湿った雪による暴風雪がもたらした新潟大停電と「平成18年豪雪」
12年前の暴風雪
今から12年前の平成17年(2005年)12月22日は、低気圧が急速に発達しながら日本付近を通過したため(図1)、23日にかけて北日本から東日本の広い範囲で風が非常に強くなっています。そして、北海道から九州にかけての日本海側を中心に大雪となっています。
このため、スリップ事故が続出し、転倒してケガをする人が相次ぎました。
中部国際空港は、滑走路に降ったミゾレが凍結したことから滑走路が閉鎖され、高知空港では誘導路の残雪が凍って日航機がスリップして立ち往生しています。
航空機やフェリ一の欠航、新幹線の運休などが相次ぎ、日本列島の交通が寸断されました。
ホンダの主力工場である鈴鹿工場では、22~23日は従業員の出社・退社が困難ということから生産ラインを止めています。
また、宅配便が受付を中止したり、レタスやネギなどの野菜の価格が急騰し、スキ一客や観光施設への予約が大量に取り消されています。
このように、市民生活に大きな影響がでましたが、最たる影響は大規模停電でした。
ギャロッピング現象と大規模停電
強い風により送電線同士が縄跳びのように揺れて接触する現象を「ギャロッピング現象」といます。これ事態は珍しい現象ではありませんので、電線と電線の間隔をとったり、雪が降る地域では「相間スペーサー」という器具をつけたり、ショートして送電がストップしても迂回ルートを確保して消費者に影響がでないようになっています。
しかし、平成17年(2005年)12月22日の新潟県では、最大瞬間風速が毎秒30メートルを超す海からの強風と激しい雪であったために、送電線に吹き付けられた塩分を含んだ雪が風下側への氷となってはりつき、送電線に翼がついたようになっています。
強風が広範囲で長時間、しかも、みぞれ混じりで吹くという条件のため、風が弱くなっても激しいギャロッピング現象が長時間続いています。さらに、塩分を含んだ氷雪が鉄塔と送電線の間の絶縁体に付着し、塩風害が発生したことで被害が拡大しました。
新潟大規模停電
記録的な豪雪が続いていた新潟県では、主要な送電線のうち少なくとも4本がほぼ同時にショートし、新潟市など30市町村で大規模な停電が発生し、病院の暖房が止まるなど都市機能がマヒしています。
最大65万戸という、新潟県内の約4割が停電し、荒天でヘリが飛べなかったことから、断線箇所を地上から確認したため時間がかかり、完全に復旧したのは停電が始まってから31時間後の23日午後3時になってからでした。
また、福井県の関西電力大飯原子力発電所は、関西方向に電気を送る50万ボルトの高圧送電線が雪の影響で送電できなくなって出力を落としたため、近畿地方で70万戸という大規模の停電が起きています。
湿った雪には注意
気温が0度(セッシ)位の雪は水分を多く含み、湿った雪と言われます。これに対し、気温が0度を大きく下回るときの雪は、乾いた雪といわれ、含まれる水分が少なく、サラサラしています。
気温が高くなると、大気中に含むことができる水蒸気の量が増えますので、湿った雪は大雪の可能性が高い雪です。しかも、湿った雪は電線や樹木に付着しやすく、重い雪です。このため、送電線を切断したり、樹木を倒すなどで被害が拡大しますので、注意が必要な雪です。
平成17年(2005年)12月の新潟大規模停電のときの新潟県は、温暖前線の北に位置し、暖かい空気が冷たい空気の上を滑昇してできた雪が降りましたので、0度に近い、湿った雪が降りました。
過去に、雪による大規模停電は、昭和55年(1980年)12月に岩手、宮城、福島3県で雪の重みで電線が切れたことによる61万戸の停電、昭和61年(1986年)3月に神奈川県などで大雪で鉄塔が倒壊したことにより、2日間で延べ約133万戸が停電したケースなどがあります。
平成17年(2005年)12月の新潟大規模停電を含めて、いずれも湿った雪が付着することによって発生しています。
気象庁が命名した「平成18年豪雪」
平成17年(2005年)12月の新潟大規模停電後、翌年の1月にかけて非常に強い寒気が日本付近に南下し、強い冬型の気圧配置が断続的に現れたため、日本海側では記録的な大雪となり、東日本と西日本では12月の月平均気温が戦後最も低くなりました(図2)。
今年と同じ、ラニーニャ現象が発生している年のできごとです。
12月中旬から1月中旬を中心にした記録的な大雪は、屋根の雪下ろし等除雪中の事故や落雪、倒壊した家屋の下敷きになるなど、死者が152名に達しています。
このため、気象庁は「平成18年豪雪」と、西暦併記ではない名称で命名しています。
気象庁が豪雪に命名したのは、「昭和38年1月豪雪」と、「平成18年豪雪」の2つだけです。
図1、図2の出典:気象庁ホームページ。