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主役のオホーツク海高気圧がいない梅雨入り

饒村曜気象予報士
オホーツク海(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

令和元年(2019年)の梅雨入り

 令和元年(2019年)の最初の梅雨入りは、鹿児島県の奄美地方で、平年より3日遅い5月14日、沖縄地方で平年より7日遅い5月16日に梅雨入りしました。

 平年でいうと、奄美地方より沖縄地方のほうが2日早いのですが、近年は奄美地方が早くなっており、今年も奄美地方が先でした。

 次いで、九州南部が5月31日に梅雨入りしました。平年と同じ日です(表1)。

表1 令和元年の梅雨入り
表1 令和元年の梅雨入り

 時期的には平年並で季節が経過していますが、今年は梅雨の主役であるオホーツク海高気圧がいまだに登場していません。

 気象庁のホームページに質問コーナーがあり、「梅雨(つゆ)はなんで毎年夏ごろにくるの?」という質問の回答の中に、次のような説明があります。

梅雨は、夏に向かう途中(とちゅう)に、くもりや雨の日が多くなる期間を指します。毎年だいたい同じような時期に来る季節の1つのようなものです。

では、どうして夏の前に梅雨があるのでしょう。それは、夏が近づくと南から暖かくしめった空気をもつ太平洋高気圧が張り出してきて、北にある冷たい空気をもつオホーツク海高気圧とが、日本のあたりでぶつかるからです。この2つの高気圧がぶつかるところに梅雨前線(ばいうぜんせん)ができて、雨をたくさん降らせます。これが、梅雨です。

 つまり、梅雨の主役はオホーツク海高気圧と太平洋高気圧ですが、今年、令和元年(2019年)は、未だにオホーツク海高気圧が出現していません。

 九州南部が梅雨入りした5月31日の天気図では、オホーツク海には低気圧が入っており、九州南部には東シナ海からのびる停滞前線が接近しているだけです(図1)。

図1 地上天気図(5月31日15時)
図1 地上天気図(5月31日15時)

 日本の東海上にある高気圧は、中国大陸で発生し、移動してきた高気圧で、オホーツク海高気圧ではありません。

他の地域での梅雨入りは

 今後の気圧配置の予想を見ても、オホーツク海には低気圧がしばらく存在し、高気圧は出現しなさそうです(図2)。

図2 予想天気図(6月2日21時の予想)
図2 予想天気図(6月2日21時の予想)

 梅雨前線上を低気圧が通過することで、西日本の太平洋側では曇りや雨の日曜日となっています。

 この低気圧通過のタイミングで四国地方が梅雨入りするかもしれませんが、オホーツク海高気圧は出現していません。

 そして、その後は、西日本の日本海側から東日本、北日本は高気圧に覆われて晴れますので、梅雨入りがあるとしたら、今週末です(図3)。

図3 全国の10日間天気予報
図3 全国の10日間天気予報

 ただ、週末の雨は、日本海と本州南岸を低気圧が通るもので、雨は強く降ったとしても一時的で、前線が停滞して雨を降らせるものではなさそうです。

 となると、その他の地方の梅雨入りは、さらに遅れそうです(図4)。

図4 週末の雨
図4 週末の雨

暖かくて湿度が低い梅雨

 梅雨前線の北側は、オホーツク海高気圧ではなく、大陸育ちで日本付近を通過した高気圧があります。

 オホーツク海高気圧のように、冷たくて湿った空気を日本付近に流入してくるわけではありませんので、梅雨入りしても、晴れて気温が比較的高く、比較的乾燥していることが考えられます。

 しかし、あくまで比較的な話です。

 令和元年(2019年)の梅雨は、例年とは多少違った梅雨になるかもしれませんが、気象情報に注意し、大雨に気をつけるなど、例年と同じ梅雨対策(防災対策)が必要です。

図1、図2、表1の出典:気象庁ホームページ。

図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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