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今週末から南下する寒気が今冬最後の強い寒気南下か?

饒村曜気象予報士
マフラーを巻いた日本人女性(写真:アフロ)

移動性高気圧

 日本の南岸を通過した低気圧と前線の影響で東日本から西日本では雨、東日本の山間部を中心に雪のところが多い寒い日曜日になりました。

 しかし、週明けの1月25日(月)は、移動性高気圧におおわれます(図1)。

図1 予想天気図(1月25日21時の予想)
図1 予想天気図(1月25日21時の予想)

 このため、南西諸島は雲が広がりやすく所々でにわか雨がありそうですが、北~西日本の広い範囲で晴れる見込みです。

 最高気温は全国的に平年を上回り、東日本太平洋側から西日本では最高気温が10度を超える見込みです。

 しかし、火曜日には日本海を低気圧が通過し、雨の所が多くなる見込みですが、気温は高いままです。

強い寒気の南下

 令和2年から3年(2020年から2021年)の冬は、前年の暖冬から一変し、寒冬となっています。

 日本付近のジェット気流が大きく蛇行し、この蛇行にのって北極付近の強い寒気が、周期的に日本付近へ南下しているからで、これまで4回強い寒気が南下しています。

 1回目は12月14日頃から南下したもので、日本海側を中心に記録的な大雪となり、新潟・群馬県境の関越自動車道では、16日夜からの交通障害で2000台以上の車が立ち往生しています。

 2回目は年末年始の強い寒気の南下で、西日本にも寒気がおりてきましたので、北日本の日本海側や北陸だけでなく、山陰地方まで大雪となりました。

 3回目は、1月7日から8日で、東北の日本海側から北陸地方、西日本の日本海側で大雪となり、特に、北陸地方では短時間に強い雪が降り、初めて「顕著な大雪に関する気象情報」が発表されました。

 4回目の強い寒気の南下は、大学入試の制度が変わって初めての大学入学共通テスト(第一日程)が行われた1月16日頃から南下してきたもので、北海道稚内市では、雪による悪天候のため、16日に予定した大学入学共通テストが中止(1月30日に再試験)となっています。

 これまでで一番寒かったのは3回目の寒気南下で、1月8日は、冬日(最低気温が0度未満)、真冬日(最高気温が0度未満)とも、今冬最多を観測しています(図2)。

冬日と真冬日の観測地点数の推移
冬日と真冬日の観測地点数の推移

 気象庁が1月21日に発表した一か月予報によると、平均気温は北日本ではほぼ平年並みですが、その他の地方は平年より高くなっています(図3)。

図3 気象庁が発表した気温の一か月予報(1月23日から2月22日の予報)
図3 気象庁が発表した気温の一か月予報(1月23日から2月22日の予報)

 これは、日本付近では冬型の気圧配置が長きしない見込みであるためです。

 令和3年(2021年)の冬は、大きく見ると、1月20日の大寒までは寒い日が多く、大寒後は暖かい日が多かったのですが、一か月予報から、このまま暖かい日が続くという意味ではありません。

 一か月平均をすると暖かいということであり、強い寒気が南下する日も含まれています。

 東京の気温は、最高気温、最低気温ともに高かったり低かったりと、寒暖差が大きい状態が続いていました(図4)。

図4 東京の最高気温と最低気温(1月25日から31日は気象庁、2月1日から9日はウェザーマップの予報)
図4 東京の最高気温と最低気温(1月25日から31日は気象庁、2月1日から9日はウェザーマップの予報)

 東京の最高気温・最低気温の予想をみると、今週前半は平年より高くなり、今週末は寒気南下によって平年並みまで低くなる予報です。

5回目の強い寒気

 今週末には、今冬最後の可能性がありますが、5回目の強い寒気が南下してくる予想となっています。

 日本に南下してくる寒気の目安として、上空約5500メートルの気温が使われます。

 氷点下36度なら非常に強い寒気で、日本海側では大雪の可能性があります。

 今週末に南下してくる寒気は、2段階の見込みです。

 まず、1月29日には、氷点下36度以下の強い寒気が日本海に南下してきます。

 この強い寒気は、その後北東進しますので、このときに強い寒気に覆われるのは北海道が中心となります。

 しかし、1月31日には次の氷点下36度以下の強い寒気が南下してきます。

 この強い寒気は、東北から北陸地方までで、東日本の太平洋側から西日本には南下しないと予想されています(図5)。

図5 上空約5500mの気温分布予想(上は1月29日朝、下は1月31日夜の予想)
図5 上空約5500mの気温分布予想(上は1月29日朝、下は1月31日夜の予想)

 とはいえ、北海道は、これまで4回の強い寒気南下と同様に、氷点下42度以下の猛烈な寒気が入ってくる見込みですので、寒さに警戒が必要です。

 また、日本付近は西高東低の冬型の気圧配置となりますので、日本海側の地方では大雪に警戒が必要となります。

北日本と北陸では特に警戒

 北日本と北陸地方は、これまでの4回の寒気南下で平年より多くの雪が降っています。

 多雪地帯では、このところの日中の暖かさで表面が融け、積雪量は減ってきていますが、それでも1メートル以上の積雪がある都市部は少なくありません(図6)。

図6 解析積雪量(1月24日18時現在の推定した積雪量分布)
図6 解析積雪量(1月24日18時現在の推定した積雪量分布)

 週末までの間に、大規模な暖気流入はないと思われますので、これより大きく積雪量が減るとはないと思われます。

 加えて、融けた積雪の表面は、夜間の冷え込みで凍ってアイスバーン状になっており、人的被害が大きくなる新雪雪崩が発生する可能性が高くなっています。

 今週末からの強い寒気の南下では、暴風と大雪に警戒するとともに、多雪地帯では新雪雪崩に注意が必要です。

タイトル写真の出典:アフロ。

図1、図3の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに著者作成。

図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに著者作成。

図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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