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災害は突然に! カンチガイ、場違いの備蓄をしていませんか。

奥田和子甲南女子大名誉教授、日本災害救援ボランティアネットワーク理事

災害は突然やってくる

災害に予告はない。ある日突然襲ってくる。朝か真夜中かもわからない。南海トラフ大地震は駿河湾から宮崎の日向灘まで全長700kmの海岸沿いの住民に襲いかかる。まあ、その時はその時、なるようになるさと高をくくってのんびりしている場合だろうか。内閣府は太刀打ちできないよ!と警告している。実はこれまですでに備蓄している備蓄食品ははたして食べられるシロモノかどうか。もし仮に食べられないとすれば、命があぶないのではないか。

カンチガイ、場違いの備蓄をしていませんか いますぐチェックを!

大きくグラッグラッときたらガス、水道、電気がストップする。電気が止まると暖房も止まる。体温が維持できなくなり寒さで震えがくる。我慢できなくなり、あたたかい飲み物や食べ物が欲しくなる。湯を沸かそうと蛇口をひねっても水が出ない。ポットのコードを差し込んでも使えない。ガスもダメ。なんで!災害とはそもそも残酷なものなのだ。

さて、あなたはカップ麺、アルファ米、米など、これだけを備蓄していませんか。これらは災害直後の状態で役にたちますか。いかがでしょう。これらの食品は水と熱を加えなければ食べられないものばかりです。

災害直後は封を切ったらすぐ口に運ぶことができるものしか役立ちません。たとえばおかき缶、ビスケット缶などです。のどがかわくので飲み物が必要です。

地域によっても違いますが1週間もすると電気が回復するでしょう。すると湯が沸かせます。もちろん水道は1ヵ月以上回復しないと考えた方がいいでしょう。

ボトル入りの水の備蓄は欠かせません。水と熱源があれば湯をわかすことができます。カップ麺やアルファ米が食べられます。その後、電気釜で米を炊くこともできご飯が出来上がる。ついでにインスタント味噌汁に湯を注ぐこともできる。熱源、水の備蓄などが窮地を救います。温かいご飯が炊けてこそはじめてカレーのルーが役立つのです。

東日本大震災では、直後にガス、電気、水がないため炊事ができず備蓄がないのでなにも食べ物がなかったという記録があります。阪神・淡路大震災でも直後なにも食べるものがなかった。ひもじい思いをしました。

自分の好みのものを備蓄する

ふだん食べ慣れたもの、好物、ふだんよりおいしいものを備蓄するように勧めます。東日本大震災の記録に、興味深い文章を見つけました。「災害がおこった当日夜、備蓄してあったクラッカーと水が配られました。しかし、精神的ショックや興奮や疲労からか、それを食べる人はあまりいませんでした」と山田町の栄養士さんが記録されています。食べ物がその場のニーズに合わなかった1例です。ふだんならおいしく食べられるものが、非常事態では受け入れられない。自助の大切さとは、自分を奮い立たせる食べ物は自分しかわからない、個人で違うということです。自分が選び抜いたおいしいものこそ、○○さん固有の備蓄食品といえましょう。ネット販売はお仕着せが多くないですか。

災害時のライフライン、混乱状況の変化に応じて、その時期にふさわしい備蓄食品を整えたいものです。

甲南女子大名誉教授、日本災害救援ボランティアネットワーク理事

専門は食生活デザイン、食文化、災害・危機管理と食、宗教と食。広島大学教育学部卒業。大阪市立大学学術博士取得。米国カリフォルニア大学バークレー校栄養学科客員研究員、英国ジョーンモアーズ大学食物栄養学科客員研究員、甲南女子大学人間科学部人間環境学科教授を経て、現職に至る。「震災下の食―神戸からの提言」(NHK出版)、「働く人たちの災害食―神戸からの伝言」(編集工房ノア)、「和食ルネッサンス『ご飯』で健康になろう」(同時代社)、「箸の作法」(同時代社)、詩集など著書多数。

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