Yahoo!ニュース

食べ物づくりに関わる人をコロナから守る 第2波に備え根本的対策を

奥田和子甲南女子大名誉教授、日本災害救援ボランティアネットワーク理事
食べ物を作る作業風景イラスト 提供:奥田和子

  

新型コロナウイルス感染の拡大にともない、なじみの外食店が長期間にわたり閉店になり、学校給食もストップした。そのため、家庭で食事をしなければならない状況になったが、その間、デリバリー、テイクアウトなどが相次いで出現するようになった。これは閉店中の飲食店が生き延びることができ、一方で各家庭の食生活への支援になった。双方よしの関係である。しかし不安もあった。現在は、政府の緊急事態宣言の解除を受け、飲食店も通常開業ができホッとしているところであるが、家庭と飲食店、双方ともに感染防止に気づかいしている。単に座席を離し透明の仕切りを立てるだけで不安は払しょくされません。コロナ第二波に備えてより根本的な施策が求められています。

今後の第二波感染の到来に備えて以下の2点を問題提起したい。

1 調理人、料理提供者にコロナウイルスの「PCR検査」の実施

不特定多数の食べ物を料理したり、客に運んでサービスをする関係者は「感染症の疑い」があってはいけません。いくらついたてを立て、テーブルを消毒してもウイルス保持者が料理を担当しているのでは感染が拡大し論外です。その意味で食べ物関係の仕事に携わる方々は「陰性」という条件が求められます。食品製造・販売者、それにコンビニの店員などもPCR検査をして陰性である人が担当するのが望ましい。下記の人たちに対して検査ができる対策を行政に要望します。

  ・テイクアウト、出前、ケータリング、仕出し屋、ファーストフードなどに携わる関係者

  ・飲食業

  ・調理加工業

  ・食品加工業―食べ物の製造、品質チェック、包装などにかかわる業務

  ・喫茶店などの店員など   

2 飲食店は「食品衛生法などの法規制」に従って保健所から認可されています。「お持ち帰り品―例えば弁当など」を提供する上で、十分な理解が必要です。

もし仮に自分がとびきりおいしい“おにぎり作りの名人”だとしても、それを自分の台所で握り、街頭に持ち出して売るという行為は法的にみて違反行為で「食品衛生法」で禁じられています。そもそも食べ物は、ありがたいものですが、1歩誤れば命取りになる凶器に変身するからです。食べ物・飲み物は衛生面でコロナや食中毒になる危険性をはらんでいるからです。

すでに店を構えていてその店で作り、その料理を店頭で「お持ち帰り品」として売る、これが原則です。法的規制と衛生管理をして料理を作り、「お持ち帰り品」を提供しなければなりません。

また夏場から秋にかけて気温が30度を超える日が多くなり衛生面で不安です。店頭販売あるいは宅配された食べ物は往々にしてそのまま食べることが多く再加熱しにくい。食べるまでの間に細菌が繁殖するのが不安です。入手後はなるべく低温管理し早く食べることに注意しましょう。

 

お持ち帰り品を提供する上で、以下の項目の表記と対策が必要です

 ・誰がつくったのか

   ・どこでつくったのか

  ・何時につくったのか

・品質表示をしているか

  ・店頭での保管状態はどうか

  ・とくに衛生面は大丈夫か 使い捨て手袋をせずに手指で直に盛り付けていないか

 帽子、エプロン、マスクなどをしているか、服装は清潔か

  ・運搬中の温度管理はどうか

  ・販売時の温度管理はどうか

  ・おいしさだけでなく塩味は濃すぎないかなどをチェックする

新型コロナウイルスに感染すると治療薬がありません。感染しないように努力するしか方法はありません。食事をしない日は一日もありませんので、食べ物が感染源になる可能性が高いのです。食べ物に触れるすべての関係者は、感染の防止に努め、まずご自身が陰性で安全であることが大切です。

学校も再開します。給食担当者も新型コロナウイルス「陰性」であることが強く求められます。そのため、行政はPCR 検査を必要度の高いグループから急いで実施する必要があります。

甲南女子大学名誉教授

奥田 和子

甲南女子大名誉教授、日本災害救援ボランティアネットワーク理事

専門は食生活デザイン、食文化、災害・危機管理と食、宗教と食。広島大学教育学部卒業。大阪市立大学学術博士取得。米国カリフォルニア大学バークレー校栄養学科客員研究員、英国ジョーンモアーズ大学食物栄養学科客員研究員、甲南女子大学人間科学部人間環境学科教授を経て、現職に至る。「震災下の食―神戸からの提言」(NHK出版)、「働く人たちの災害食―神戸からの伝言」(編集工房ノア)、「和食ルネッサンス『ご飯』で健康になろう」(同時代社)、「箸の作法」(同時代社)、詩集など著書多数。

奥田和子の最近の記事