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梅雨末期のような梅雨入り コロナ禍であっても素早く避難

饒村曜気象予報士
紫陽花(著者撮影)

令和2年(2020年)の梅雨

 令和2年(2020年)の梅雨は、鹿児島県奄美地方で5月10日に梅雨入りをし、翌11日にも沖縄で梅雨入りをしました。

 その後、梅雨前線が北上した5月30日に九州南部が、翌31日に四国が梅雨入りをしましたが、すぐに梅雨前線が南下して、それ以上の梅雨入りはありませんでした。

 6月に入ると、梅雨前線は沖縄付近に停滞し、沖縄では記録的な雨が降っています。

 石垣島では明治29年(1896年)以降120年以上の観測がありますが、6月8日に観測した362.0ミリの日降水量は、昭和10年(1935年)7月22日の378.9ミリに次ぐ、歴代2位でした。

 しかし、6月10日から11日には梅雨前線が北上し、東北南部までの広い範囲で梅雨入りとなりました(表)。

表 令和2年(2020年)の梅雨入りと梅雨明け
表 令和2年(2020年)の梅雨入りと梅雨明け

 ただ、東北北部までは北上せず、週明けに北日本を低気圧が通過した後は、お日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)の日が続きます(図1)。

図1 青森の16日先までの天気予報(6月12日発表)
図1 青森の16日先までの天気予報(6月12日発表)

 黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)や傘マーク(雨)が続くのは、6月25日以降であることから、東北北部の梅雨入りは、平年の6月14日よりかなり遅い梅雨入りということになります。

 もっとも、気象庁が6月14日~16日の雨を重視し、6月14日の平年並みの梅雨入りと発表することも考えられますが、この時は、梅雨入り後すぐに梅雨の中休みということになります。

 そして、北上した梅雨前線がしばらく本州付近に停滞し、大きく南下しないということから、沖縄では6月12日に梅雨明けとなりました。

【追加(6月14日17時)】

 6月14日午後、気象庁は東北北部が梅雨に入ったと発表しました。

 これで、梅雨がないとされている北海道を除き、全国で梅雨入りとなりました(沖縄だけはすでに梅雨明け)。

梅雨末期のような大雨

 今回の梅雨前線は、帯状の雲がほぼ東西に延びるのではなく、発達した積乱雲の塊が飛び飛びに連なり、そこに南から積乱雲が北上しています。

 このため、大雨が降る場所がある一方で、雨があまり降らない場所も多いという梅雨入りとなりました(図2)。

図2 地上天気図と衛星画像(6月11日15時)
図2 地上天気図と衛星画像(6月11日15時)

 梅雨入りの時に多い「シトシト降る」ではなく、梅雨末期に多い「ザーザー降る」での梅雨入りでした。

 これは、日本付近に暖かくて湿った空気が流入しているからです。

図3 上空約1500メートルの暖湿流の分布(6月14日朝)
図3 上空約1500メートルの暖湿流の分布(6月14日朝)

 図3は、専門的な図ですが、6月14日朝の上空約1500メートルの相当温位の分布図です。

 簡単に言えば、空気中に含まれている水蒸気が、すべて水滴に変わったと仮定した場合にどれくらいまで気温があがるかを示したものが相当温位です。

 空気中に含まれている水蒸気の量が多ければ多いほど多くの熱を放出するので、相当温位は高くなります。

 30度の空気に、含まれている水蒸気が水滴に変わると仮定した時に放出される熱量を加えると計算上50度になるというイメージです。

 相当温位が高い場所は、気温が高いことに加え、水蒸気を多く含んでいる場所で、大雨が降る可能性が高い場所です。

 つまり、この図は、梅雨前線付近の西日本では、梅雨末期豪雨のときのように、相当温位が72度以上と非常に湿った空気が流入していることを示しています。

 また、この時刻、梅雨前線上で発生した低気圧が日本海西部にあり、この低気圧に向かって暖かくて湿った空気が流入していますので、西日本から北陸では大雨の可能性があります(図4)。

図4 予想天気図(6月14日9時の予報)
図4 予想天気図(6月14日9時の予報)

大雨警報の可能性

 気象庁では、5日先まで、各種警報を発表する可能性について、「高」「中」の2段階で情報を発表しています。

 これによると、大雨警報を発表する可能性は、6月13日は九州と山口県で「高」、東日本から西日本の広い範囲で「中」となっています(図5)。

図5 大雨に対する早期注意情報(上:6月13日、下:6月14日)
図5 大雨に対する早期注意情報(上:6月13日、下:6月14日)

 また、6月14日は、東北の日本海側から九州北部にかけて大雨警報を発表する可能性が「中」となっています。

 西日本ではすでにかなりの雨が降っていますが、これに加え、6月13日から14日には、東日本から西日本の日本海側で150ミリを超える可能性があります(図6)。

図6 48時間降水量予報(6月13日~14日)
図6 48時間降水量予報(6月13日~14日)

 さらに、週明けも北陸や九州南部で大雨警報を発表する可能性が「中」となっており、大雨が降った場所でのさらなる雨は大災害に発展する可能性があります。

 局地的に雷を伴った非常に激しい雨や激しい雨が降り、大雨となる所がありますので、最新の気象情報の入手に努め、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒・注意してください。

 コロナ禍の心配がありますが、命を守る素早い避難が大事です。

 生きながらえてのコロナ対策です。

熱中症にも注意

 各地の週間天気予報をみると、梅雨明けした沖縄では、最高気温が30度以上の真夏日が続きますので、熱中症に注意が必要です。

 と同様に、梅雨に入っている各地方も、熱中症に注意が必要です。

 というのは、寒流の上を通った冷たい風が吹く6月13日の東京などを除くと、ほとんどの地方で、最高気温が25度以上の夏日が続いています(図7)。

図7 各地の週間天気予報
図7 各地の週間天気予報

 梅雨入りしたばかりでも、梅雨末期のように、そこそこ気温が高く、湿っていますので、熱中症の危険性は十分あります。

 加えて、新型コロナウイルス対策でマスクをしているのが日常となっています。

 マスクをつけていると、体の渇きを感知しにくく、水分補給が不十分になるといわれていますので、熱中症は普段より低い気温で発生すると考えたほうがよいでしょう。

 熱中症は、新型コロナウイルスの初期症状に似ているといわれています。

 密にならないところではマスクを外すとか、こまめに水分を補給するなどを心掛け、熱中症で医療機関の負担にならないようにするのも、大事な新型コロナ対策です。

図1、図2、図3、図5、図6、図7の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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