台風5号が九州に接近 夏の北上台風は平均時速が15キロと遅い
速度が遅いだけで台風は警戒
上空の強い西風の領域が東北地方南部から北海道へと北上しました。このため、自転車並みの速度で北上をはじめた台風5号ですが、再びゆっくりとなっています。
一両日は、この状態が続き、北へ時速20キロで動き始めるのは、週明けになりそうです(図1)。
日本付近で台風の動きがゆっくりとなると、台風周辺の非常に湿った空気が同じ場所に長時間流れ込むことで、これまでも、大雨災害がたびたび発生しています。
例えば、平成23年の台風12号は、強い偏西風が日本海北部にあり、9月3日に高知県東部に上陸する前も後も加速することなく北上し、紀伊半島を中心に広い範囲で1000ミリを超え、記録的な大雨となりました。災害関連死6名を含め、死者・行方不明者98名など、大きな被害がでています。
台風の平均速度
台風は、自分自身で北上する力はほとんどなく、周辺の風に流されて移動します。
このため、低緯度では上空の偏東風に流されて西へ、中緯度では上空の偏西風に流されて東へ進みます。周辺の風が弱ければ、動きはゆっくりで、複雑な動きになります。
台風の平均の進行速度は21キロですが、これは、秋に強まった偏西風によって猛スピードの台風を含んでの平均です(図2)。夏の台風の速度は、これより小さなものとなります。
台風は、高緯度ほど偏西風の影響を受けること、夏に比べ秋は上空の偏西風が強いことなどから、速度は、緯度が高くなるほど速く、同じ緯度でも夏より秋の方が、それも秋が深まるほど速くなります。
九州に接近中の台風5号のように、九州の南海上を北上する台風の平均は、時速15キロです(図3)。なお、図3はノット表示ですので、値の2倍がおおよその時速となります。
移動速度が遅い台風5号ですが、統計的には九州上陸後から平均速度は30キロ(図3では15ノット)と加速しています。
遅い台風と思いこまず、気象庁や自治体の情報を、先入観を持たずに聴き、台風に備えて下さい。
なお、台風5号は、7月21日9時に発生以来、5日21時で「15日と12時間」となり、統計を開始した昭和26年(1951年)以降、第5位タイの長寿台風となります。
昭和61年の台風14号の「19日と6時間」にどこまで迫るかという長寿台風ですが、長寿台風といっても、永久には続くものではありません。いましばらくの警戒です。
図の出典:饒村曜(1980)、台風に関する諸統計(第2報)、研究時報、気象庁。