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北陸豪雪 車社会の進展で過去の記録的な豪雪より深刻な影響

饒村曜気象予報士
写真1 雪の日の柴田神社の柴田勝家像(福井市にて著者撮影)

 西高東低の冬型の気圧配置が続き、北陸地方では記録的な豪雪となっています。

戦後3番目の福井の豪雪

 福井市では積雪が140センチを超え、戦後では昭和56年(1981年)の五六豪雪時の196センチ、昭和38年(1963年)の三八豪雪時の213センチに次ぐ記録となっています。

 写真2は、福井地方気象台の冬の露場風景ですが、雪が少ない時のものです。中央部右側が積雪を観測する道具の一つで、目盛がついた棒(雪尺)、中央部左側の円筒形の筒が温度計などの観測機器が入っている筒ですが、これらが、すっぽりと雪に覆われているのが現在の状況です(写真2)。

写真2 福井地方気象台の露場(平成17年(2005年)の冬)
写真2 福井地方気象台の露場(平成17年(2005年)の冬)

 福井市には明治30年(1897年)10月以降の積雪の記録があり、10番目の記録が161センチですので、上位10位までの記録に入りませんが、上位10位のうち、7つが戦前の記録です(表)。

 近年、地球温暖化の影響で積雪が減っていますので、多くの人にとっては初めてと思える豪雪です。昭和56年(1981年)から平成22年(2010年)までの平均値(平年値)が21センチですので、平年値の7倍もの降雪となっています。

表 福井市の月最深積雪(明治30年(1897年)10月以降。*印は戦後の記録)
表 福井市の月最深積雪(明治30年(1897年)10月以降。*印は戦後の記録)

車社会の進展と被害拡大

 福井市の140センチという積雪は、五六豪雪や三八豪雪の時に次ぐといっても、その時に比べ、車社会が進展しています。多くの人と物資が車で行き交う社会に変わっていますので、雪による道路の寸断は、より深刻となっています。

 近年、災害が都市化、過疎化、高齢化、ネットワーク化で変化していると言われていますが、雪害も同じです。

 福井市などの都市部は、都市化により除雪道路が増えている反面、住宅が密集して雪捨て場が減っていますので、大雪が降ると、雪捨て場に苦労することになります。福井城のお堀は福井市の中心部の雪捨て場になっていますが、今年は足りないのではないかと思われます。

 道路の寸断は、過疎化した山間部で生活している人びとを孤立させます。そして、物資が次々に運ばれてくる便利な生活ができなくなります。

 高齢化が進み、高齢者が屋根の雪おろしをせざるをえなくなっています。このため、高齢者の雪おろし中の事故が心配です。

 ネットワーク化が進展し、社会が思わぬところでつながっています。

 昔であれば、福井県の大雪は福井県に大雪被害をもたらしていました。現在は、福井で作られている部品を使って遠く離れた場所で製品を作ることなどが、頻繁に行われていますので、福井県の大雪による交通障害は、遠く離れた雪とは関係のない場所での操業中止につながります。

 北陸地方の大雪は、北陸に被害をもたらすだけでなく、思わぬかたちで被害が全国に拡がるのが懸念されます。

 災害は深化しています。過去2回の豪雪とは違った被害が出てくると考え、幅広い防災対応が必要です。

タイトル画像の写真1(福井市の開祖ともいえる柴田勝家の像)、写真2の出典:ともに平成17年(2005年)の冬に著者撮影

表の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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