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今冬一番の寒気が南下 記録的な低温で5年前のような水道管凍結事故多発が懸念

饒村曜気象予報士
水道凍結トラブル(提供:イメージマート)

混んだ等圧線

 週明けの1月23日(月)にほぼ全国的に雨や雪を降らせた低気圧が日本の東海上に去り、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置が強まっています。

 等圧線の間隔は狭ければ狭いほど風が強くなり、強い寒気を南下させますが、24日(火)9時の予想天気図では、特に等圧線が混んでいるのは西日本です(図1)。

図1 予想天気図(左は1月24日9時、右は25日9時の予想)
図1 予想天気図(左は1月24日9時、右は25日9時の予想)

 つまり、24日に強い寒気が南下するのは主に西日本ということになります。

 そして、25日(水)9時の予想天気図では、特に等圧線が混んでいるのは東日本から北日本ですので、強い寒気が特に南下するのは東日本から北日本ということになります。

西日本は火曜、東・北日本は水曜から厳しい寒さ

 福岡の気温の推移をみると、昨年の12月以降、周期的に最高気温、最低気温ともに大きく下がっています。

 今冬、これまで一番寒かったのは、クリスマス前の12月21日で、最高気温が3.3度、最低気温が0.1度でしたが、令和5年(2023年)になってからは、気温が高い日が増えています。

 1月13日の最高気温は19.4度まで上昇していますが、その11日後の24日(火)の最高気温の予報は4度、翌日の25日は最高気温が3度、最低気温は氷点下3度というと急激な気温低下の予想です(図2)。

図2 福岡の最高気温と最低気温の推移(1月24日~30日は気象庁、1月31日以降はウェザーマップの予報)
図2 福岡の最高気温と最低気温の推移(1月24日~30日は気象庁、1月31日以降はウェザーマップの予報)

 福岡では10日ほどで20度近い気温低下ですので、ものすごく厳しい寒さに感じると思います。

 最高気温が平年の最低気温より低くなるという寒さのあとも、最低気温は0度前後という日が一週間続く予報です。

 西日本では、火曜日以降、いままで水道管が凍結しなかった市街地でも、寒い日が続くことで凍ることがある冷え込みですので、凍結対策を心がける必要があります。

 一方、東京の気温変化の推移をみると、昨年の12月以降、周期的に最高気温、最低気温ともに下がっています。福岡ほど振れ幅は大きくありません(図3)。

図3 東京の最高気温と最低気温の推移(1月24日~30日は気象庁、1月31日以降はウェザーマップの予報)
図3 東京の最高気温と最低気温の推移(1月24日~30日は気象庁、1月31日以降はウェザーマップの予報)

 また、今冬、東京で最高気温が一番低かったのは1月16日の7.7度で、クリスマス前の寒気南下時よりも寒くなっています。

 今回の寒気は、1月16日の寒気よりさらに強いものです。

 東京が寒くなるのは、福岡より一日遅れた1月25日(水)からで、最高気温の予想は5度、最低気温の予想は氷点下3度です。

 そして、その後も最低気温が0度位という日が1週間くらい続く見込みで、東日本でも、水曜日以降、いままで水道管が凍結しなかった市街地でも、寒い日が続くことで凍ることがある冷え込みですので、凍結対策を心がける必要があります。

 北日本は厳しい寒さが続いており、水曜日以降、より一段の冷え込みがありますが、水道管凍結に備えた対策が日頃から行われていることから、水道管凍結という面だけからいえば、大きな被害は発生しないと思われます。5年前の西日本から東日本で水道管凍結事故が相次いだ時もそうでした。

 ただ、大雪や暴風などには厳重な警戒が必要です。

 気象庁では次のように警戒を呼び掛けています。

 日本付近は24日から26日頃にかけて強い冬型の気圧配置となるため、北日本から西日本の日本海側では大雪となり、太平洋側の平地でも大雪となる所があるでしょう。また、全国的に非常に強い風が吹き、大しけとなる見込みです。大雪や路面の凍結による交通障害、暴風雪、高波に警戒してください。

 最新の気象情報の入手に努め、最大限の警戒をしてください。それに加えて、水道管の凍結という話です。

5年前の水道管凍結事故

 今から5年前の、平成30年(2018年)1月25日から月末にかけては、日本列島に強い寒気が南下し、東京では1月25日に最低気温が氷点下4.0度、翌26日に最低気温が氷点下3.1度を観測するなど、寒い日が続いています。

 このため、東日本から西日本では水道管凍結事故が相次いでいます。

「水が出ない」問い合わせ2130件 都水道局「保温材で凍結防いで」/東京

 強い冬型の気圧配置により記録的な寒さとなった25日、都内の家庭で水道管の凍結が激増した。都水道局によると、同日午前8時から午後4時までに「水が出ない」など2130件の問い合わせがあった。同局は水道の防寒対策をホームページなどで公開しており、「寒い日が続くので、事前に対策をして凍結を防いで」と呼びかけている。

 都水道局によると、問い合わせ件数は22日8件▽23日19件▽24日108件――で、1000件を超えるのは異例という。

 特に注意が必要なのは、水道管が露出している場合の多い戸建て住宅。凍結を防ぐには、管が直接外気に触れないよう保温材(市販のものか毛布や発泡スチロールなど)を巻き付けてひもでしばって固定し、ビニールテープなどですきまなく重ねて巻く。凍結して水が出ない場合は、タオルをかぶせてぬるま湯をゆっくりかける。熱湯をかけると水道管が破裂することがあるという。

引用:毎日新聞(平成30年(2018年)1月26日朝刊)

佐渡で1万世帯 断水 陸自給水活動 寒波で水道管凍結、破裂=新潟

強い寒波に見舞われた佐渡市で水道管の凍結、破裂が相次ぎ、29日午後7時半現在、半数近くの約1万世帯が断水状態となっている。県を通して災害派遣要請された陸上自衛隊のタンク車やトレーラーがフェリーで運ばれ、住民への給水活動を始めた。

引用:読売新聞(平成30年(2018年)1月30日朝刊)

 最新の気象情報を入手し、事前の凍結防止対策が必要です。

 特に、めったに水道管が凍らない比較的暖かい地方があぶないのです。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2、図3の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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