「正月なのにもう台風が…」ではなく、「正月なのにまだ台風が…」
台風の早い発生と遅い発生
台風1号が、1月3日9時に南シナ海で発生しました。
気象庁が台風の統計をとり始めた昭和26年(1951年)から平成29年(2017年)までに早く発生した台風は、次の通りです(気象庁ホームページより)。
1位 1月2日9時 昭和54年(1979年)
2位 1月2日15時 昭和30年(1955年)
3位 1月3日15時 昭和32年(1957年)
4位 1月3日21時 平成25年(2013年)
5位 1月5日21時 昭和60年(1985年)
ラニーニャ現象によって、太平洋西部の熱帯域で対流活動が活発になっていますが、この中から積乱雲が集まって発達し、中心気圧が1002ヘクトパスカル、最大風速が毎秒18メートルとなって、観測史上第3位の早さで台風1号が発生したのです。
台風1号は、南シナ海を西進して日本へは直接の影響はないと思われますが、太平洋西部熱帯域の活発な対流活動は、その北にある高気圧を発達させて偏西風を大きく蛇行させる可能性があります。このため、間接的には、日本付近に寒気を南下させるという影響が出るかも知れません。
昨年までに 最も早い発生日時の台風は、昭和54年(1979年)1月2日9時に発生した台風1号で、正月の台風発生はこれまでもありました。
平成12年(2000年)の台風23号は、12月28日にフィリピンの東海上で発生したあと、向きを北東に変え、平成13年(2001年)1月5日に日本のはるか南海上で消滅しています。
20世紀最後の台風である台風23号は、発生が12月30日9時と、最も遅い発生日時の台風ですが、もし台風の発生が4日遅く、平成13年(2001年)1月1日に発生すれば、この台風が一番早い台風となっていました。
ただ、これらは、気象学的にはあまり意味がない統計です。
昭和54年(1979年)の台風1号
昭和54年(1979年)の台風1号は、1月2 日9時に発生したため、このときも、マスコミに「1番早く発生した台風」として取り扱われました。それまでは、昭和30年(1955年)の1月2日15時に発生が1番早かつたからです。
このときには、「正月なのにもう台風1号が…」というより、「正月なのにまだ台風が…」といったほうが適切です。
というのは、台風は暖かいと多く発生するということから、その年の台風シーズンは、北半球の気温が1 番低くなって、これから暖かくなる2月下旬から始まるといってよく、1月は前年のシーズンの続きだからです。
多くの年は、1月に1個発生したあとはしばらく発生することがなく、2個目は4 月から5 月に発生しています。
図は、少し古い資料ですが、私が計算した台風の半旬別の台風発生数(図中の黒丸)と、半旬別の日本近海への接近数(図中の城白丸)を示したものです。気象の統計でよく使われているように,1年365日を5 日ずつ73の半旬に分けて集計しました。
黒丸の発生数には資料の関係でデコボコがありますが、これをならしてみると、台風発生数が一番少ないのは、2月上旬です。
6月下旬ころから発生はだんだん多くなり、7月20日から24日に小さな山があり、その後、4半旬目の8月9日から13日に突然多くの台風が発生しています。
理由はわかりませんが、その後も、ほぼ4 半旬ごとに大きな山が続いています。夏の小笠原高気圧の消長が、ほほ20日ごとといわれていますが、台風のこ発生と関係があるのかも知れません。
平成25年(2013年)の台風1号
最近で正月に発生した台風は、平成25年(2013年)です。
南シナ海南部で熱帯低気圧が発達し、1月3日21時に中心気圧1002ヘクトパスカル、最大風速が毎秒18メートルとなったため、台風1号が発生しました。
正月明けでニュースが多かったことに加え、台風発生が4番目の早さであったこと(1番目ではなかったこと)、発生後は西に進んで日本に影響がなかったことなどから、1月4日のニュースでは、ほとんど取り上げられませんでした。
台風には、台風の被害を受けている10ヶ国・地域で構成される台風委員会が予め用意した140個の名前から、順番に名前がつけられています。
平成25年(2013年)の台風1号には、たまたま「ソナムー(SONAMU)」と命名されました。この「ソナムー」は、台風委員会に加盟している北朝鮮が提案した名前で、「松」という意味がありますが、松の内にちなんだわけではありません。
平成30年(2018年)の台風1号の名前は、たまたまラオスが提案した「ボラヴェン(BOLAVEN)」と名付けられました。ラオスにある高原の名前です。
このような台風の名前は、台風委員会の10ヶ国・地域が協力して台風災害を防ごうとする活動のシンボルです。
図の出典:饒村曜(1986年)、台風物語、日本気象協会。