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東北北部の「梅雨明け」と西~東日本・東北南部の「戻り梅雨明け」、そして熱帯低気圧の発生、台風5号?

饒村曜気象予報士
日本の南海上の熱帯低気圧の雲(7月24日16時00分)

「梅雨明け」と「戻り梅雨明け」

 令和4年(2022年)は、西日本~東北南部まで6月末に記録的に早い梅雨明けをしました(表1)。

表1 令和4年(2022年)の梅雨明け
表1 令和4年(2022年)の梅雨明け

 梅雨明け後は、強まった太平洋高気圧の縁辺をまわるように暖かくて湿った空気が流入し、晴れて強い日射によって記録的な暑さが続きました。

 群馬県の伊勢崎では、6月29日に最高気温が40.0度となり、今年6月25日に観測した40.2度に次ぐ、2回目の40.0度超えとなりました。

 6月に40.0度を超したのは初めてのことです。

 しかし、7月に入ると下層に暖湿気が流入し、大気が非常に不安定な状態が続いています。

 ときおり、上空に強い寒気が南下し、局地的に猛烈な雨が降り、「記録的短時間大雨情報」が頻繁に発表となっています。

 また、先週は日本付近に前線が停滞するようになり、梅雨のような天気となっています。

 西日本~東北南部まで梅雨が明けていますので、梅雨のような天気は「戻り梅雨」ということになります。

 今週に入り、太平洋高気圧も強まってくるという予想で、日本付近から前線が消えています(図1)。

図1 予想天気図(7月25日21時の予想)
図1 予想天気図(7月25日21時の予想)

 このため、梅雨明けが遅れていた東北北部は、まもなく「梅雨明け」しそうです。

青森や盛岡など、東北北部の梅雨明けの平年は、7月28日ですので、令和4年(2022年)の梅雨明けは全国的に平年より早いということになりそうです。

 また、西日本から東北南部までは、「戻り梅雨明け」になりそうで、全国的に夏本番の暑さになりそうです。

【追記(7月26日18時)】

 気象庁は、7月26日に東北北部が梅雨明けしたと発表しました。平年より2日早く、これで梅雨がないとされる北海道を除いた全国で平年より早い梅雨明けとなりました。

暑さ本番

 各地の10日先までの天気予報をみると、名古屋で7月26日から28日に傘マーク(雨)がありますが、那覇を除いて、お日様マーク(晴れ)の日が続きます(図2)。

図2 各地の10日間予報(数字は最高気温)
図2 各地の10日間予報(数字は最高気温)

 名古屋の傘マークは、後述するように、7月24日6時に日本の南海上で発生した熱帯低気圧の影響です。

 青森・盛岡・仙台といった東北地方でも、最高気温が30度以上の真夏日が続く予報です。

 湿度の高い暑さですので、熱中症に厳重警戒が必要な時期に入りました。

 西日本から東北南部まで梅雨明けした6月末から7月の初めは、夏日(最高気温が25度以上の日)、真夏日(最高気温が30度以上の日)、猛暑日(最高気温が35度以上の日)を観測した地点数が今年最多となり、現在も破られていません(図3)。

図3 全国の夏日と真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)6月~7月)
図3 全国の夏日と真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(令和4年(2022年)6月~7月)

 ただ、これからは、夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数も増えてゆくことと思います。

 というより、令和4年(2022年)の6月末から7月の初めの暑さが異常で、この記録的な暑さを除けば、平年並みの暑さで推移しているのです。

熱帯低気圧の発生

 7月24日6時、日本の南海上で熱帯低気圧が発生しました。

 令和4年(2022年)の台風は、4月に2個の台風が発生し、このうち1号が小笠原諸島に接近したあと、2か月ほど熱帯域では雲が少ない状態が続いていたため、台風が発生しませんでした(表2)。

表2 令和4年(2022年)の台風と平年値
表2 令和4年(2022年)の台風と平年値

 その後、6月30日9時に南シナ海で台風3号が発生し、続けて、7月1日9時に日本の南海上で台風4号が発生しました。

 台風4号は沖縄本島付近を通過し、東シナ海を北上して5日6時前に長崎県佐世保市付近に上陸し、九州横断中の9時に温帯低気圧に変わっています。

 台風4号以降、熱帯域の雲の発生が少なく、台風の発生数も平年より少なく経過しているのですが、発生したばかりの熱帯低気圧が台風に発達したとすると、台風5号になります。

 資料は少し古くなりますが、筆者の調査では、7月の日本の南海上の台風は、北上するものが多く、北緯30度付近に達した時に、東に行くものと西に行くものに分かれます(図4)。

図4 台風の平均経路(7月)
図4 台風の平均経路(7月)

 今回の熱帯低気圧が台風まで発達するかどうか不確実ですが、もし、台風に発達した場合は、北上して西日本~東日本にかなり接近し、大きな影響を与えることがあります。

 仮に、台風に発達しなくても、暖かくて湿った空気を持ち込みますので、今週半ばの西日本付近~東日本は大雨に注意・警戒が必要です。

 今週は、梅雨明け直後の暑さによる熱中症と、熱帯低気圧の動向に注意が必要です。

タイトル画像、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表1、表2の出典:気象庁ホームページ。

図4の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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