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梅雨前線が停滞前線となって週半ばほぼ全国的に雨

饒村曜気象予報士
横断歩道を渡る傘を差した人々(写真:アフロ)

最近は早くなっている奄美地方の梅雨入り

 平成30年(2018年)は、5月7日に鹿児島地方気象台が奄美地方の梅雨入りを発表し、翌8日には沖縄気象台が沖縄地方の梅雨入りを発表しました。

 平年では、奄美地方より沖縄地方の方が先に梅雨入りしますが、平成20年(2008年)以降は、同日か奄美地方の方が早い年が続いています。

 沖縄・奄美地方が梅雨入りしたことにより、沖縄・奄美付近にある停滞前線は梅雨前線と呼ばれますが、この梅雨前線が北上して本州に停滞すれば、その場所ではまだ梅雨入りをしていませんので、梅雨前線が停滞前線に変わります。

今年は乱れている季節変化

 日本は周期的に雨が降っており、「梅雨入り」の日からは次の雨が降るまでの期間が短くなるのであって、東南アジアやインドのように、その日から雨が続く「雨季入り」の日とは違います。このため、「梅雨入り」の翌日が晴れということがよくあります(図1)。

図1 梅雨入りと雨季の説明図
図1 梅雨入りと雨季の説明図

 図1の説明図では、速報で7日を「梅雨入り」としています。しかし、翌8日が晴れであることを重視すると9日が、また4日から6日の曇りを重視すれば2日が、それぞれ梅雨入りということになります。

 このように、「梅雨入り」は、後になってみないと特定できないものです。

 このため、気象庁の発表では、「ころに」と、「見られます」という言葉が付加されています。

梅雨入りがはっきりしないと、梅雨入りを特定しないこともあります。

 今年も、沖縄・奄美地方が梅雨入りの翌日から晴れのところが多くなっています。

 那覇でも、梅雨入りした5月8日は雨でしたが、翌9日は昼間は「薄曇り一時晴れ」、夜は「晴れ時々曇り」で、9日~13日の降水量は、わずか0.5ミリでした(表)。

表 沖縄県那覇の5月の気象
表 沖縄県那覇の5月の気象

 しかし、今年の沖縄・奄美地方の梅雨は、梅雨入りの翌日が晴れる程度ではありませんでした。

 梅雨前線は北に大きく押し上げられ、全国的に梅雨明けを思わせるような高温となったり、東北地方で梅雨末期を思わせるような豪雨が降ったりしました。このように、今年は季節変化が乱れるという特徴がありますので、油断できません。

停滞前線による週半ばの雨

 5月20日くらいから、沖縄・奄美地方付近に梅雨前線ができ、梅雨らしい天気に戻っていますが、週半ばの23日はこの梅雨前線が北上し、名前が停滞前線と変わって、西日本から東日本の太平洋側を中心に雨、ところによっては雨が強い可能性があります(図2)。

図2 予想天気図(5月23日9時の予想)
図2 予想天気図(5月23日9時の予想)

 梅雨前線が北上し、沖縄・奄美地方が晴れてくると、北上した停滞前線が本州・四国・九州に豪雨をもたらすことがあります。

 西日本から東日本は梅雨入りしていませんが、次第に雨が降りやすくなり、一ヶ月もしないうちに梅雨になる見込みです。

梅雨入りは観測ではなく予報

 気象庁では、梅雨のない北海道を除いた日本を12の地域(沖縄、奄美、九州南部、九州北部、四国、中国、近畿、北陸、東海、関東甲信、東北南部、東北北部)に分け、気象予測をもとに「○○日頃梅雨入り(明け)したと見られます」という速報を発表します。

 「梅雨を観測し、観測結果を発表」するのではなく、「梅雨を予報し、予報結果を速報で発表」しているのです。

 そして、梅雨の季節が過ぎてから、春から夏にかけての実際の天候経過を考慮した検討をし、9月の初めに「梅雨入りと梅雨明けを統計値として確定」しています。

 つまり、9月の初めに「梅雨の観測結果を発表」しているのです。

図1の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100 一生付き合う自然現象を本格解説、オーム社。

図2、表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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