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日本近海で台風14号が発生し三輪台風に 台風が多いと発達しないとはいいきれない

饒村曜気象予報士
台風12号と熱帯低気圧(熱低)、台風13号の雲(9月13日15時)

台風12号と台風13号

 石垣島など、沖縄県先島諸島を暴風域に巻き込んだ強い台風12号が東シナ海をゆっくり北上中です(図1)。

図1 台風12号と台風13号の進路予報および海面水温(9月14日21時)
図1 台風12号と台風13号の進路予報および海面水温(9月14日21時)

 台風12号は、今後少し加速して中国大陸に向かいますが、東シナ海南部の海面水温は、台風が発達する目安となる27度以上もあり、急速には衰弱しないと考えられます。

 沖縄県先島諸島では、9月14日(水)昼前まで大しけの状態が続く予想のため、海上や海岸付近ではうねりを伴う高波に厳重に警戒してください。

 また、台風13号はウェーク島近海にあって、アリューシャン列島に向かって加速しながら北上中です。

 台風13号も海面水温が27度以上もある海域を移動していますので、急速に勢力を落とすことはないと思われますが、日本への直接の影響はないと思われます。

 問題は、台風12号と台風13号の間にある台風14号になりそうな熱帯低気圧です(タイトル画像参照)。

三輪台風

 台風14号が発生すると、台風12号、14号、13号と並ぶ三輪台風となります。

 天気図上に台風が多く並ぶのは、台風が多く発生し、動きが遅い7月から9月に集中しています(図2)。

図2 月別の同時に存在した台風(昭和26年(1951年)~昭和54年(1979年)の39例)
図2 月別の同時に存在した台風(昭和26年(1951年)~昭和54年(1979年)の39例)

 最近では、平成29年(2017年)7月に、台風5号・6号・7号・台風5号・6号・8号、台風5号・9号・10号の組み合わせで三輪台風ができました。

 天気図上に、一番多くの台風が並んだ時というと、昭和35年(1960年)8月23日15時から8月24日3時までの天気図に5個並んだ時ということになります(図3)。

図3 昭和35年(1960年)8月23日21時の天気図
図3 昭和35年(1960年)8月23日21時の天気図

 西から(図の左から)、台風17号、台風15号、台風16号、台風14号、台風18号と並んでいますが、東京オリンピックを4年後にひかえ、ローマオリンピック開催の直前(8月25日が開会式)というタイミングであったため、マスコミはこれを五輪台風と名づけ、大きく報じています。

 最盛期の台風は、等圧線が円形となりますので、輪とみなせますが、衰弱期の温帯低気圧に変わりつつあるときには、円形が崩れます。

 日本海北部にある台風15号は、温帯低気圧に変わりつつあるために円形が崩れています。オリンピックマークのように、同じ大きさの五つの輪ではなく、大小の四輪と変形している一輪からなる五輪です。

 五輪台風は、この時だけですが、四輪台風も昭和47年(1972年)の台風6~9号など、10年に1回くらいしか出現していません。

台風14号の進路予報

 日本の南の熱帯低気圧は、台風14号に発達した後、進路を西に変え、今週末には南西諸島から西日本にかなり接近する見込みです(図4)。

図4 日本の南の熱帯低気圧の進路予報と気象衛星の雲(9月14日0時、左の渦巻は台風12号で右の渦巻は台風13号)
図4 日本の南の熱帯低気圧の進路予報と気象衛星の雲(9月14日0時、左の渦巻は台風12号で右の渦巻は台風13号)

 台風情報は最新のものをお使い下さい。

【追記(9月14日8時00分)】

 日本の南の熱帯低気圧は、台風14号に発達しました。

 気象庁が発表している暴風域に入る確率によると、鹿児島県奄美地方北部で暴風域に入る確率が一番高くなるのは、9月17日(土)の夜遅くで、13パーセントです(図5)。

 まだ先の話であることから確率の値は小さいのですが、この頃に台風14号が奄美地方北部に最接近すると考えられます。

図5 鹿児島県奄美地方北部と鹿児島・日置地方が暴風域に入る確率
図5 鹿児島県奄美地方北部と鹿児島・日置地方が暴風域に入る確率

 また、鹿児島・日置地方が暴風域に入る可能性が高いのは9月18日(日)の明け方から夜のはじめ頃の8パーセントです。

 つまり、鹿児島市では18日(日)の昼間に台風12号が接近する可能性があります。

 一般的には、台風が多くあると勢力は弱いとされています。

 単純に言えば、台風のエネルギー源である水蒸気が多い空気(暖かくて湿った空気)を、いくつもの台風で奪い合うと、一つの台風が集める水蒸気が少なくなるからです。

 しかし、昭和36年(1961年)に、台風18号、19号、20号が並んだ時の台風18号は、のちに第2室戸台風と名付けられたほど大きな被害が発生しています。

 また、昭和48年(1973年)に、台風15号、16号、17号と並んだ時の台風15号は、最低中心気圧875ヘクトパスカルにまで発達しています。

 多くの台風が同時に存在している時でも、中には発達するものもありますので油断できません。

タイトル画像、図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:饒村曜(昭和61年(1986))、台風物語、日本気象協会。

図5の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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