょっと違っています。

――今回は事前の準備はあまりしなかった感じですか?

若月 比較的そうでした。現場の空気次第で台詞も変わるので、準備のしようがなくて(笑)。

――雑誌編集者という部分は、そんなには出てこないんですか?

若月 そうですね。劇中ではだいたい、編集部から外に出ているので。でも、私は「Oggi」で美容専属モデルをやらせていただいて、編集部に行くこともあるから、編集者は「あの人みたいな感じ」とイメージしやすかったです。

心配性なので事前にできることは全部やります

――いつもだと若月さんは演じる役について、作中に出てこない部分も含めて、バックグラウンドを掘り下げているようですね。

若月 心配性なんです(笑)。毎回いただいた役をちゃんと演じられるか不安で、少しでも手がかりが欲しくて。役の職業のことを検索して、ネットに出ているいろいろな記事を読んだり、近い役を演じられた方の映像を観たりもします。たとえば『今日から俺は!!』でスケバンをやったときは、『下妻物語』で土屋アンナさんのお芝居を観て勉強しました。

――先ほど出た『ブラックナイトパレード』の赤井稲穂役でも、原作マンガをだいぶ読み込んだとか。

若月 原作のコマを見て、ケラケラ笑うよりニヤーッとする感じを出したいと思ったり、映画ではひどいいたずらをしていますけど、原作では裏でみんなを助けるように立ち回っていたことも頭の中に入れて演じました。原作ものだと、作者の方がインタビューでキャラクターについてお話しされていることもあって。そのキャラクターが生まれた意味からヒントを得たり、拾えるところは拾いたいと思って読んでいます。

――そこまで念入りにやるんですか。

若月 実際、直接的に役立つことはあまりなかったりもしますけど(笑)、あとから「あれもやっておけば良かった」と後悔したくないんです。だから、事前にできることがあれば全部やるようにしています。

期待に応えられるか不安は常にあって

――ここまで途切れることなく出演作が続いて、演技に自信も付いてきたのでは?

若月 自信は今もまったくないです。役をいただいて嬉しいと思うのは一瞬で、すぐ「求められることに応えられるだろうか?」と心配になって、検索を始めるんです(笑)。むしろ、お芝居の経験を重ねるごとに、より難しさを感じるようになりました。

――深いところまで意識されるようになった裏返しでしょうけど。

若月 この前の『invert 城塚翡翠 倒叙集』でも、事件の目撃者と思わせて実は翡翠に協力している詐欺師という役で、どこまでどっちで演じたらいいのか、本当に難しかったです。実際は知っていることで、こんなに驚くのはどうなんだろうとか、それでも視聴者の方に悟られないようにしないといけないとか、いろいろ悩みました。

――でも、「女優を続けられないかもしれない」とまで思ったような時期はないですよね?

若月 それも毎回思っています。もともとグループが成功していたのを前提に見られがちですけど、私個人がうまくいっていたわけではないので。「ここで期待に応えられなかったら、次はないかもしれない」というプレッシャーは常にあります。基本的には、お芝居は正解がなくて楽しいですけど、どうしても心配性が出てしまうんですよね(笑)。

自我を持ちすぎないので指示にはすぐ対応できます

――とは言え、これだけ業界で求められている中で、自分の強みだと思うこともないですか?

若月 自分に自信がない分、監督にアドバイスをいただいたら、すぐに対応できるところかなと思います。自我を持ちすぎていないので、「作品としてこうして欲しい」と言われたら、自分でいろいろ考えてきたプランもすぐ変更します。

――いい意味で、こだわりを持たないと。

若月 そうですね。あと、何も言われなければリミッターを掛けがちなんですけど、「振り切って欲しい」と言われたら、どこまでも振り切れます。『今日から俺は!!』より前の福田監督の舞台でヤンキーをやったときも、そう言われて出し切って、真面目な人間だと思われていたから驚かれました(笑)。

――それで『今日から俺は!!』に繋がったんですね。

若月 はい。かわいさが要らない場面では、どう見られてもいいと思っているので、ヘン顔をやるように言われたら、やれるだけヘンにやります。そういう部分で自分を持ってないところは、役者として活かせるかなと思っていて。監督に1、2、3まで言われたら、4、5、6も自分で察してできるのは、唯一の強みかもしれません。

「何者?」と言われる人になりたいです

――目指しているのは、名バイプレイヤー的なポジションですか?

若月 私はタイプ的にも性格的にも、主役を支える位置のほうが自分らしさを出せる気がします。自分で決めつけるのも良くないと思いますけど、プレッシャーに弱いので(笑)。

――ロールモデルとして考えているような人はいますか?

若月 『ユーチューバーに娘はやらん!』などでご一緒した遠藤憲一さんは本当に素晴らしい方だと思いますけど、私のようなタイプって意外といないのかなと。秋元康さんみたいになりたいと考えています。

――プロデュース業もするということですか?

若月 ありがたいことに今、レギュラーでいろいろなお仕事をさせていただいていて。ラジオも雑誌でコラムを書く仕事もしていて、モデルとして美容の紹介をしたり、パーカーやTシャツのプロデュースもさせてもらいました。それで役者もやって、絵も描いて……というところを、今後もっとブラッシュアップしていきたいです。ひとつの活動にまとめるより、あれこれやって「あの人、何者?」と言われる人になれたらいいかなと思っています。

絵を自分の中から出たままに描けたのが励みに

――そんな中で、去年は3年ぶりに二科展デザイン部に出展した赤いバラの絵が、初の特選賞となりました。

若月 父親が毎年楽しみにしていたらしくて、「久しぶりに描いてみたら?」と言われたのがきっかけでした。絵は小さい頃から好きでしたけど、二科展で8年続けて入賞させていただいた中で、「自己満足ではなくて、評価される絵を描かないといけない」と考えるようになってしまって。それで描けなくなっていた時期があったんですけど、また時間が経って気持ち的なクサビがなくなって、「好きなように描いてみようかな」と思えたんです。

――難しいことを考えずに、感じたままに描こうと。

若月 人にどう見られるかは考えませんでした。当時、『薔薇王の葬列』をやっていて、良くも悪くも余裕がなかった分、自分の中から出てくるものを描くしかなかったんです。そういう絵を評価いただけたのは、すごく励みになりました。

――女優としても通じるところはありますか?

若月 絵とお芝居はちょっと違いますけど、表現というところは一緒で、教えられたことはありました。準備はたくさんしていっても、現場で生まれた感情が大事なのと、自分のお芝居に自信を持って、自分らしさを出してもいいんだなと。監督とご相談して、作品の方向性は大事にしながら、もっと自分の意志を入れられるようになれたらいいなと思います。

30歳を前に人間としての体力作りに励みます

――今年の誕生日が来ると29歳ですが、30代に向けて見据えているものはありますか?

若月 体力はとても落ちてきていますね(笑)。『薔薇王の葬列』ではアクションもあって、稽古で膝にアザができたりしたんですけど、Wキャストの有馬爽人くんは当時21歳の若さで、傷の治りが私より全然早くて驚きました(笑)。

――あの殺陣のシーンも体力的にはキツかったわけですか?

若月 男性でもあり女性でもあるという役で、どうしても体力のなさや力強さに欠けるのを感じて、悔しい想いはしました。アクションに限らず、体的にもできることは頑張って、年齢に抗っていこうと思っています。

――日常でも、20代前半の頃と変わった点はありますか?

若月 そもそもインドアだったのが、加速しました(笑)。前は「コーヒーを飲みに行こうか」と出掛けていたのも、「寒いからいいや」とか億劫になったり。若くいたい自分もいるんです。美容モデルをやらせていただいているので、エイジングケアは頑張っていきたくて。一方で、お芝居ではより深みを出して、年齢に合った考え方を表現できるようになれたら。30歳を前に、人間としての体力作りにも励んでいきます。

撮影/河野英喜

Profile

若月佑美(わかつき・ゆみ)

1994年6月27日生まれ。静岡県出身。

2011年に乃木坂46の1期生オーディションに合格。2018年に卒業。主な出演作はドラマ『今日から俺は!!』、『結婚できないにはワケがある。』、『アンラッキーガール!』、『ユーチューバーに娘はやらん!』、『invert 城塚翡翠 倒叙集』、映画『ヲタクに恋は難しい』、『桜のような僕の恋人』、『劇場版ラジエーションハウス』、舞台『鉄コン筋クリート』、『薔薇王の葬列』など。1月9日より放送のドラマ『ワタシってサバサバしてるから』(NHK)に出演。「Oggi」美容専属モデル。

夜ドラ『ワタシってサバサバしてるから』

1月9日放送スタート

NHK総合/月~木曜22:45~

公式HP

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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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