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大きな高気圧に覆われ「一円玉天気」で「ヘソ天」の天気図

饒村曜気象予報士
へそ天の天気図(4月10日9時の予想天気図)

大きな高気圧

 令和3年(2021年)は3月から高気圧と低気圧が交互に通過し、その周期は7日間でした。

 このため、3月6日(土)から7日(日)の週末に全国的に雨になると、その後は、「週末は全国的にほぼ雨」が一か月以上も続いています。

 しかし、4月10日の土曜日は、成長中の大きな高気圧に日本列島が覆われる見込みです(タイトル画像参照)。

 この大きな高気圧の移動が遅いために、10日の土曜日だけでなく、翌11日の日曜日も大きな高気圧に覆われたままです(図1)。

図1 予想天気図(4月11日9時の予想)
図1 予想天気図(4月11日9時の予想)

つまり、7日毎に全国的に雨だったものが、大きな高気圧がゆっくり移動することで次の雨までの期間が長くなり、土日に雨という周期が崩れました。

4月11日(日)の全国の天気予報をみると、全国的に晴れが主体の天気となっています(図2)。

図2 4月11日の全国の天気予報(数字は左が最高気温、右が最低気温)
図2 4月11日の全国の天気予報(数字は左が最高気温、右が最低気温)

 筆者が気象庁予報課で予報官をしていた30年以上前には、すでに予報官の間で「一円玉天気」や「へそ天」という言葉が使われていました。

 お金の最小単位が一円ですので、「これ以上崩れない天気」、つまり、「晴れという天気」のことを指しますが、10日から11日の天気は、まさに「一円玉天気」です。

 また、「へそ天」とは、「一円玉天気」をもたらす大きな高気圧に覆われた天気図のことです。

 へそを出して寝ていても予報できるということから、「予報が簡単」という意味で使われました。

 「へそ天」になれば少なくとも明日までは晴れますので、明日までの天気予報が主眼であった昔の時代では、予報は簡単といえました。

 今は、明後日以降の予報も重視されていますので、「へそ天」であっても、予報が簡単とはいえなくなってきました。

へそのアメダス

 日本の中心である(「へそ」である)と称している自治体は数多くあります。

 岐阜県関市は日本の人口重心であるからとか、群馬県渋川市は日本列島を円で囲む中心であるとか、それぞれの理由があるので数が多いのです。

 このうち、兵庫県西脇市は、緯度35度00分、東経135度00分という00ポイントが通過することから、「日本のへそ」として地域興しをしています。

 そして、00ポイントを中心に「日本へそ公園」を作り、そこに気象庁のアメダスを誘致しています。

 つまり、現在のアメダス観測地点の西脇は、緯度35度00分、東経135度00分(正確には緯度34度59.9分、東経134度59.8分)にあり、「へそのアメダス」と呼ばれています。

雨は土日から火水に移動

 各地の10日間天気予報を見ると、次のほぼ全国的な雨は4月13日(火)から14日(水)です(図3)。

図3 各地の10日間天気予報(数字は最高気温)
図3 各地の10日間天気予報(数字は最高気温)

 最高気温は、北日本を除いて20度前後、北日本も10度以上と、ほぼ平年並みの予報となっているところが多くなっています。

 桜だけでなく、多くの動植物が活動を開始しています

 火曜と水曜以外は、密を避けながら散歩するには絶好の天気が続きます。

 ただ、火曜と水曜は低気圧が日本列島を発達しながら通過しますので、単なる雨ではなく、警戒が必要な雨です(図4)。

図4 コンピュータが計算した地上天気図(4月13日9時)と6時間降水量(4月12日3時から9時)
図4 コンピュータが計算した地上天気図(4月13日9時)と6時間降水量(4月12日3時から9時)

 天気予報技術が向上すると、より詳細に、より正確に、できるだけ先まで予報して欲しいとの要望が強まってきます。

 このため、現在は、「へそ天」と呼ばれる予報が簡単な天気図はなくなっています。

タイトル画像の出典:気象庁提供。

図1、図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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