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三連休最後の日曜は南岸低気圧による太平洋側の雪 令和4年2月は太平洋側の雪が繰り返されている

饒村曜気象予報士
都会の雪(写真:イメージマート)

1月6日(木)の南岸低気圧

 令和4年1月6日は、本州の南岸を低気圧が通過したため、西日本から東日本の太平洋側では雪や雨が降り、東京23区、千葉県全域、茨城県南部で大雪警報が発表されました。

 令和4年1月6日9時の「推定気象分布」によると、房総半島南端や伊豆半島の沿岸部では雨、三浦半島の沿岸などではみぞれ、千葉市から23区南部を結ぶ線より南では雪となっています。そして、その後、雪の範囲は次第に関東北部に広がり、降雪強度も強まりました(図1)。

図1 推計気象分布(令和4年1月6日9時)
図1 推計気象分布(令和4年1月6日9時)

 東京の大雪注意報の発表基準は12時間降雪量が5センチ、大雪警報の発表基準は12時間降雪量が10センチですが、19時には皇居・北の丸公園内にある気象庁の露場において積雪10センチを観測しました。

 東京で雪が降る場合、多くは気温が数度の時の雪ですが、この時は、雪が強く降り始めた頃から氷点下となっています。

 気温が低い時の大雪は、電線や樹木へ着雪しにくく、すぐに凍ってアイスバーンができます。

 雪の多い地方では災害が発生するほどの雪の量ではありませんが、1月6日の大雪は、気温が低い時の大雪で、電線や樹木への着雪による被害は少なかったものの、すぐにできたアイスバーンにより、車のスリップ事故や歩行者の転倒事故が相次いでいます。

 この時、東京で寒くなって大雪となった理由の一つは、雪が強まってきた1月6日15時頃に、南岸低気圧の北東側(関東の陸地に近い海上)で小さな渦巻が発生したことで、この小さな渦巻が海上にある雪雲を東京などの上空に送り込みました。

2月10日(木)の南岸低気圧

 2月9日(水)から10日(木)にかけて、日本の南岸を低気圧が東進しました。

 このため、10日は東北~東日本は太平洋側を中心に雪や雨が降りましたが、この南岸低気圧は本州から離れて通過しました。

 普通の低気圧であれば、南からの暖気はそれほど北上しませんので、気温があがらず雪の可能性は高まりますが、低気圧の雨雲はあまり北上せず、雪が降ったとしても量は多くはありません。

 しかし、今回の低気圧は、その北側の本州に近い所で新たな低気圧が発生し、降水域が北に広がると見られていました(図2)。

図2 地上天気図(2月9日9時)と予想天気図(2月10日9時の予想)
図2 地上天気図(2月9日9時)と予想天気図(2月10日9時の予想)

 日本の上空約1500メートルの気温は南下してくる寒気の強さの目安として使われます。

 平地でも雪となる目安とされる、上空約1500メートルで氷点下6度という寒気は、10日朝の段階で関東北部にあるという予報でした。

 東京都心上空は氷点下3度という予報で、雨が降るのか、雪か降るのか微妙なところで、予報が非常に難しいものでした。

 気象庁では、9日18時から10日18時までに24時間降雪量は、いずれも多い所で、甲信地方25センチ、関東地方北部15センチ、箱根から多摩地方や秩父地方にかけて15センチ、関東地方南部の平野部8センチ、東京23区5センチと予想していました。

 しかし、予想通りに天気図が変化し、予想通りに雪が降ったものの、東京都心の積雪は2センチと、量的には少ないものでした。

 これは、気温が1月6日の場合に比べて、気温が高かったため(2月10日の最低気温は0.6度)、みぞれとして降る時間帯が長く、積もらなかったためです。

 そして、翌日の朝は凍結による交通事故が相次ぎましたが、積雪は日差しによって比較的早く融け、雪の影響は1月6日の場合より長引きませんでした。

2月13日(日)の南岸低気圧

 三連休最後の2月13日(日)から、三連休明けの14日(月)に、またしても南岸低気圧が通過しそうです(図3)。

図3 予想天気図(左は2月13日9時の予想、右は14日9時の予想)
図3 予想天気図(左は2月13日9時の予想、右は14日9時の予想)

 2月10日の南岸低気圧より、陸地に近い所を通ることから、一般的には、2月10日の南岸低気圧より下層に暖気が入りやすいと考えられます。

 しかし、寒気が残っていれば、湿気を持った下層暖気によって湿った雪による大雪の可能性があります。

 雨でほとんど被害が発生しないか、湿った雪によって電線着雪や倒木によって大きな被害が発生するか、気象庁の予報官や気象会社の気象予報士は難しい判断を迫られています(図4)。

図4 雨雪判別図(2月13日21時の予想)
図4 雨雪判別図(2月13日21時の予想)

 気象庁では、2月12日夕方の段階では、13日18時から14日18時までの24時間で、甲信・関東北部山沿いで20~40センチ、箱根~多摩・秩父で10~20センチ、関東北部の平野部と関東南部平野部で5~10センチとなっています。

 積雪量については、気温が1度違うだけで大きく変わる難しい予報ですので、最新の気象情報を入手し、利用してください。

春を告げない雪

 太平洋側の雪は、冬型の気圧配置がゆるんだ時の南岸低気圧によってもたらされます。

 このため、しばしば「春を告げる雪」といわれます。

 南岸低気圧によって雪が降ったあとは、寒気の南下が弱くなり、暖気が入り易くなることで暖かさを感じられることが多いからです。

 しかし、東京の16日先までの天気予報を見ると、最高気温は10度前後、最低気温は0度前後と、気温の低い日が続きます。

 そして、2月13日~15日、20日、26日と、時折、雪ダルママーク(雪)が入っています(図5)。

図5 東京の16日先までの天気予報
図5 東京の16日先までの天気予報

 これらは、いずれも南岸低気圧によるものです。

 令和4年2月は太平洋側の雪が繰り返されています。

 2月13日に南岸低気圧によって雪が降ったとしても、春を告げそうにはありません。

図1、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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