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北日本を中心に記録的な大雪 しばらくは冬型の気圧配置で日本列島の天気は3分割

饒村曜気象予報士
日本海の寒気を伴う雲(11月24日9時)

西高東低の気圧配置

 日本付近は大きく見ると、東方の気圧が低く、西方の気圧が高いという西高東低の気圧配置になっています(図1)。

図1 予想天気図(11月25日9時の予想)
図1 予想天気図(11月25日9時の予想)

 冬に多い「冬型の気圧配置」ですが、日本海西部で気圧が低くなっており、西日本の等圧線は、冬型の気圧配置に多い北西から南東ではなく、西から東へとほぼ東西方向です。

 これは寒気がまず西日本へ南下していることを示していますので、現在は、東日本の太平洋側より西日本の気温の方が低くなっています。

 日本海には、寒気を伴う筋状の雲が出ていますが、この雲の端は大陸から少し離れています(離岸距離が大きい)ので、極端に強い寒気ではありません(タイトル画像参照)。

 極端に強い寒気の場合は、日本海に入ってすぐに筋状の雲が発生します。

 極端に強い寒気ではありませんが、北海道の上川地方など、北日本を中心に記録的な大雪が局地的に降っています(表1)。

表1 北海道上川地方・名寄の24時間降雪量の記録(昭和54年(1979年)以降)
表1 北海道上川地方・名寄の24時間降雪量の記録(昭和54年(1979年)以降)

 北海道上川地方・名寄で降雪が多いのは12月から1月で、この60センチという値は、11月としては1位ですが、一年を通しても3位に入ります。

 積雪がない状態から、一気にこれだけ降ったことから、住民生活に大きな影響がでました。

気象庁では降雪を直接観測していない

 一定期間内に降った雪の量を、降雪量といい、気象庁では「雪板」と呼ばれる板を露場に置いて観測をしていました。

 毎日、9時、15時、21時に新たに降り積もった雪の深さを観測し、観測が終わると刷毛で雪を取り除いていました。

 つまり、9時には12時間に降った降雪を、15時と21時には6時間に降った降雪を観測し、3つの観測を足して1日の降雪量を求めていました。

 しかし、この方法では人手がかかるわりには速報性がないという欠点がありました。

 気象庁では平成17年(2005年)9月以降、雪板を用いて降雪を直接観測する方法をやめ、積雪の差から降雪を求める方法に変更しています。

 積雪は、2から4メートルの高さに送受信機を設置し、送受波器から雪面までの距離を測定する方法(超音波式と光電式があります)で、自動観測によって即時的に求めることができます。

 したがって、積雪から求める降雪も、即時的に求めることができるようになりました。

 具体的には、1時間前からの積雪差を、この時間の降雪量とする(降雪が減っているときは降雪なしとする)方法です。

 11月24日の名寄の24時間降雪量60センチは積雪の観測から表2のように求められています。

表2 北海道上川地方・名寄の毎時積雪量と降雪量(11月23日~24日)
表2 北海道上川地方・名寄の毎時積雪量と降雪量(11月23日~24日)

始まった6時間先までの降雪量予測

 近年、集中的・記録的な降雪による大規模な交通渋滞など、社会活動への影響が問題になってきました。

平成30年(2018年)1月 首都圏の大雪(東京23センチ、前橋29センチなど)

平成30年(2018年)2月 北陸地方の大雪(福井県で記録的な大雪)

令和2年(2020年)12月 北陸地方の大雪(関越道で車両が多数立ち往生)

令和3年(2021年)1月 北陸地方の大雪(福井県や富山県で車両立ち往生)

 このため、気象庁では、今冬、令和3年(2021年)11月10日から、降雪量の6時間先までの予報を開始しました(図2)。

図2 降雪短時間予報の例(11月25日0時の実況と6時間先までの予報)
図2 降雪短時間予報の例(11月25日0時の実況と6時間先までの予報)

 降水短時間予報の降雪版です。

 これにより、道路管理者の通行規制や除雪体制の判断、事業者や国民が利用する交通経路の判断の支援ができるとの考えからです。

しばらく続く冬型の気圧配置

 冬型の気圧配置はしばらく続く見込みで、北海道や東北から北陸の山沿いでは降雪が続き、北海道では多い所で72時間に100センチ以上の降雪も予想されています(図3)。

図3 72時間予想降雪量(11月25日~27日)
図3 72時間予想降雪量(11月25日~27日)

 また、南下した寒気も居座りますので、平年並みか平年より低い気温が続き、最低気温が0度未満となる冬日の範囲も広がりそうです。

 令和3年(2021年)の秋は、残暑が長く、10月の中旬までは長引く残暑で、全国の約半分の地点で最高気温が25度以上の夏日を観測していました。

 しかし、10月中旬以降はやや強い寒気が周期的に南下するようになり、その度に、最低気温が0度未満という冬日の観測地点が増えましたが、全国の1割くらいで止まっています(図4)。

図4 夏日の観測地点数と冬日の観測地点数の推移
図4 夏日の観測地点数と冬日の観測地点数の推移

 しかし、11月後半からは冬日が全国の観測点の2割に迫るようになり、今後はさらに増える見込みです。

 季節は晩秋から冬に変わってきました。

 各地の週間天気予報を見ると、北日本日本海側や北陸では雪や雨が降り、西日本の日本海側でも雲が多い日がしばらく続く見込みです(図5)。

図5 各地の週間天気予報(数字は最高気温)
図5 各地の週間天気予報(数字は最高気温)

 一方、北日本から西日本の太平洋側の地方は概ね晴れとなり、南西諸島は雲が多くなるという、日本列島の天気は3分割という状態は月末まで続く見込みです。

 月末は、低気圧の通過でほぼ全国的に雨となり、激動の年は師走を迎えます。

タイトル画像、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

表1、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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