泥沼化する日韓関係 「運命の月」8月の「7大難題」

年内の日韓首脳会談は?(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 日韓関係は昨年から「史上最悪の関係」と称されているが、一向に改善の気配は見られない。むしろ泥沼化し、今まさに「底なし沼」に入りつつある。それもこれも負の連鎖が続いているからだ。来月(8月)はまさに日韓にとってある意味では「運命の月」になるかもしれない。以下、日韓の「難題」を挙げてみる。

1.韓国のWTO提訴

 日本が昨年7月に3品目の半導体原材料の韓国向けの輸出管理を厳格化し、8月に輸出管理の優遇対象国「グループA(旧ホワイト国)」から韓国を除外したことに韓国は猛反発し、日本を世界貿易機構(WTO)に提訴。その後、日本との話し合いによる解決を目指したことで提訴を11月に暫定停止していた。しかし、半年過ぎても厳格化措置が解除されないため今年6月に提訴を再開。昨日(29日)韓国が要請した紛争処理小委員会(パネル)の設置が確定。これからWTOでの日韓の攻防が本格的に始まる。

(参考資料:「未曾有の災難」に見舞われても変わらない日韓関係)

 2.WTO事務局長選挙

 アゼベド事務局長の退任に伴うWHOの次期事務局長選挙が8月に行われるが、韓国の兪明希・産業通算資源部通商交渉本部長が立候補。当選すれば、韓国人初のWTO事務局長となるが、英国、ケニア、ナイジェリアなど7か国から有力候補が出ており、予断は許さない。日本は候補者を出してないが、梶山経済産業相は「リーダーシップを発揮できる人物が重要である」として選出に関与することを表明。韓国は日本が潘基文国連事務総長の誕生に反対した過去もあってか、また、輸出問題で紛争中にあることから今回も韓国の阻止に動くのではと警戒している。

 3.世界遺産登録問題

 韓国外務省は長崎・端島炭坑(軍艦島)など国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」の登録取り消しを求める書簡を6月30日にユネスコに発送。日本が登録の際に情報センターを設置し、その中に「朝鮮半島出身者が意思に反して連れて来られ、厳しい環境で働かされたことを記憶できるようにする」との約束を反故にしたというのが理由。日本は東京に設置された産業遺産情報センターには「戦時徴用された朝鮮半島出身者が端島炭坑などで働いていたことが明示されている」と反論し、韓国のユネスコ提訴に反発しているが、韓国では早くも昨日、日本の対応を批判する国際討論会が開かれた。

(参考資料:「WTO提訴」に続き「ユネスコ提訴」 「コロナ禍」の最中に再燃した日韓の対立!)

 4.韓国の「G7」参加問題

 トランプ米大統領はロシア、オーストラリア、インド、韓国などの参加を念頭に主要7か国首脳会議(G7サミット)の枠組み拡大を検討しているが、茂木外相も菅官房長官も「我が国としては、G7の枠組みそのものを維持することが極めて重要であると」と、韓国が加わることに事実上反対の意向を表明。韓国は猛反発し、大統領府の高官が「日本の恥知らずの水準は世界で最上位圏」とか「恥知らずの極みで非常識」と露骨な表現で不快感を表していた。G7首脳会議は来月下旬に米国で予定されているが、韓国の参加をめぐって一悶着ありそうだ。

(参考資料:韓国メディアは日本政府の「韓国のG7参加反対」をどう伝えているのか?)

 5.「安倍総理謝罪像」の設置

 慰安婦を象徴する少女像の前で跪き謝罪する安倍総理に酷似した像が韓国の植物園に設置されたことが新たな外交の火種となっている。菅官房長官は「国際儀礼上許されないというのが政府の立場。日韓関係に決定的な影響を与えることになる」と韓国政府に撤去を求めているが、植物園では8月10日の除幕式は中止するものの展示は予定どおり行うとしている。韓国外務省は「一般的に外国の指導者に対しては国際礼譲(儀礼)というものがある」と日本への配慮を示したが、民間人が自費で自分の植物園内に建てていること、即ち公共物、公共施設ではないこと、さらには「表現の自由に関わる問題」として関与する気はなさそうだ。

 6.日本企業の資産売却(現金化)問題

 元徴用工らが日本企業を訴えた賠償請求訴訟は2018年10月に韓国大法院(最高裁)が日本企業に原告への賠償支払いを命じて2年近く経つ。韓国の判決は「日韓条約にも国際法にも反する」との立場から日本は支払いを拒否。元徴用工らは日本企業の韓国内の資産の差し押さえに続き、今年5月には資産売却を裁判所に申請。裁判所は6月1日にホームページや広報を通じて関連書類の公示送達の手続きを始めたが、8月4日にはその効力が発生し、現金化のための手続きに入る。現金化すれば、日本の報復は必至で、日韓関係は破局を招くことになる。

 7.GSOMIA破棄の再燃

 仮に日本の輸出厳格化措置が8月までに解除されなければ、一旦通告したもののその後日本の輸出規制解除を条件に取り下げていたGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の破棄を持ち出してくる可能性が大だ。韓国政府は昨年、日本への対抗措置としてGSOMIAを延長しない方針を決定し、8月24日に日本に通告したが、失効(11月23日午前零時)直前に通告を撤回し、1年間の自動延長に踏み切っていた。文在寅大統領は当時「我が政府はいつでもGSOMIAの効力を終了できるとの前提でGSOMIAの終了通告の効力を停止させた」と国民に説明していた。従って、事前通告期限である8月24日までに輸出規制問題が解決しなければ、否が応でもGSOMIAのカードを切らざるを得ないだろう。

(参考資料:「未曾有の災難」に見舞われても変わらない日韓関係)

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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