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北朝鮮が予告した「新たな戦略兵器」発射の「Xデー」は?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

 金正恩委員長が年末に開催された党中央委員会全員会議(12月28-31日)で「世界は我々が保有することになる新しい戦略兵器を目撃するだろう」と断言したが、「目撃」の時期については「近いうちに」「間もなく」「遠からず」といずれにも解釈できるような抽象的な表現を用いていた。では一体、いつ頃を指すのだろうか?

(参考資料:北朝鮮が「核開発・ミサイル発射中断」撤回を表明!東京五輪に暗雲が!!

 北朝鮮が中長距離弾道ミサイル「火星12号」、準ICBM級「火星14号」、そしてICBM級「火星15号」の発射実験に加え、核実験まで行っていた2017年のデーターを参照してみると;

 例えば、9月4日に行った水爆実験(6回目)の時は20日前の8月14日に「我々が今までに見せてきた核戦略武力の味をとくと見届けることになるだろう」との外務省の「予告」があった。

 また、11月29日に発射された「火星15号」は労働新聞が10月12日付の記事で「我々が敵の制裁と封鎖、軍事圧殺策動を水の泡にし、核武力完成目標をどのように達成するかを米国とその追随勢力は自分の目ではっきりと見ることになるだろう」と予告してから48日目に発射されていた。

 予告してから発射まで最も長かったのは「火星12号」である。金委員長は3月19日に高出力エンジンの燃焼実験に立ち会った際に「今日成し遂げた巨大な勝利がどのような意義を持つか、世界が目の当たりにすることになる」と述べていたが、「火星12号」の発射は金委員長の発言から56日後の5月14日であった。

 この三つのケースを前例とするならば、最短で20日後、最長で約2か月後には北朝鮮は「予告」を実行に移している。仮に最短ならば、今週末にあっても不思議ではない。最長でも来月中には実施される公算が高い。

 北朝鮮が事を起こす場合は、記念日など節目の日に合わせるケースが多い。

 幾つか例を挙げるならば、失敗に終わったが、2012年4月13日の人工衛星の打ち上げと称した長距離弾道ミサイル「テポドン」の発射は建国の父・金日成主席生誕100周年(4月15日)を祝って行われている。また、2016年1月6日の4回目の核実験は金正恩委員長の誕生日の2日前、翌2月7日の「テポドン」は人民軍創建日(2月8日)の直前に、そしてこの年2回目の核実験(5度目)は建国記念日(9月9日)の日に実施されていた。

 今月(1月)末にはこれといった記念日も、節目の日もない。また、大義名分も見当たらない。あえて挙げるならば、26日が7年前に金正恩委員長が民族の尊厳と国の自主権を守護するため国家安全及び対外部門の責任者ら集め。実体的で強度の高い国家的重大措置を取る断固たる決心を表明し、担当責任者らに具体的課題を提示した日ぐらいである。

 後は、友好国の中国とロシアが共同提案している北朝鮮制裁緩和決議案が国連安保理に提出され、否決された時だが、決議案の草案が昨年12月30日に初めて非公式会合で協議されただけで、今月中に提出されるかどうかもわからない。

 しかし、来月(2月)は記念日が目白押しだ。

 何よりも8日は朝鮮人民軍創建日である。そして2日後の10日は核保有宣言15周年の日である。続いて、16日が金正日総書記生誕日。そして月末は決裂したハノイ米朝会談1周年と、記念日や節目の日が連続してある。どれもこれも行動に移すタイミングとしては申し分ない。

 但し、過去には例外があって、例えば2017年の8月9日に戦略軍報道官が声明を発表し「米国に重大な警告シグナルを送るため中長距離戦略弾道ロケット『火星12号』でグアム周辺への包囲射撃を断行する作戦案を慎重に検討している」と「火星12号」4発による「包囲射撃」を示唆していたが、実際には行動に移さなかった。

 また、国連総会に出席(9月21日)した李容浩外相が「歴代最大級の水素爆弾の太平洋上での実験」を暗示する発言をしていたが、これも見送られていた。

 米朝はトランプ大統領が金正恩委員長の誕生日に親書を送るなど、まだ首の皮一枚繋がっているが、首脳間の「友情」について金委員長の外交ブレーンである金桂官外務省顧問が今月11日に「金委員長が個人的にトランプ大統領に良い感情を持っていたとしてもそれはどこまでも個人的な感情に過ぎない。委員長は我が国を代表し、国家の利益を代弁する人なのでそうした私的な感情をベースに国家を論じることはしない」と言っているだけに北朝鮮の「予告」は米国にとって依然として「脅威」となっている。

(参考資料:北朝鮮がまだ見せてない「身の毛がよだつ」6枚の「Xmasカード」

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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