Yahoo!ニュース

晴れると高温と強い紫外線 夏至の頃は赤道付近より多い太陽光を受けている

饒村曜気象予報士
太陽の1日の動き 夏至のころ 合成写真(写真:アフロ)

地軸に対して斜めに当たる太陽からのエネルギー

 地球は地軸を23.4度傾けながら、1年間かけて太陽のまわりを公転しています(図1)。

図1 地軸の傾き
図1 地軸の傾き

 地球から太陽までの距離は、太陽までの平均距離(約1億5000万キロ)を1天文単位とすると、冬至の頃(12月22日頃)が0.893天文単位、夏至の頃(6月21日頃)が1.017単位です。

 太陽から受ける単位面積当たりのエネルギー量は、距離の二乗に反比例しますので、太陽からの距離が長くなる夏至の頃は、冬至の頃に比べて93.4パーセント(≒(0.983÷1.017)×(0.983÷1.017))しかありません。

 しかし、太陽の光が斜めから入射する場合と、真上から入射する場合では、単位面積当たりの光の量が違うため、北半球についていえば、太陽の方に向いている夏至の頃に太陽の光(エネルギー)を一番多く受け取ります。

 これに対し、冬は斜めから太陽の光が入射しますので、太陽に近くなるといっても、受け取る太陽のエネルギーは一番少なくなります。

 夏至の頃の北極付近は、太陽の高度角は23.4度まであがりますが、赤道付近の高度角66.6度よりも小さいため、赤道付近よりも太陽からのエネルギー量は少なくなります(図2)。

図2 夏至の頃の地球と太陽
図2 夏至の頃の地球と太陽

 しかし、これは1日の最大値での話です。

 赤道付近は、朝晩は最大値よりも小さな値となり、夜間はゼロになります。

 これに対して、北極付近は太陽が沈まず、高度角は1日中23.4度くらいです。

 このため、1日当たりでは、北極付近は1平方メートルあたり45×100万ジュールと、赤道付近の35×100万ジュールより多くなります(図3)。

図3 水平な単位面積に入射する太陽の放射エネルギー量
図3 水平な単位面積に入射する太陽の放射エネルギー量

 また、日本付近の北緯20度から北緯45度も、40×100万ジュールですので、赤道付近より多くなります。

梅雨期間中の晴れ間

 夏至の頃の日本列島は、梅雨で日射が遮られることが多いのですが、晴れると赤道付近よりも多くの太陽からのエネルギーが降りそそぎます。

 このため、気温が高くなり、紫外線も強くなります。

 令和4年(2022年)は、6月20日に沖縄地方で梅雨明けし、鹿児島県奄美地方も、まもなく梅雨明けしそうです。

 太平洋高気圧の強まりとともに、沖縄付近にあった梅雨前線が北上し、西日本から東日本、東北地方では梅雨本番をむかえています。

 ウェザーマップの16日先までの天気予報をみると、新潟など日本海側の地方では、降水の有無の信頼度が5段階で一番低いEや二番目に低いDが多い予報ですが、傘マーク(雨)や、黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)の日が続きます(図4)。

図4 新潟の16日先までの天気予報
図4 新潟の16日先までの天気予報

 これに対し、東京など太平洋側の地方は、空梅雨気味で、白雲マーク(雨の可能性がほとんどない曇り)やお日様マークがほとんどという予報です(図5)。

図5 東京の16日先までの天気予報
図5 東京の16日先までの天気予報

 来週早々にも関東甲信地方の梅雨明けしても、おかしくない予報です。

 これは、梅雨前線が本州の日本海側に停滞することが多いためです。

 日本海側の地方を中心に大雨に警戒が必要ですが、同時に太平洋側の地方を中心に、高温と紫外線にも警戒が必要というのが、今年の梅雨の特徴です。

気象予報士試験における夏至に関する設問

 平成25年1月の気象予報士試験の学科(一般)では、夏至の日に関して次の正誤問題が出題されています(わかりやすさのため、問題の一部を抜粋)。

第39回気象予報士試験 学科(一般)

問5:次の各文の正誤を答えよ。

(a)夏至(6月)の1日間に大気上端の水平な単位面積に入射する太陽放射エネルギー量は、北極点の方が赤道上の地点よりも多い。

(b)冬至(12月)の1日間に地球全体で受ける太陽放射エネルギー量は、夏至の1日間よりも多い。

 答は、どちらも正です。

 (a)の問題は、地球の地軸は公転軌道から23.4度傾いていることから、夏至が北極付近の太陽高度は23.4度で、赤道付近の66.6度より低いことから、誤りとしがちな引っかけ問題です。

 また、(b)の問題は、寒い冬は太陽から受けるエネルギーが少ないと勘違いして誤りとしがちな問題です。

 蒸し暑い梅雨本番はこれからです。

 大雨と猛暑に対する警戒と紫外線に注意し、梅雨明けを待ちましょう。

図1の出典:饒村曜(平成27年(2015年))、天気と気象100(一生付き合う自然現象を本格解説)、オーム社。

図2、図3の出典:筆者作成。

図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事