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東京オリンピックも後半 地上天気図には紀伊半島沖へ向かう熱帯低気圧など五輪の低気圧

饒村曜気象予報士
地上天気図に五輪の低気圧(8月2日9時の予想天気図)

東京2020オリンピック

 令和3年(2021年)7月23日に開幕した東京2020オリンピックは、すでに過去最多の金メダルを獲得するなど、メダルラッシュで盛り上がっています。

 7月27日には台風8号が千葉県銚子市の東約140キロまで接近し、一部競技で日程の変更が行われましたが、大過には至りませんでした。

 サーフィン競技は、千葉県一宮町の釣ケ崎海岸サーフィンビーチで台風8号が接近する中で行われ、男子は五十嵐カノア選手が銀メダル、女子は都築有夢路選手が銅メダルを獲得しました。

 国際サーフィン連盟は、前日の7月26日にサーフィン会場の波の高さや風向きなど気象状況を検討した結果、28日に行う予定の決勝と3位決定戦を1日早め、27日中に準々決勝から決勝までを行うときめています。

 選手の安全が前提ですが、選手の技術が存分に発揮できる大きな波がでやすいという判断と思いますが、繰り出された大技には見ごたえがありました。

 東京2020オリンピックは、最高気温・最低気温は、ともに平年を上回る暑さのなかでスタートしました(図1)。

図1 東京の最高気温と最低気温の推移(8月2~8日は気象庁、8月9~15日はウェザーマップの予報)
図1 東京の最高気温と最低気温の推移(8月2~8日は気象庁、8月9~15日はウェザーマップの予報)

 その後は、ほぼ平年並みの気温の日が続いたというのがオリンピック前半でした。

 後半は、平年より気温が高い日が続き、特に、最低気温が25度以上という熱帯夜の日が続くという予報になっています。

 ただ、いつもの夏とは違っています。

全国的に大気が不安定な夏

 令和3年(2021年)の梅雨明け以降、ほぼ全国的に晴天で気温が高い日が多くなっていますが、大気不安定で、局地的に記録的な雨が降る日が続いています。

 8月1日も、長野県飯田市西部付近で約110ミリ、福島県須賀川市付近で約100ミリ、山形県鶴岡市南部付近で約110ミリ、佐賀県唐津市鎮西町付近で約110ミリという記録的短時間大雨情報が発表となっています。

 これは、太平洋高気圧の日本付近への張り出しが弱く、かといって、上空の偏西風が北上したままであることから、低気圧も通過しないという状態が続いているからです。

 つまり、日本列島付近は、上空に寒気が入りやすくなっていることに加え、南から暖かくて湿った空気が入りやすくなっており、大気が非常に不安定になっているからです。

 日中、晴れて日射があると気温が上昇し、湿度が高いことから熱中症に警戒が必要になります。

 同時に上空に入っている寒気との関係で積乱雲が発達し、集中的な豪雨や落雷、突風に警戒が必要になっています。

 東京の16日先までの天気予報をみると、8月3日以降は、お日様マーク(晴れ)の日が続く予報で、ほとんどが白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)です(図2)。

図2 東京の16日先までの天気予報
図2 東京の16日先までの天気予報

 黒雲マーク(雨が降る可能性がある曇り)の日はほとんどなく、降水の有無の信頼度は、5段階で一番高いAが多い予報です。

 東京オリンピックの熱戦が天気にも影響したかのようです。

日本付近の熱帯低気圧

 全国的に大気が不安定な夏ということは、別の見方をすれば、日本付近では、熱帯低気圧が発生しやすい状態が続いているということになります。

 地上付近の風と上空の風との関係で、発達して台風になる可能性が少ないのですが、とにかく多くの熱帯低気圧が発生しています。

 タイトル画像は、8月2日9時の予想天気図ですが、オリンピックに合わせるように五輪の低気圧の予想です。

 南側にある3つの熱帯低気圧に加え、中国大陸にある低気圧は台風6号から変わったもの、北海道西岸の低気圧は、台風8号のあとを追うように三陸沖を北上してきた熱帯低気圧から変わったものです。

 つまり、5つとも熱帯由来の円形をした低気圧です。

 前回の東京オリンピックの4年前、ローマオリンピック開幕の直前、昭和35年(1960年)8月23日15時から翌24日9時まで、天気図上に西から台風17号、15号、16号、14号、18号という5個の台風が並んだ五輪台風とまではいきませんが、「五輪台風もどき」です。

 ただ、8月3日21時には、日本付近に4つの熱帯低気圧が存在する見込みです(図3)。

図3 予想天気図(8月3日21時の予想)
図3 予想天気図(8月3日21時の予想)

 紀伊半島沖へ進んできた熱帯低気圧が消滅する予想ですが、もし消滅していなければ5個の熱帯低気圧が存在し、2回目の五輪台風ということになるかもしれません。

 熱帯低気圧は、台風に発達しなくても、多量の水蒸気を持ち込みます。

 熱帯低気圧の動向には注意が必要ですが、まずは紀伊半島沖に向かう熱帯低気圧と沖縄県先島諸島の北で動きの遅い熱帯低気圧についてです(図4)。

図4 想定される雨と風の分布(8月3日3時の予想)
図4 想定される雨と風の分布(8月3日3時の予想)

 地元気象台の発表する情報に注意してください。

タイトル画像、図3の出典:気象庁ホームページ。

図1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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