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フィリピンの東で台風22号発生か 沖縄地方と小笠原地方は11月まで台風の季節

饒村曜気象予報士
フィリピンの東海上の雲の塊(10月26日15時)

大きな移動性高気圧

 大きな移動性高気圧が日本列島を通過中です。

 朝鮮半島から中国東北区にかけて雲のない領域が広がっており、日中は全国的に晴れる見込みです(タイトル画像参照)。

 上空に流入していた寒気も東海上へ離れるため、日本海側でも天気が安定して晴れる見込みです。

 日本では秋まっさかりですが、フィリピンの東海は、まだ夏が残っており、積乱雲がまとまり、熱帯低気圧となる見込みです(図1)。

図1 予想天気図(図中のTDが熱帯低気圧、上:10月26日9時の予想、下:10月27日9時の予想)
図1 予想天気図(図中のTDが熱帯低気圧、上:10月26日9時の予想、下:10月27日9時の予想)

 そして、この熱帯低気圧は、西へ進む予報となっています。

令和4年(2022年)の台風

 フィリピンの東海上では、インド洋から南シナ海を通ってやってくる西風と、太平洋高気圧の南へりをまわる東風がぶつかり、モンスーントラフと呼ばれる気圧の低い領域ができています。

 ここで、熱帯低気圧が発生し、その熱帯低気圧が台風に発達するのですが、ラニーニャ現象が起きると、モンスーントラフの位置が平年より北西にずれます。

 このため、ラニーニャ現象の起きている今年、令和4年(2022年)8月から9月の台風の発生場所は、例年より北西、つまり、日本に近い海域にずれています。

 日本に近い海域での発生ですから、日本に影響する可能性は高くなります。事実、令和4年(2022年)9月の台風は日本の近くで発生し、日本に毎週のように影響しました。

 9月に発生した7個の台風のうち、6個が接近しています(表)。

表 令和4年と平年の台風の発生数、接近数、上陸数(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない)
表 令和4年と平年の台風の発生数、接近数、上陸数(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない)

 10月前半は対流活動が不活発でしたが、中旬には熱帯域の対流活動が活発になり、19号から21号が発生しました。

 そして、短い中休みのあと、熱帯域の対流活動が再び活発となってきました。

台風22号の可能性

 フィリピンの東海上に発生した熱帯低気圧が、台風に発達するかどうかは現時点でははっきりしませんが、台風となれば、台風22号ということになります。

 少し古い資料ですが、図2は、筆者が調査した10月と11月の台風の平均経路です。

図2 台風の平均経路(上:10月、下:11月)
図2 台風の平均経路(上:10月、下:11月)

 晩秋のフィリピンの東海上の台風は、ほとんどが西進してフィリピンに上陸するものが多いのですが、中には北上して沖縄地方や小笠原地方に接近するものがあります。

 11月に沖縄地方に接近する台風の平年値は0.3個ですので、3年に1個くらいは接近していることになります。

 小笠原地方も11月に3年に1個くらいは接近していますので、接近したとしても特に珍しいものではありません。

 沖縄地方と小笠原地方は11月まで台風の季節なのですが、11月の台風は、北上してもなかなか30度線を越えません。秋から冬に向かう日本列島には近づきにくくなっていることの反映です。

 季節が進んで海面水温が低くなっていますので、仮に接近したとしても、強い勢力での接近はほとんどないのですが、大雨が心配の台風もあります。

 フィリピンの東海上で熱帯低気圧が発生した場合は、その動向に注意が必要です。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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