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今年の7月は記録的に多い「記録的短時間大雨情報」

饒村曜気象予報士
大雨・豪雨(提供:イメージマート)

今週は梅雨のような天気

 令和4年(2022年)は、西日本~東北南部まで6月末に記録的に早い梅雨明けをしました(表1)。

表1 令和4年(2022年)の梅雨明け
表1 令和4年(2022年)の梅雨明け

 梅雨明け後は、強まった太平洋高気圧の縁辺をまわるように暖かくて湿った空気が流入し、晴れて強い日射によって記録的な暑さが続きました。

 群馬県の伊勢崎では、6月29日に最高気温が40.0度となり、今年6月25日に観測した40.2度に次ぐ、2回目の40.0度超えとなりました。

 6月に40.0度を超したのは初めてのことです。

 しかし、7月に入ると下層に暖湿気が流入し、大気が非常に不安定な状態が続いています。

 ときおり、上空に強い寒気が南下し、局地的に猛烈な雨が降り、「記録的短時間大雨情報」が頻繁に発表となっています。

 今週に入ると、日本付近に前線が停滞するようになり、梅雨のような天気となっています。

 21日(木)は前線活動が活発化して西日本を中心に雨となり、22日(金)は北海道と沖縄を除いて全国的に雨となるでしょう。

 太平洋高気圧が強まって晴の日が続くのは今週末、23日(土)以降になりそうです。

「記録的短時間大雨情報」

 「記録的短時間大雨情報」とは、その地方で数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨を、アメダス等の雨量計で観測した場合や、気象レーダーと地上の雨量計を組み合わせた分析(解析雨量)した場合に発表するものです。

 発表基準は、地域によって異なりますが、現在の降雨がその地域にとって土砂災害や浸水害、中小河川の洪水災害の発生につながるような、稀にしか観測しない雨量であることを知らせる情報で、必ず、大雨警報が発表されています。

 対象となる地域が160(都府県を3つくらいに分割することに相当)あり、おのおので独立的に2年に1回おきるなら、毎年80回発表となる計算です。

 実際には、平成25年(2013年)から令和3年(2021年)までの9年間の「記録的短時間大雨情報」の平均発表回数は80.1回です。

 「数年に一回の情報なのに毎年発表されている」とテレビのコメンテーターなどがよく話しますが、特定の地域については「数年に1度」ですが、全国で見ると、「毎年80回発表」なのです。

 月別には7月~9月が多く、7月は平均して約20回発表されています(図1)。

図1 月別の記録的短時間大雨情報の発表回数
図1 月別の記録的短時間大雨情報の発表回数

 しかし、令和4年(2022年)7月は、上旬と中旬で43回の発表と、これまでの平均の2倍以上の発表となっています(表2)。

表2 令和4年(2022年)7月1日~20日の記録的短時間大雨情報の日別発表回数
表2 令和4年(2022年)7月1日~20日の記録的短時間大雨情報の日別発表回数

7月19日3時40分 大分県で記録的短時間大雨

   玖珠町付近で約120ミリ、日田市日田付近で約110ミリ

7月19日11時20分 京都府で記録的短時間大雨

   中京区付近で約90ミリ

7月19日12時 滋賀県で記録的短時間大雨

   近江八幡市付近で約90ミリ

 それだけ、令和4年(2022年)7月は、記録的な雨が多かったのです。

「記録的短時間大雨情報」の発表が多い地域

 「記録的短時間大雨情報」の発表回数が、平成25年(2013年)から令和4年(2022年)7月20日までで一番多いのは岐阜地方気象台の39回です(図2)。

図2 記録的短時間大雨情報の発表回数が多い気象官署・少ない気象官署
図2 記録的短時間大雨情報の発表回数が多い気象官署・少ない気象官署

 次いで、長崎地方気象台の33回、熊本地方気象台の27回と続きます。

 九州が多いのですが、北海道も室蘭地方気象台や旭川地方気象台も全国平均より多くなっており、面積の広い都府県が上位にきます。

 逆に少ないのは、南大東島地方気象台の0回、金沢地方気象台の2回、宮古島地方気象台の3回、網走地方気象台の3回となっています。

 「記録的短時間大雨情報」は、名前は情報ですが、必ず大雨警報発表中に出される情報です。

 「記録的短時間大雨情報が」が発表された地域では、非常に危険な状態となっていますので、スーパー警報が発表されたという感覚で防災対応をお願いします。

図1、表1、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆

図2の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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