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APECで世界の首脳が集まったベトナムの今年は台風禍

饒村曜気象予報士
ベトナム ダナン ロン橋(写真:アフロ)

アジア太平洋経済協力会議(APEC)と台風

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)は、ベトナム中部のダナンで、閣僚会議が11月8日から9日、首脳会議が11月10日から11日に開催されています。

 APECでは、安倍総理大臣や、アメリカのトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、韓国の文大統領のなど、世界の首脳が集まっています。

 APECの開催国のベトナムでは、今年、台風災害が相次いでいます。

 9月15日に台風19号が上陸し、大雨による洪水で、過去数十年で最大級と言われる被害が発生しました(図1)。

図1 台風19号の進路予報(平成29年9月15日6時)
図1 台風19号の進路予報(平成29年9月15日6時)

 そして、APEC閣僚会議4日前の11月4日には、台風23号が上陸し、暴風や大雨、洪水、土砂崩れなどで死者・行方不明者が100名を超えています(図2)。

図2 台風23号の進路予報(平成29年11月3日21時)
図2 台風23号の進路予報(平成29年11月3日21時)

 大きな被害がでたのは、歴史的町並みが世界遺産に登録されているホイアンで、会議開催地のダナンから25キロメートルしか離れていません。

 そして、現在、南シナ海に台風24号があり、発達しながら西に進んでいます(図3)。

図3 台風24号の進路予報(平成29年11月11日0時)
図3 台風24号の進路予報(平成29年11月11日0時)

 首脳会議終了後の11月13日には、ベトナムに上陸する可能性があります。暴風の可能性は少なくても、大雨の可能性があります。

 台風23号と24号の間でAPECが開催されたことになります。少し台風の襲来時期がずれていたら、台風に翻弄される会議となるところでした。

 ベトナムの台風シーズンは、9月から11月です。いろいろな条件があり、総合判断で開催日が決められたと思いますが、気象という面からいえば、世界の首脳が集まる会議の時期としては、1ヶ月位後のほうが良かったと思います。

ベトナムの台風

 インドシナ半島東岸沿いに細長く延びているベトナムは、面積は日本の約90パーセント、人口は日本の約半分、そして日本と同じように台風の被害を受けている国です。

 台風の上陸数は年平均で約3個と、日本の台風上陸数とほぼ同じです。

 ただ、平均数は同じでも、ベトナムのほうが年による差が大きく、全く上陸しない年がある半面、6から8個も上陸する年もあります。

 図4は、ベトナムの月別台風上陸数を示したものですが、10月が一番大きく、全体の約30パーセントをしめています。また、9月、11月も多く、ベトナムの台風シーズンは9月から11月です。

図4 ベトナムの月別台風上陸数
図4 ベトナムの月別台風上陸数

 初夏や晩秋の頃の台風の発生緯度が低く、しかもあまり北上せずに西進するものが多いためにベトナム南部に上陸する台風が多くなります。

 ベトナム南部は、10月から11月が台風シーズンです(数は少ないのですが、6月にも台風が上陸しており、台風シーズンが2つあるともいえます)。

 夏から秋の頃の台風は、発生緯度が高いことと、北西進する台風が多くなることから、ベトナム北部に上陸することが多くなります。ベトナム北部では、7月から10月が台風シースンです。

図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁ホームページ。

図4の出典:饒村曜(1993年)、続・台風物語、日本気象協会。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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