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学校閉鎖のときには食の自立に挑戦せよ(前編)

奥田和子甲南女子大名誉教授、日本災害救援ボランティアネットワーク理事

 2009年、今から19年前のことである。メキシコで発生した豚インフルエンザと呼ばれる新型インフルンザ(H1N1)が日本に上陸した。豚を発生源とし、やがて人に感染して広まった感染症です。最初は成田空港で、続いて神戸市、大阪市で患者が出た。もちろん兵庫県、大阪府では高校を中心に学校が閉鎖された。

 その時、私は食の危機対策の研究中ですぐさま絵本を書きました。家にポツンとお留守番役をする子どもたちにメッセージを送るためです。ご覧のような表紙です。

(イラスト提供 奥田和子)

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 いつも思うことですが、平和に歯車が回っているときはいいのですが、突然災害が起ると人々は困惑し不平を爆発させます。日頃の準備がほとんどできていないからです。これでは災難を乗り越えることは無理です。

 私の提案は簡単です。日頃からボチボチでいいから準備しましょうということです。現在、約20年前よりももっとタチの悪い新型コロナウイルスが世界に襲い掛かりました。そのため感染を防ぐために小学校・中学校がお休みになりました。すると、これは何だ!不便だ!子供がかわいそうだ!と大合唱です。そうでしょうか、仕方のないことです。不平不満を言いすぎる。もっと謙虚に受け止めなければならない。

 そもそも、子どもたちは年々大きくなりいつまでも子どもではない。鍛えて育てる、そして困難を乗り越えることができる強い子供に育てなければならないと私は思う。

 この絵本では、子どもが一人でお留守番する羽目になった時は自立の絶好のチャンスととらえ、食の自立のためにどう教育すればよいかを描いています。

■ 子どもは食事時一人で外出できない。家で食べなければならない。そのためにお昼に食べる食べ物の置き場を教えておき、4つの箱を用意して食べ物を分類して入れておきます。そこから1つずつ選んで食べることを教えます。1つずつ自分の好きなものを選んで食べます。4つあるので健康が保てます。これを1週間します。*各箱に7個ずつ入れておく。

(イラスト提供 奥田和子)

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■電子レンジの使い方を教える

食べ物を缶または袋から出して食器に入れ電子レンジで温める。これだけでも難しい。日頃からいろいろ教えておけば済むこと。

(イラスト提供 奥田和子)

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■食べた後の食器の洗い方を教える

(イラスト提供 奥田和子)

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■これで大きくなって親元を離れ、自炊するようになったときでも大丈夫なような大人に育てなければならない。子どもはいつまでも子どものまま放置しておいてはいけない。大人に成長させなければいけない。

この絵本には可愛らしいイラストが描かれている。仲良しのイラストレーターが心を込めて描いてくださった。ありがたい。

次回は(後編)をお送りする。こうご期待。

甲南女子大学教授

名誉教授 奥田和子

甲南女子大名誉教授、日本災害救援ボランティアネットワーク理事

専門は食生活デザイン、食文化、災害・危機管理と食、宗教と食。広島大学教育学部卒業。大阪市立大学学術博士取得。米国カリフォルニア大学バークレー校栄養学科客員研究員、英国ジョーンモアーズ大学食物栄養学科客員研究員、甲南女子大学人間科学部人間環境学科教授を経て、現職に至る。「震災下の食―神戸からの提言」(NHK出版)、「働く人たちの災害食―神戸からの伝言」(編集工房ノア)、「和食ルネッサンス『ご飯』で健康になろう」(同時代社)、「箸の作法」(同時代社)、詩集など著書多数。

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