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小春日和を挟みながら「山装う」が「山眠る」へ

饒村曜気象予報士
東京都 ケヤキの並木道(写真:アフロ)

週明けは小春日和だった?

 移動性高気圧に覆われると晴天のことが多いのですが、移動性高気圧がどのようなコースを進むかによって晴天の様子が変わります(図1)。

図1 移動性高気圧の代表的な経路
図1 移動性高気圧の代表的な経路

 今週の週明けは、北緯35度線を西から東に進みましたので、全国的に晴天となり、晴れて暖かくなりました(図1の丸数字の1)。

 もし、日本海北部から関東地方に進む場合は、全国的に晴天ですが気温は上がらず肌寒い日となったでしょう(図1の丸数字の4)。

 また、今回より南を東進する場合の晴天は関東から西の地方だけ、今回より北を東進する場合は北日本だけが晴天になったと思われます。

 旧暦の10月は、島根県出雲地方に全国の八百万(やおよろず)の神様が集まる月ということから神無月(かんなづき)と呼ばれています。ただ、出雲地方だけは神様が集まっていることから神無月ではなく、神有月(神在月:かみありづき)と言います。

 神無月の他にも、新米などで酒を醸造する月であることから醸成月(かみなんづき)とか、春のような陽気になることがあることから小春などと呼ばれてきました。俳句において「小春」は冬の季語です。

 晩秋から初冬にかけての暖かく、穏やかな晴天のことを小春日和といいますので、今週の週明けは小春日和と感じた人も多かったと思います。

 ただ、今年は11月18日が旧暦の10月1日、神無月の始まりの日です。厳密に言えば、小春日和ではありません。

日本は春が過ごし易いが、欧米の夏がすごし易い?

 冬にむかって進んでいる季節の中で、南から暖かい空気が入って暖かくなる現象は、日本だけでなく中~高緯度にある国々にあります。

 ただ、国民性の違いでしょうか、ほとんどの国が春ではなく夏に例えています。

 例えば、アメリカでは「インディアン・サマー」、イギリスでは「セント・マーチンの夏」、フランスでは「サンマルタンの夏」、ドイツでは「老婦人の夏」、ロシアでは「女の夏」です。

なお、セント・マーチンの日(サンマルタンの日)は、キリスト教の聖マルティヌスの日のことで、11月11日に祝われます。

 厳しい寒さにむかうなかで、過ごし易さを懐かしむ季節というと、日本では暑すぎる夏ではなくて春、日本より少し高緯度にある欧米では夏なのかもしれません。

「山装う」から「山眠る」へ

 今週の週明けは、移動性高気圧に覆われ、小春日和のように暖かかったのですが(図2)、今週半ばは、低気圧が北日本を通過し、その後寒気が降りてきて寒くなります(図3)。

図2 地上天気図(平成29年11月7日21時)
図2 地上天気図(平成29年11月7日21時)
図3 予想天気図(平成29年11月8日9時の予想)
図3 予想天気図(平成29年11月8日9時の予想)

 日本付近を低気圧と移動性高気圧が交互に通過し、移り変りの天気の中で気温が段階的に低くなります。

 東京では、10月の前半は最高気温が25度を超える日もありましたが、11月に入ると最高気温が20度を越すのがやっととなり、最低気温が10度を下回ってきました(図4)。

図4 平成29年10月以降の東京の最高気温と最低気温(11月7日以降は週間天気予報による)
図4 平成29年10月以降の東京の最高気温と最低気温(11月7日以降は週間天気予報による)

 俳句の世界では、秋の山は、紅葉で美しく彩られた山ということで「山装う」ですが、冬の山は、活動を停止した山ということで「山眠る」です。

 そして、旧暦の10月になり、小春日和の日の初冬は、小春日和を挟みながら次第に寒くなり、「山装う」から「山眠る」へ移行します。

山の四季の表現

春 山笑う

夏 山滴る

秋 山装う(山粧う)

冬 山眠る 

図1の出典:饒村曜(2012)、お天気ニュースの読み方・使い方、オーム社。

図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

図4の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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