雪ではない「香雪(こうせつ)」と、花ではない「不香の花(ふきょうのはな)」 今週の北陸地方は両方
うめの香り
うめは香りが良いことから香散見草(かざみぐさ)とも言われますが、早春に咲く花ですので、うめが咲いた後に雪が降ることは少なくありません。
このため、香りの良い白い花、特に梅の花のことを「香雪(こうせつ)」と呼ぶことがあります。
一方、雪の結晶は六角形で花のようです(Snow flower)が、匂いはありませんので、「不香の花(ふきょうのはな)」ということもあります。
雪ではない「香雪」と、花ではない「不香の花」があるのです。
今年のうめの開花
気象庁では、季節の遅れ進みや、気候の違い、変化など総合的な気象状況の推移を把握するため、全国の気象官署で観測する対象の木(標本木)を定め、統一した基準により植物の観測を行っています。
現在行われているのは、うめ・さくら・あじさい・すすきの開花した日、さくらの満開した日、かえでの紅葉した日・いちょうの黄葉した日、かえで・いちょうの落葉した日の9項目です。
うめの開花日とは、標本木に5~6輪の花が咲いた状態になった最初の日をいい、白色のうめを対象としています。
標本木に5~6輪というのは、さくらの開花と同じですが、さくらと違って満開の観測はありません。うめは、さくらのように木のほとんどで花が咲くということがないからです。
うめの開花は1月中旬に沖縄地方で始まり、1月31日に九州地方から山陰、四国地方、近畿・東海・関東地方の太平洋沿岸に、3月31日に北陸東部、東北地方南部に達します(図1)。
令和4年度(2022年度)のうめの開花は、四国の高松で12月29日と、平年より25日も早く始まりました。
1月中旬から下旬の暖かさで奈良や鳥取、熊谷、福井で平年よりかなり早く開花しましたが、その後の強い寒気の南下で、普段は開花が早い九州などでは平年より遅い開花になっていました(図2)。
2月18日から19日は、南岸低気圧が北日本を通過し、この低気圧に向かって南よりの風が吹き、ほぼ全国的に気温が上昇し、2月18日には新潟で、平年より21日も早くうめが開花しました。
しかし、低気圧が通過した19日午後からは北よりの風に変わり、この北よりの風をきっかけにして、週明け以降強い寒気が南下する見込みです(図3)。
西高東低の冬型の気圧配置が強まり22日(水)頃にかけて厳しい寒さが続く予想です。
平地でも雪が降るという強い寒気の目安となっている上空約1500メートルで氷点下6度以下の範囲は、2月21日夜には九州南部を除く西日本から東日本、北日本を広くおおう見込みです(図4)。
このため、日本海側では広い範囲で雪が降り、新潟や福井などの北陸地方では、うめが開花したあとの雪ですので、「香雪」の上に「不香の花」が降ってくるということになりますが、風流な表現では収まりません。
2月20日(月)と21日(火)は北日本の日本海側や北陸では大雪やふぶきとなる可能性がありますので、最新の気象情報に注意してください。
うめの開花日とさくらの開花日との差
うめの開花日とさくらの開花日を比較すると、どの地方もうめの方が早く咲いています。
沖縄・奄美地方で観測するさくらは「ひかんざくら」で、多くの地方で観測されている「そめいよしの」とは違いますが、うめもさくらも1月中旬の開花です。
九州地方から山陰、四国地方、近畿・東海・関東地方の太平洋沿岸では、うめが1月末の開花、さくらが3月末の開花で、両者には2ヶ月の差があります(図5)。
しかし、さくらの開花前線の北上は、うめの開花前線の北上より早く、北陸東部、東北地方南部では、両者の差は10日位に縮まり、北海道南部ではほぼ同じになっています。
北国の春は、いろいろな花が一斉に咲きます。
今年の冬は、強い寒気が流れ込むこともありましたが長続きはしなかったため、特に寒い冬というわけではありません。
2月も冬型が続かず気温が高めですが、この先も高めの傾向が続き、さらに3月に入るころからはより高温となる可能性がありますので、今年のさくらは、平年より早いところが多くなりそうです(図6)。
寒い寒いといっているうちに、さくらの開花まであと一ヶ月をきってきました。
寒暖を繰り返していますが、季節は着実に春へと進んでいます。
図1、図5の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
図2の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図3の出典:気象庁ホームページ。
図4、図6の出典:ウェザーマップ提供。