台風10号は中心付近だけでなく、中心の東側と通過後も風と雨に警戒
台風10号が上陸へ
西日本へ向かって北上中の台風10号は、8月15日に豊後水道を通過し、中国地方を縦断して日本海に進む見込みです(図1)。
台風10号が四国と九州に挟まれている豊後水道を北上するとき、海の上だけを通って中国地方に達する可能性は少なく、北上する途中で四国か九州に上陸すると考えられます。
台風10号の強風域(風速が毎秒15メートル以上の範囲)は、東側600キロ、西側500キロ(平均で550キロ)もあり、大型の台風です。
1日前は、強風域が800キロ以上ある超大型の台風でしたので、強風域の範囲が狭くなったということができますが、この大型でも西日本が余裕で入る大きさです。
また、1日前には、黒潮を横切って日本へ接近するときに少し発達し、最大風速が毎秒35メートルの強い台風になって上陸すると考えられていましたが、現在の毎秒30メートルの勢力を保ったま上陸するという予報に変わっています。
北上の速度は時速15~20キロと、自転車並みの速度を保ったまま、加速していません。
台風の危険要素として、「勢力が強い」「規模が大きい」「速度が遅い」の3つがあり、この危険三要素のうち、一つでもあればより一層の警戒が必要な台風ということができます。
台風10号は、危険三要素のうち、少なくとも、「規模が大きい」「速度が遅い」の2つをもっていますので、油断できない台風です。
台風10号の東側と南側
台風10号は、中心付近で発達した雲が少なく、中心から200キロほど離れたところで発達した雲が取り囲む、いわば「環状台風」という、少し珍しい台風です。
その環状台風が、上陸寸前になって、北側と西側の発達した雲が減ってきました。
つまり、台風10号の東側と南側に発達した雲の塊がある台風に変わってきたのです(タイトル画像参照)。
発達した雲の塊の場所が、強い風が吹き、強い雨が降っている場所に対応していますので、台風10号の北側の領域に入っている接近前より、台風10号の南側に入る接近後のほうが強い風が吹き、強い雨が降る可能性があります。
仮に、台風の中心付近が接近してきたときの雨や風が弱くても、通過後に強くなるので油断できないというのが台風10号の特徴です。
また、台風の中心付近より、台風の東側で強い風が吹き、強い雨が降る可能性があります。
図2は、台風10号が上陸する頃の雨と風の分布図です。
この上陸する頃に強い雨が降っているのは、四国東部から紀伊半島であり、強い風が吹いているのは、四国東部から紀伊半島、およびそれらの南海上です。
台風10号の雨
台風10号により、8月14日には、紀伊半島や四国東部で400ミリ以上の雨が降っていますが、8月15日以降は、台風周辺の雨雲がかかり、本格的な雨が降る見込みです(図3)。
台風10号の動きが遅いために、暖かくて湿った南東の風があたり続ける紀伊半島の南東斜面で700ミリ以上、四国東部の南東斜面で800ミリ以上の雨が今後48時間で降ると考えられます。
台風進路の東側では、降り始めからの総雨量が1000から1200ミリに達するところもあるという記録的な大雨となる可能性がありますので、厳重な警戒が必要です。
台風が日本海に抜けても
台風10号は、やや加速しながら8月15日21時頃に西日本を縦断して日本海側に抜けると考えられますが、この時でも東海から近畿で強い雨が降り続き、強い風が大阪湾に向かって吹き込んでいます(図4)。
また、山陰地方では、台風の吹き返しの強い北風が吹いており、広い範囲で危険な状態が続いています。
8月15日は満月で、大潮の日です。満潮と干潮の差が一番大きくなるときで、満潮と高潮が重なると海面水位(潮位)は高くなって大きな高潮被害が発生する懸念があります。
現在の大阪湾は、30センチ程度の高潮で、高潮注意報基準よりかなり下の潮位です(図5)。
しかし、大阪湾の満潮時刻が8月14日19時32分であることを考えると、この頃に大阪湾に向かって強い風が吹くということは、大きな高潮が発生しやすくなる危険性をはらんでいるということになります。
いろいろな面で危険な台風10号です。
最新の気象情報を入手し、厳重な警戒が必要です。
タイトル画像、図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。
図1、図5の出典:気象庁ホームページ。