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気象情報に注意 荒っぽい気象変化のゴールデンウィーク

饒村曜気象予報士
雨雲(ペイレスイメージズ/アフロ)

沖縄より気温が高い北海道

 ゴールデンウィーク前半は、大きな高気圧に覆われ、晴れたところが多かったのですが、高気圧の縁辺をまわるように全国的に暖気が入り、フェーン現象も加わって、4月30日の全国の最高気温は、北海道・女満別空港の30.2度です。

 沖縄県では30度以上を観測しているところがありませんので、沖縄県より北海道のほうが気温が高くなったといえます。

 図1は、北海道・女満別空港の4月29日から5月1日の1時間ごとの気温変化です。1時間ごとの観測値ですので、4月30日11時の28.8度、12時の28.8度しか記入してありませんが、10時52分に瞬間的に30.2度を観測し、これが日最高気温になりました。

図1 北海道・女満別空港の4月29日から5月1日の1時間ごとの気温変化(白星印は日最高気温、黒四角は日最低気温)
図1 北海道・女満別空港の4月29日から5月1日の1時間ごとの気温変化(白星印は日最高気温、黒四角は日最低気温)

 北海道で4月の真夏日(日最高気温が30度以上)という珍しい現象ですが、4月29日は半日で気温が20度以上昇し、4月30日は逆に半日で気温が20度以上下降するという、体にはきつい現象がおきています。春の北日本では、気温変化が大きい場合が少なくありません。

 なお、統計がとられていませんので、詳しくはわかりませんが、平成29年(2017年)5月3日に釧路地方の中徹別で1日に30度以上の気温変化(最低気温の-1、8度から最高気温の28.4度まで1日に30.2度の気温変化)がありますので、少なくとも記録的な一日の気温変化というわけでありません。

 5月1日も優勢な太平洋高気圧に覆われて全国的に気温が上昇し、各地で真夏日を観測しましたので、ゴールデンウィーク前半は「晴れて春のお出かけ日和」というより、「夏を思わせる暑さ」だったと思います。

二つ玉低気圧

 ゴールデンウィーク中頃は、日本海と本州南岸を二つの発達中の低気圧が通過する予想です(図2)。

図2 予想天気図(5月3日9時の予想)
図2 予想天気図(5月3日9時の予想)

 この天気図は、気象関係者の間で「二つ玉低気圧」と呼ばれている天気図で、全国的に大荒れとなります。

 本州南岸の低気圧が発達するのは、日本付近には南から暖かく湿った空気が流れ込むためです。日本海側で低気圧が発達するのは、日本付近は北から冷たい空気が南下するためですが、二つの低気圧が一緒になると、北からの寒気と、南からの暖気が直接衝突することになり、一緒になった低気圧が急速に発達します。

 いわゆる「爆弾低気圧」になります。

 広い範囲で暴風が吹き荒れますので、特に、ゴールデンウィーク中頃から後半に山にでかける予定の人は、気象情報の入手に努め、警戒が必要です。

 高い山は平地よりかなり早く天気が崩れます。

寒気南下で大気不安定

 二つ玉低気圧の通過後は、上空に寒気が南下しています。予想では、この時期としてはかなり強い寒気です。このため、晴れると、日射によって地表面が温められて大気が不安定になり、局地的に積乱雲が発達し、竜巻などの突風や激しい雷雨となる可能性があります。

 ゴールデンウィーク後半は、晴れて日射が強まったら、発達した積乱雲が発達して竜巻や雷が発生する危険性があります。黒い雲が見えたり、遠くに雷鳴が聞こえたら、発達した積乱雲の接近ですので、安全な屋内への避難が必要です。

過去に大荒れだったゴールデンウィーク

 ゴールデンウィークが大荒れになうことは珍しくありません。

 平成3年(1991年)の5月3日は、上空に強い寒気が入ったことから、推定1万4000人が入山した北アルプスで吹雪となり、新雪による雪崩が続発して3人が行方不明となっています。また、低気圧通過後の強風によって滑落事故で2人が、凍死で1人が死亡しています。

 以後も、毎年のようにゴールデンウィーク中の遭難事故が発生しています。

 最近では、平成24年(2012年)のゴールデンウィークに北アルプスで6名が死亡していますが、このときには、高齢者が軽装で登山したいうことが注目されました。

北ア遭難 山の危険性浮き彫り 軽装「まるでハイキング」=長野

 大型連休を利用し、北九州市から白馬岳の登山に訪れた高齢の男性グループ6人が死亡した遭難事故。登山ブームで中高年の登山客が増えるのに伴い、北アルプスなどでは遭難事例が増えている。天候が急変しやすい山の危険性と、十分な安全管理の必要性が改めて浮き彫りになった…。

 6人が出発した栂池(つがいけ)高原のゴンドラとロープウエーの運行会社によると、近年は登山者の6割ほどが中高年という。軽装の利用客もいるが、ロープウエーの到着地である栂池平を散策するだけで、本格的に山には登らない観光客もいるため、スタッフは「お年寄りが軽装で来ても、山頂まで行くのか分からず、注意しにくい」と打ち明ける…。

 大町署によると、6人は、シャツやTシャツに、ジャンパーや雨がっぱを羽織る程度。幹部は「まるで日帰りの登山かハイキングに行くような格好。この時期は冬山の装備を呼びかけているのに、あまりに軽装だった」と語気を強めた。

出典:読売新聞(平成24年(2012年)5月6日朝刊

 今年のゴールデンウィークは、例年以上に気象情報に注意が必要です。

図1の出典:気象庁ホームページの資料をもとに著者作成

図2の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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