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災害時の食―水がない!配慮のいる幼児、高齢者対応

奥田和子甲南女子大名誉教授、日本災害救援ボランティアネットワーク理事

災害時の食事で一番困るのは幼児と高齢者です。阪神・淡路大震災では、乾パンが硬くて喉を通らない。そこで高齢者は水に浸して食べました。熊本地震では幼児の離乳食がないため栄養士さんが鍋に米の粉を入れ野菜ジュースで溶かして加熱し、手作りの流動食を食べさせました。災害時は水と熱源がなく、肝心の食べ物が手に入りにくい状況です。どうすればよいでしょうか、皆さんご一緒に本気で考えましょう。

私は熱も水も使わないで離乳食、高齢者食を創る方法を提案しています。それは市販の離乳食やおやつ類を備蓄しておいて、災害時に水と熱を使わずに食品同士を組み合わせる創り方です。

薬局(ドラッグストア)には幼児用の離乳食が多く販売されています。その中から“主食”になりそうなものを選び、一般のスーパーで子どもたちが普段食べているおやつも加え計13種類選びました。(写真1)

(写真1)筆者撮影
(写真1)筆者撮影

これに今年5月わが国ではじめて発売された江崎グリコの液体ミルク「赤ちゃんミルク」を室温で加えて「即席離乳食」を手作りしました。やり方をご紹介します。

赤ちゃんミルクを使った幼児用と高齢者用の流動食の創り方

1)食品に赤ちゃんミルクを注ぎ入れ離乳食を創る(実験日2019.9.2.室温26℃、実験者:筆者、中学生、高校生3名)

食品4gをチャック付きビニール袋に入れ外からたたいて砕きます。手の平で砕けるものもあります。例えばジュースの缶やお茶のペットボトルの背中でこすってもよい。粉になったら、プラスチック容器に入れ、室温のまま赤ちゃんミルクを食品の重量の約6倍、25ml注ぎ、スプーンで混ぜ3分間待つとなめらかな流動食に変身します。13種類試した結果、次のようなタイプに分かれました。甘すぎるもの(ただしおやつにするなら適当)硬すぎて戻りにくく時間がかかるもの(カップラーメン、ただし粉末にすれば早く戻る)粘り気が少ないもの(ボーロ、クッキーなど。ただし食品のg数を多くすれば適当)生でんぷんのため加熱しないと食べられないので要注意(そうめん、うどん)でした。しかし、そうめん、うどんを除いた他の食品は全体的にミルクの味が引き立ってまったりしておいしい。最もおいしかったのは「ハイハイン」亀田製菓でした。味がひかえめで味わい深く粘りも程よく、口当たりがなめらかで良好と評価されました。和光堂の「米がゆ」はでんぷんをアルファ化(煮えた状態)後、粉末にしてあるので、室温の液体で溶かすことは問題ないとのことです。(お客様相談室からの回答2019.9.5.奥田)

2)上記と同様の食品に市販果汁100%グレープフルーツジュース(神戸居留地)を注ぎ入れ離乳食を創る(写真2)

(写真2)筆者撮影
(写真2)筆者撮影

本実験ではグレープフルーツジュース25mlを加え、5分間放置した後試食しました。ジュースの味が前面に出ていたので、各自の好みのジュースを選ぶよう勧めます。

その結果、1)の結果と同様でした。とくにハイハイン、亀田製菓がやさしい味で粘りも程よく離乳食に最適でした。

以上、離乳食について述べましたが、高齢者についても同様に考えることができます。今回試した食品のほとんどは高齢者用ではなく幼児用ですが、高齢者にそのまま流用できることがわかりました。例えばハイハインを上記のように流動食にすれば、えんげ(嚥下)困難な高齢者、食べ物が喉につかえて飲みこみにくい高齢者、災害時の混乱で入れ歯を見失った高齢者にふさわしい食べ物です。サジですくって舌にのせると舌で容易につぶすことができ安心安全な食事に早変わりします。

災害時は水がない、硬い食べ物は受け付けないなど困難な状況に直面します。身近な市販品を使って液体ミルクや好みの飲み物を注いで流動食を創る工夫をしてみてはいかがでしょうか。参考までに使った食品を表示しておきました。(表1)

(表1)筆者作成
(表1)筆者作成
甲南女子大名誉教授、日本災害救援ボランティアネットワーク理事

専門は食生活デザイン、食文化、災害・危機管理と食、宗教と食。広島大学教育学部卒業。大阪市立大学学術博士取得。米国カリフォルニア大学バークレー校栄養学科客員研究員、英国ジョーンモアーズ大学食物栄養学科客員研究員、甲南女子大学人間科学部人間環境学科教授を経て、現職に至る。「震災下の食―神戸からの提言」(NHK出版)、「働く人たちの災害食―神戸からの伝言」(編集工房ノア)、「和食ルネッサンス『ご飯』で健康になろう」(同時代社)、「箸の作法」(同時代社)、詩集など著書多数。

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