沖縄接近中の猛烈な台風11号は、台風12号になりそうな熱帯低気圧との「藤原の効果」で複雑な動き
猛烈な台風が沖縄へ
猛烈な台風にまで発達した台風11号は、沖縄県南大東島の東海上にあって西に進んでおり、8月31日(水)朝から昼前にかけて大東島地方にかなり接近する見込みです。
その後、台風は発達しながら南西に進み、9月2日(金)は沖縄の南でほとんど停滞しますが、9月4日(日)にかけては北上する見込みです(図1)。
台風に関する情報は、最新のものをお使い下さい。
沖縄県では大東島地方を中心に、8月31日から暴風やうねりを伴った高波に厳重に警戒し、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水に注意・警戒してください。
鹿児島県奄美地方でも31日からうねりを伴った高波に警戒が必要です。
台風12号発生
台風11号の南にある熱帯低気圧は、24時間以内に台風へ変わる見込みです。
つまり、台風12号の発生です。
そして、北上して沖縄本島に接近する見込みです(図2)。
台風12号は、エネルギー源の水蒸気を台風11号によって奪われますので、大きく発達することなく、沖縄本島に接近する頃には熱帯低気圧に変わる見込みです。
とはいえ、大雨を降らせる力は十分持っています。
沖縄本島にとって、台風11号が接近し、その後、台風12号が接近し、そして、再び台風11号が接近するという、非常にややこしいことになります。
情報か混乱しやすい状態になりますので、今後の台風情報は、台風番号に十分注意してください。
予想天気図によると、西南西へ進む台風11号の南方から東方へと、熱帯低気圧が回り込む予想となっています(図3)。
つまり、台風11号と熱帯低気圧(台風12号)が藤原の効果で動きが複雑になる予想天気図です。
また、予想天気図では日本海の低気圧が北日本を通過し、日本列島は秋雨前線が停滞することも示しています。
台風からの湿った暖かい空気が、この前線に向かって流れ込みますので、台風から離れているといっても、前線付近では大雨に警戒が必要です。
藤原の効果
2つの渦の相互作用についての研究は、明治20年代(1890年頃)の北尾次郎の理論研究から始まっているとされていますが、これを岡田武松が発展させ、大正10年(1921年)には藤原咲平が一般性を持った法則にまで拡大させています。
のちに岡田武松は中央気象台長(現在の気象庁長官)となり、昭和16年(1941年)の夏に、藤原咲平が岡田武松のあとを継いで中央気象台長になっています。
しかし、台風の動きに関して、“藤原の効果”が言われだしたのは、戦後、米軍の飛行機観測によって台風の位置をかなり正確に求めることができるようになってからです。
アメリカ等の進駐軍は、太平洋戦争を遂行したとして藤原咲平を公職追放しましたが、その業績は日本以上に高く評価していました。
藤原の効果には、いくつかのパターンがありますが、今回は、指向?型になるのではないかと思います(図4)。
いずれにしても、藤原の効果がおきると、台風の進路が複雑となり、予報が難しくなります。
暴風域に入る確率
台風進路予報が複雑な場合、気象庁が発表する暴風域に入る確率の情報が理解を助けてくれます。
図5は、沖縄県大東島地方と沖縄本島南部が暴風域に入る確率です。
これによると、大東島地方は、8月31日の明け方(3~6時)から暴風域に入る確率は90パーセントを超え、朝(6~9時)に最接近ということがわかります。
また、沖縄本島南部では、8月31日の夜の始め頃(18~21時)が最接近ですし、9月3日夜遅く(21~24時)に最接近ということがわかります。
これらの情報は、気象庁ホームページで随時更新されていますので、最新のものをチェックしてください。
タイトル画像、図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。
図3、図5の出典:気象庁ホームページ。
図4の出典:「饒村曜(昭和61年(1986年))、台風物語、日本気象協会」に筆者加筆。