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ちょっとした寒気の南下でも山は冬 今年のゴールデンウィークの注意点

饒村曜気象予報士
花畑を散歩する家族(写真:アフロ)

冬から夏に変わった月

 平成最後の4月は、4月22日に東京で最高気温が25.6度となるなど、気温を観測している全国926地点の約3分の1にあたる305地点で、最高気温が25度以上という夏日になりました。

 20日ほど前には、最低気温が氷点下となる冬日が過半数であったことを考えると、平成最後の月は、「冬から夏に変わった月」ともいえるでしょう(図1)。

図1 平成31年(2019年)4月の夏日と冬日の推移
図1 平成31年(2019年)4月の夏日と冬日の推移

 東京の4月の気温推移をみても、4月後半は気温が高く、上空に寒気が入って気温が下がっても平年並みという傾向が続いていました。

 しかし、月末は、上空に寒気が入ると平年より気温が低くなります(図2)。

図2 東京の4月から5月の最高気温と最低気温(4月25日~5月1日は気象庁、5月2~4日はウェザーマップの予報)
図2 東京の4月から5月の最高気温と最低気温(4月25日~5月1日は気象庁、5月2~4日はウェザーマップの予報)

 気温が平年より高い日と、平年より低い日が交互にあって、平均すると平年の値というのが本来の姿ですので、本来の姿に近くなったといえます。

 しかし、それまでの暖かさから、平年並みの気温と言っても寒く感じるゴールデンウィーク入りとなりそうです。

ゴールデンウィーク前半の天気

 平成最後のゴールデンウィーク初日、4月27日(土)は、東北・北陸地方で曇り一時雨か雪、関東地方で曇りのほかは概ね晴れそうです。

 そして、翌28日(日)は、全国的に晴れの所が多い見込みです(図3)。

図3 平成31年(2019年)4月28日の天気予報
図3 平成31年(2019年)4月28日の天気予報

 日本付近は移動性高気圧に覆われて晴れるのですが、無条件で行楽日和とはいえません。

 というのは、日本上空約5500メートルに氷点下27度という、寒気が流入してくるからです(図4)。

図4 日本上空約5500メートルの気温(4月27日朝)
図4 日本上空約5500メートルの気温(4月27日朝)

 上空約5500メートルで氷点下27度という温度は、冬場であれば、ちょっとした寒気で、特別に低い温度ではありません。

 地表面付近が25度近くなる春先においては、上下の温度差が50度を超えるという、大気が非常に不安定となる温度です。

 冬場の地表付近が5度位で、上空に氷点下36度の寒気が入ってきた場合より上下の温度差が大きくなります。

 晴れていても、急に積乱雲が発達して雷雨の可能性もあります。

 行楽に出かける前には、気象情報の入手に努めてください。

 そして、黒い雲が出てくるなど、積乱雲発達の兆候が見えたら、すぐに安全な場所への移動が必要です。

雪の可能性

 札幌の4月は、月半ば以降は気温の高い日が続き、平年よりかなり早い4月24日にさくらが開花しました。

 しかし、さくらの開花後は、平年より気温が低い日が続きます(図5)。

図5 札幌の4月から5月の最高気温と最低気温(4月25日~5月1日は気象庁、5月2~4日はウェザーマップの予報)
図5 札幌の4月から5月の最高気温と最低気温(4月25日~5月1日は気象庁、5月2~4日はウェザーマップの予報)

 開花から満開までの期間が少し長くなって、ゴールデンウィークに花見が楽しめそうです。

 ただ、ゴールデンウィーク前半の寒気で、北海道や標高の高い地方では雪の可能性もあります(図6)。

図6 ゴールデンウィーク初日の朝(4月27日6時)の雨雪判別
図6 ゴールデンウィーク初日の朝(4月27日6時)の雨雪判別

ノーマルタイヤは注意

 天気予報で、「所により雨か雪」や「所により雪か雨」となっている地方も少なくありません。

 「雨か雪」は、雨の可能性が高いが雪の場合もあるという意味です。

 「雪か雨」は、雪の可能性が高いが雨の場合もあるということで、「雨か雪」より雪になる可能性が高いことを意味します。

 ふもとで初夏を思わせる暖かさでも、山はまだ冬のような寒さというのが春の特徴です。

 雪の可能性のある場所に、ノーマルタイヤで出かけて立ち往生し、多くの人に迷惑をかけないように、気象情報で雪の可能性のチェックも御願いします。

 

図1の出典:ウェザーマップ資料より著者作成。

図2、図5の出典:気象庁とウェザーマップ資料より著者作成。

図3、図4、図6の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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