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ティーンの憧れ・莉子の素顔は努力家。『きさらぎ駅』でギャルに。「頑張ってるところは見せたくなくて」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会

ドラマ『ファイトソング』や映画『女子高生に殺されたい』など出演作が相次ぐ莉子。モデルとしてデビューし、SNSの総フォロワー数は250万人超え。女子高生が選ぶインフルエンサーで2年連続1位にもなっている。都市伝説をベースにした映画『きさらぎ駅』では、この世に存在しないはずの駅に居合わすギャルの役。何でもスイスイこなすように見えて、裏で地道な努力を重ねているようだ。

映画で何もできてなかったことが悔しくて

――最近はドラマに映画に出演作が増えていますが、もともとモデルとしてデビューしつつ、女優にも意欲はあったんですか?

莉子 いえ、演技はあまりやりたくなかったです。ずっとモデルしかやってこなかったので、自分が台詞を言っているのがどうしても想像できなくて。心が痒いというか(笑)、私にはできない感じがして、ずっと踏みとどまっていました。

――映画やドラマを観てはいたんですか?

莉子 小さい頃からラブコメが好きで、恋愛、キラキラ、青春みたいな作品ばかり観ていました。『アオハライド』や『君に届け』とか、その辺の映画はたぶんほぼ全部観ています。でも、演じる視点になったことは1回もなくて。「あの世界に自分が行く? 行けないでしょう!」みたいな感覚でした。

――最初Webドラマなどに出ていた頃は、どんな心持ちだったんですか?

莉子 「私、これで演技できているのかな?」みたいな。何より恥ずかしさがあったり、「ここにいていいのかな?」と思ったり。すべてをマイナスに感じていました。そんな中で、3年前に映画『小説の神様』に出させていただいたとき、テレビ越しに観ていた佐藤大樹さん、橋本環奈さんの演技を目の当たりにして、自分は本当に何もできていないことに気づいたんです。それが悔しくて。今まで自分が思ったままにやっていた演技を、ちゃんと学ぼうと思いました。

N.D.Promotion提供
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自分の中で決めていることはあります

――ワークショップに通い始めたそうですね。

莉子 はい。考えることがたくさんありました。本格的に演技をするためには、もっと頭の中で考えを巡らせないといけない。初めての経験だったので苦戦しました。難しいことをたくさん言われて、うまくできないし、どうすればいいかわからなくて葛藤していて。

――頭がパンクするような?

莉子 そうですね。でも、同世代の俳優さんからも刺激を受けて、だんだん演技を学ぶことが楽しくなってきたんです。現場で共演者さんやスタッフさんとの出会いもあったり、そういうことも含めて、楽しい瞬間がどんどん増えました。それで今は、いろいろな作品に出させていただいている感じです。

――莉子さんは何でもセンスの良さでスイスイやっているイメージがありますが、実は努力家なんですね。

莉子 あまり「これを頑張ってます」とか「今辛いところです」というのを見せたくない派なので、そう見えるのかもしれませんね。でも、「やるからにはちゃんとやらないと」みたいな気持ちは強いです。

――総フォロワー数が250万人を超えるSNSでも、上げる動画はこだわりを持って撮っていたり?

莉子 何回でも撮り直しますし、このSNSはこう使うとか、休みの日はファンの子と交流を増やすとか、自分の中で決めていることはいくつかあります。最近は流行に追い付けない部分があるので、マネージャーさんと一緒にTikTokで流行っている音源を調べたりもしてます。

――莉子さん自身が女子高生が選ぶインフルエンサーの1位で、最先端を行っているのでは?

莉子 いやいや。そんなことは全然なくて、皆さんに協力していただきながら頑張っています。

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会

自分でない人として生きるのが楽しさに変わって

――演技の楽しさはどんなところに見出したんですか?

莉子 やっぱり自分でない人として生きることが、今まで一切なかったので。普通ないですけど(笑)、演技の世界にはそれがあるし、自分が普段言わないことを台詞で言う。そこが苦手な部分だったのが、勉強したら楽しさに変わりました。この台詞をどう言えば自然になるか、考えることが面白くなったのが、一番大きいかもしれません。

――そういうことは撮影の現場でも感じますか?

莉子 共演者の皆さんがだいたい先輩なので、演技を間近で見ると「こういうこともできるんだ」「この俳優さんだとここまでやれるんだ」と、学びがあります。自分もそうなりたいというところから、現場も楽しくなっていきます。

――どんな人から何を学んだ、というのもありますか?

莉子 作品でいうと自分の中で大きかったのは、1年前にABEMAでやった『ブラックシンデレラ』ですね。初めての主演で、不安とプレッシャーがすごかったんですけど、ご一緒した神尾(楓珠)さんと板垣(瑞生)さんの現場での立ち振る舞いがすごくて。しかも、それを自然にできている感じなんです。私がカメラの前でかぶりそうになると、神尾さんが演技をしながらサラッと動いてくれたり。私には全然わからなかったことですけど、そういうところもちゃんとできると、素敵な役者さんになるんだろうなと思いました。

形からギャル役に入って語尾は気だるく(笑)

――役作りノートを作っているそうですが、ある時期から書き始めたんですか?

莉子 それも『ブラックシンデレラ』からですね。主演ということもあって、プロデューサーさんといろいろお話をしたとき、私は書き出すと一番自分の中に染み込ませられると思って。そこから始めて、以後の作品では全部やっています。

――『きさらぎ駅』で演じたギャルの美紀については、役作りノートにどんなことを書いたんですか?

莉子 最終的にただのギャルで終わらないで、仲間思いで人間味もちゃんとあるところが見えてくるなと。そういうマイナスでない部分を書き出したりしました。あと、木原(瑠生)さん、寺坂(頼我)さんが演じる2人との関係性も重要だったので、その辺りですね。

――ギャルの部分はどう作りました?

莉子 今回は見た目から入っていこうと。ここまでのギャルだと、さすがに私のままではなり切れない部分があって(笑)。他のお仕事の兼ね合いもうまくいったので、1週間ちょっとの撮影期間中は金髪のエクステを付けました。そしたら気分も乗って、身だしなみからギャルになっていけました。

――話し方も普段と変えました?

莉子 そうですね。ギャルは語尾が気だるい感じで(笑)、「早く行こう~」みたいな。あとは一瞬映る立ち方や小さい動作でも、ギャルっぽくすることを心掛けて。目つきも決して良くないと思うので(笑)、睨むまではいかないけど、そんな感じは意識していました。

急に来る怖さに冷や汗が止まらなくて(笑)

――ホラーでは『牛首村』にも出演されていますが、もともと馴染みはあったんですか?

莉子 いやもう、ホラーはまったく観ていませんでした。『牛首村』に出させていただいて試写を観たのが、人生で初のホラーだったんです(笑)。その初ホラーが清水(崇)監督というのは、ハードルが高めでした。

――台本を読んで演じたうえで観ても、怖かったと?

莉子 ホラーは台本と映像化したときでまったく違うので。緊張して震えながら観ました(笑)。

――『きさらぎ駅』はそこまで怖くはなかったのでは?

莉子 いえ、怖かったです。台本を読んだ感覚より、試写で観ると瞬間的にビックリする部分がたくさんあって。私はそういう急に来るのに弱いんです。冷や汗が止まりませんでした(笑)。

――現場でもトンネルの中は怖かったり?

莉子 本当に怖かったです。それに、私はギャル役で靴がヒールだったんです。線路での撮影が多くて、走るシーンはめっちゃ大変でした。

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会

叫ぶシーンでノドがガラガラに

――日常でも怖がりなほうですか?

莉子 めっちゃ怖がりです。家でもちょっとした雑音にすぐ反応してしまったり、夜道はいつも後ろを気にしながら歩いています。

――劇中では叫ぶシーンもありました。

莉子 ノドがガラガラになって、毎日龍角散をなめていました(笑)。

――普段は感情の起伏は大きいですか?

莉子 喜怒哀楽はわりとしっかりしている人間かもしれません。怒ることはないけど、泣くことは近年増えました。涙腺がちょっと弱くなってきたのか(笑)。

――どんなことで泣くんですか?

莉子 たとえば『ブラックシンデレラ』のときは、自分の中でキャパオーバーになってしまって。高校最後のテストと撮影期間がまるまる被っていたんです。こっちもあっちもやらないといけない。明日もあさっても夜まで撮影。パニックになって号泣して、親友に電話して慰めてもらいました。

撮影の裏が気になるのは職業病かなと

――『きさらぎ駅』を試写で観て、自分の演技はどう映りました?

莉子 今まで自分の演技を観て「よくできた」と思ったことは一度もありません。今回も案の定、自分が出ているところは目をふさぎたくなるくらい、恥ずかしかったです。でも、自分で良いと思ってしまったら、たぶん役者を続けられないので、それは気にしないようにしています。

――今も普段観る映画はラブコメ系が多いんですか?

莉子 勉強のために、好きなジャンル以外もいろいろ観るようになりました。最近は友だちと行くより、1人で映画館に観に行っています。『余命10年』も1人で観て、1人で泣いてました。私は家族のところがたまらなくて。あとは、自分の出た映画を観にいくことはよくしています(笑)。

――何回も観るわけですか?

莉子 1人で行ったり、母親と行ったり、友だちと行ったり。その期間に会える人とは、観たくなったら観に行く感じです。

――映画の観方も変わりました?

莉子 めっちゃ変わりました。「ここは何カット撮ったんだろう」とか、裏側が気になってしまいます。「この俳優さんの演技はこういうところが素敵」とか、そういう目でしか観られなくなってしまいましたね。職業病かもしれませんけど、単純に映画やドラマを楽しめなくなったのは悩みです(笑)。

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会

休みはいらないから仕事を入れたくて

――女優として活躍しつつ、いろいろやりたいタイプなんですよね?

莉子 本当にそうです。オールジャンルな人になりたいと、ずっと言っています。

――やることが多いと、大変といえば大変ですか?

莉子 大変です。でも、私は毎日忙しくしているのがめちゃめちゃ好きなので。仕事がない日があると、マネージャーさんに「仕事ください! 今月はまだこことここが空いてます」と言ってます。休みは月1回あれば十分。今は忙しくしたい時期だと、自分で思っています。

――体力的にも問題なく?

莉子 休みの日は体力を付けるためにジムに通って、最近はキックボクシングも始めました。「行くんだ! 今日は行くぞ!」と自分にムチを打って腰を上げています(笑)。

――そういうエネルギッシュな毎日の原動力とか、支えになっているものはありますか?

莉子 高校時代の友だちは心の支えです。さっきの号泣して電話した子もそうです。私が芸能活動で学校を休んだときも、授業に追い付けるようにノートを貸してくれたり、聞けなかった先生の話はすぐメールで教えてくれたり。そういう友だちが6人いて、高校時代も今も支えてもらっていました。みんなめちゃくちゃ素敵です。

現役で制服を着られるのを楽しんでほしい

――法律が変わった4月1日に「まだ二十歳じゃないのに成人???」というツイートがありましたが、12月には20歳にもなります。大人になってきたと実感することはないですか?

莉子 高校の友だちの1人が4月生まれで、もう20歳になって、一緒に制服を着ていた子がお酒を飲めるなんてビックリ! 信じられない感じです。これから周りがどんどん20歳になってくると、だんだん実感が湧いてくるのかもしれません。

――莉子さん自身が成人になって変わったことは、あまりないと?

莉子 運転免許を取ったので、行ける場所が遠くまでになりました。ごはんも前まではファミレスに行っていたのが、ちょっとオシャレなレストランにも行くようになったり。そういうところで少しずつ成長は感じます。

――女子高生を見ると、年齢はそんなに変わらなくても若いと思います?

莉子 思います。制服を現役で着られるのはいいなと。私は大学生ですけど、自分の中では学生だけど学生でないような感覚があって。高校生までが正真正銘の学生。いっぱい楽しんでほしいと、街の子を見て勝手に思っています(笑)。

――莉子さんは仕事をいろいろしているうえ、大学の勉強もあるんですね。

莉子 はい。大学生としても頑張らないといけなくて。課題もたくさんあって、いつも大変だなと思ってます。

――試験と撮影が重なっても、今は泣いたりしませんか?

莉子 それは今は大丈夫です!

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
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成長してもう一度主役に戻りたい

――何年後の自分とか、先々のことは見据えていますか?

莉子 今だけでなく、2年後、3年後はどうなっているのか、わりと考えるタイプです。そのためにSNSもちゃんと頑張らないといけない、とか。でも、このままやりたいことをオールジャンルで続けられれば幸せなので、それ以上のことは別に求めません。

――継続していくために、陰で努力していることも?

莉子 ワークショップは今も通っていますし、映画も休みの日に観るようにしていたり。そういうことをコツコツ頑張っている途中なので、引き続き怠らずやっていきたいです。

――莉子さんの人生のモットー的なものはありますか?

莉子 楽しむこと、ですかね。演技も楽しいと思えるまでの時間は、自分の中で苦しくて「うーん……」となって。やりたくないことをやっているような感覚になってしまったんですね。今は楽しいと思えて、やる気に繋がっています。心のどこかに常に楽しむ意識を持つことは、本当に大切だと思います。

――主役をやりたいとか、野心も持っていますか?

莉子 それはやっぱりあります。私はほぼ初めてだらけの現場で主演から始まって、嬉しいことでしたけど、頑張らないといけないと思ったことが多くて。この1~2年で経験を積んで、成長した姿でもう1回、あの場所に戻りたいとは思っています。

――出演作も続いて、今は自信も芽生えているわけですね?

莉子 自分の演技のどこがいいとか、まったくわかりませんけど、作品を観てくださった方が「この女優は何かいいな」と思ってくれたら嬉しいです。そうなるために頑張るのが、今一番やるべきことかなと思います。

Profile

莉子(りこ)

2002年12月4日生まれ、神奈川県出身。

2014年からモデルとして活動。2018年から2021年まで『Popteen』で専属モデル。2018年にドラマデビュー。主な出演作はドラマ『ブラックシンデレラ』、『ファイトソング』、『卒業式に、神谷詩子がいない』、映画『君が落とした青空』、『牛首村』、『女子高生に殺されたい』ほか。公開中の映画『きさらぎ駅』、ドラマ『教祖のムスメ』(MBS)に出演中。『ポップイン!クラフト』(NHK Eテレ)でレギュラーMC。

『きさらぎ駅』

全国ロードショー公開中

監督/永江二朗 脚本/宮本武史 出演/恒松祐里、本田望結、莉子、芹澤興人、佐藤江梨子ほか

公式HP

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
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『きさらぎ駅』主演・恒松祐里インタビュー

『きさらぎ駅』出演・本田望結インタビュー

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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