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本格的な寒気南下で寒さ強まる日本列島 一方で南の海でよくやく台風17号の発生の兆し

饒村曜気象予報士
寒気南下を示す日本海の筋状雲と熱帯低気圧になりそうな熱帯の雲(11月12日9時)

本格的な寒気の南下

 日本列島には、この時季としては強い寒気が南下しています

 寒気の強さの目安として、上空約5500メートルの気温が使われており、この気温が氷点下36度以下なら大雪、氷点下30度以下なら平野部でも雪というものです。

 11月11日から12日にかけて南下してきた寒気は、氷点下36度以下の範囲が一部北海道にかかり、氷点下30度以下の範囲が青森県まで南下してきました(図1)。

図1 上空約5500メートルの気温分布(上:11月12日朝の解析、下:13日朝の予想)
図1 上空約5500メートルの気温分布(上:11月12日朝の解析、下:13日朝の予想)

 このため、北海道士別市で大雪警報が一時発表されるなど、北海道から東北北部では雪のところが多くなりました。

 気温が記録的に高かった今年は、10月21日夜に旭川市でみぞれが降って平年より2日遅い初雪を観測したものの、それ以外の地方では初雪の観測が大幅に遅れていました。

 それが、11月10日夜に稚内で平年より22日も遅い初雪を観測したのをはじめ、11日未明から朝にかけて、札幌市、函館市、室蘭市、網走市で平年より9日から12日遅い初雪を観測しました。

 北海道以外でも、11月11日朝には青森市で平年より3日遅い初雪を観測しました。

 このため、11月12日の日曜日には、日中も気温が上がらず、最高気温が25度以上の夏日となったのは、沖縄県の6地点(気温を観測している全国914地点の約0.7パーセント)しかありませんでした(図2)。

図2 真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(9月1日~11月15 日、ただし11月12~15日は予測)
図2 真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(9月1日~11月15 日、ただし11月12~15日は予測)

 一方、最低気温が0度未満となる冬日は、220地点(約24パーセント)で観測しており、月初めの暖かさとは様変わりです。

 週明けの11月13日は、日本の東からカムチャッカ近海で低気圧が発達し、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となる見込みです(図3)。

図3 予想天気図(左は11月13日9時、右は14日9時の予想)
図3 予想天気図(左は11月13日9時、右は14日9時の予想)

 氷点下36度以下の非常に強い寒気は日本から離れますが、氷点下30度以下の強い寒気は、東北南部から北陸まで南下してきますので、多くの地方で初雪を観測する可能性があります。

 週明けの11月13日は、寒気の影響で気温が低く、関東から西でも12月並みの寒さとなる所もある見込みです。

 冬日も200地点(約22パーセント)程度となる見込みです。

 また、日本海側や西日本を中心に大気の状態が不安定となるため、強い雨や、落雷、突風などにも注意が必要です。

 11月13日は、旧暦の10月1日で神無月(出雲地方は神有月)、別名、小春に入ります。従って、週明け以降に晴れて気温が上昇すると小春日和となります。

 ただ、初冬の寒さの中でのホッとする春のような暖かさという本来の意味とは、ちょっと違った今年の小春日和になりそうです。

遅い台風の発生ペース

 日本付近が季節外れの暖かさから、今の時季らしい寒さになってきたのに対し、日本の南海上では、引き続き、夏の代表的な現象である台風の発生が少ないという状況が続いています(表1)。

表1 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない)
表1 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない)

 気象庁は、昭和26年(1951年)以降の台風について統計をとっていますが、それによると、10月末までで一番少なかったのは平成22年(2010年)の14個です(表2)。

表2 10月末までの台風発生数の少ない方からのランキング
表2 10月末までの台風発生数の少ない方からのランキング

 今年は、昭和58年(1983年)などと並んで、2位タイの少なさとなりました(気象の統計では、タイ記録の場合、新しく観測した記録の方を優先するので、2位といっても間違いではありません)。

 現在、日本の南海上のカロリン諸島には、台風のタマゴである熱帯低気圧に発達する可能性がある積乱雲の塊(タイトル画像の左側の円)があり、その東側にも熱帯低気圧になりそうな積乱雲の塊(タイトル画像の右側の円)がありますので、ようやく、台風発生の可能性がでてきました。

【追記(11月13日5時15分)】

 気象庁は、カロリン諸島の熱帯低気圧が、今後24時間以内に、台風17号に発達すると発表しました。発生した台風17号は、フィリピンへ向かって西進を続ける見込みです。

【 追記(11月13日23時00分)】

 気象庁は、カロリン諸島の熱帯低気圧が24時間以内に台風となる見込みとしていましたが、台風に変わる可能性が低くなったとして、熱帯低気圧情報を終了しました。

 台風が発生すれば台風17号となりますが、台風が14個しか発生しなかった平成22年(2010年)、台風が16個しか発生しなかった平成10年(1998年)を除くと、統計史上、一番遅い台風17号の発生ということができます。ちなみに、これまでで一番遅い台風17号の発生は、昭和44年(1969年)11月4日3時です。

 昭和26年(1951年)以降に、11月から12月に発生した台風の平均は3.5個、一番少ないのは、平成22年(2010年)の0個、一番多いのが令和元年(2019年)などの7個です(図4)。

図4 11月〜12月に発生した台風の数(昭和26年(1951年)以降)
図4 11月〜12月に発生した台風の数(昭和26年(1951年)以降)

 仮に、台風17号・台風18号が続けて発生するなど、11月~12月の台風発生数が過去最多の7個の場合でも、令和5年(2023年)の台風発生数は23個と、平年より少なくなります。

 今年は、異常な暑さが続いたものの、暑さを象徴する現象である台風の発生は少ない年になりそうです。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3、表1の出典:気象庁ホームページ。

図4、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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