「未曾有の災難」に見舞われても変わらない日韓関係

安倍晋三総理と文在寅大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 韓国政府は日本が昨年7月以降、韓国に対して取っている輸出厳格化措置(半導体素材3品目の輸出規制強化と輸出管理の優遇対象国「グループA(旧ホワイト国)」からの除外)が一向に解除されないことに業を煮やし、日本政府に対して「今月末までに態度を明らかにせよ」と迫っているようだ。

 「新型コロナウイルス」による苦境を脱し、経済再建に舵を切った韓国大統領府(青瓦台)の高官は先週(13日)「これ以上、日本の誠意のない態度を傍観しているわけにはいかない」と苛立っていた。

 今月末に期限を切った理由については語らなかったが、昨年11月のGSOMIA(日韓軍事情報保護協定)延長決定から半年が経つため「これ以上引き延ばすわけにはいかない」というのが表向きの理由のようだ。

 もう一つの理由は、日本が輸出厳格化措置を取った理由として挙げていた▲両国間の政策対話の中断▲通常兵器に転用可能な物資の輸出を管理するキャッチオール規制の整備▲輸出管理体制・人員の脆弱性など3つの「障害」をすべてクリアしたことによる「自信」のようなものもあるようだ。

 日韓政策対話は昨年12月に局長級によって約3年半ぶりに再開され、今年3月もテレビ会議が行われている。また、韓国政府は対外貿易法を今年3月に改正し、キャッチオール規制の法的根拠をより明確にさせた。輸出管理体制の強化と人員増についても今月6日付で産業通商資源部の貿易安全保障に関する組織を従来の「課」から「局」に格上げさせ、再編する形で補完している。

 こうしたことから今月12日には産業通商資源部の李浩鉉貿易政策官が会見の場で、また金丁漢アジア太平洋局長は滝崎成樹アジア大洋州局長との電話会談で日本に対して対韓輸出規制措置の早期解除を要請していた。李貿易政策官にいたっては「日本側が提起した理由が全て解消され、韓国への輸出に問題がない状況を踏まえると、日本政府が懸案解決に乗り出すべき必要、十分条件は全て備わった。もはや日本は輸出規制の強化措置を原状回復することにためらう理由はない」と胸を張ってみせた。

 日本政府が韓国側の要望に応じて、輸出規制厳格化措置を解除すれば、韓国側からすれば一件落着ということになるが、厄介なのは、期限を切っても安倍政権が応じない場合の文在寅政権の対応である。

 文大統領は昨年12月に四川省の成都で開かれた日中韓首脳会談に合わせて行われた安倍首相との首脳会談の場で日本の輸出管理強化について触れ「早急に原状回復しなければならない」と求め、これに対して安倍首相は「今後も輸出当局間の対話を通じて問題を解いていこう」と答えていた。首脳会談から半年近く経つのに輸出規制問題で進展がないということになれば、文在寅大統領の指導力、責任を問われることになりかねない。

(参考資料:「米国の圧力に屈した」!文政権のGSOMIA破棄中断に支持層が猛反発!

 文政権は当時、「我が政府はいつでもGSOMIAの効力を終了できるとの前提でGSOMIAの終了通告の効力を停止させた」と国民に説明していた。GSOMIAの終了延期が「一時的な猶予」であることを強調することで国民を説得し、同時に日本の輸出規制の撤回を促す策を講じたわけだ。従って、待てど暮らせど輸出規制が解除されないとなると、面子の上ではGSOMIAに手を付けざるを得なくなるが、再度GSOMIAのカードを持ち出すことができるだろうか?

(参考資料:韓国国民の70%が「GSOMIA破棄中断」を評価! 世論調査で判明!

 韓国の革新政党の「正義党」の沈サンジョン代表は「昨年11月のGSOMIA条件付き猶予決定は日本に対する我々の誠意であり、最大限の配慮であった」として、「日本が態度を変更しないならば、断固たる措置としてGSOMIA破棄を決定した昨年8月の初心に戻るべき」と主張しているが、文政権にGSOMIAの終了延期を再検討する考えがないならば、結局のところ、日本が翻意するのをひたすら待つほかないようだ。

 日本は日本で「輸出厳格化措置は韓国最高裁の元徴用工判決に対する報復ではない」と言ってきた以上、韓国が技術的な問題をクリアしても解除しない理由を韓国に対してもまたWTO(世界貿易機構)に対しても明らかにしなければならないが、元徴用工問題で韓国が解決策を示すことが条件となっているならば、日本もまた、韓国がこの問題で何もしなければ先に動くことはなさそうだ。

(参考資料:日韓共に韓国国会議長の「元徴用工解決案」に反対!

 「新型コロナウイルス」という未曽有の災難に見舞われても変わらない日韓関係はまさに摩訶不思議だ。

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動開始。98年 ラジオ「アジアニュース」パーソナリティー 。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。著書に「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人、残念な日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など25冊

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