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関東から東海の梅雨はどこへ?

饒村曜気象予報士
営業マン(写真:アフロ)

梅雨入りしても続いた平成29年の少雨

平成29年の東日本太平洋側と西日本では、4月下旬から6月にかけて、高気圧に覆われて晴れの日が多く、降水量の少ない状態が続いていました。九州から関東甲信地方は、6月6日から7日頃に大気不安定で曇りや雨の天気が続くということで、気象庁は速報で梅雨入りを発表しました。

近くに梅雨前線がない梅雨入りですので、梅雨入りのタイミングが非常に難しく、秋に再検討の結果、梅雨入り日が確定するときに、日付が変更される可能性もあります

ちなみに、梅雨入り発表という速報値が、秋の統計値で変更となるのは44%です

梅雨入りしましたが、梅雨前線は日本の南海上に停滞したまま北上せず、小雨を解消するような、まとまった雨は降りませんでした。

このため、気象庁では、5月26日14時と、6月14日14時に「東日本太平洋側と西日本の少雨に関する全般気象情報」を発表し、農作物や水の管理等に十分に注意するよう呼びかけました。

平年の半分しか降水量がなかったからです。

しかし、6月30日からは梅雨前線の活動が活発になり、台風3号の上陸もあり、北陸から西日本では大雨となっています(図1)。なかでも、九州北部の福岡県朝倉市から東峰村、大分県日田市にかけては記録的な大雨となり、山崩れなどで死者30名以上など、大きな被害が発生しましたが、死者は、朝倉市、東峰村、日田市に集中しています。

図1 全国のアメダス総降水量(2017年6月30日~7月10日)
図1 全国のアメダス総降水量(2017年6月30日~7月10日)

関東から東海の今年の梅雨明け

西日本などで大雨となった今年の梅雨ですが、東海から関東地方では、上空に寒気が入ったことにより大気が不安定となって局地的に積乱雲が発達し、狭い範囲で豪雨が降っていますが、広い範囲でシトシト雨が降るという、多くの人が持つ教科書通りの梅雨のイメージとは違った梅雨になっています。

梅雨前線による広範囲のまとまった雨が降っておらず、東京の降水量は平年並みだった昨年に比べて約半分です(図2)。

図2 東京の積算降水量
図2 東京の積算降水量

現在、梅雨前線が東北南部から北陸地方にありますが、今後南下して弱まる見込みです(図3)。

図3 予想地上天気図(平成29年7月18日21時の予想)
図3 予想地上天気図(平成29年7月18日21時の予想)

沖縄で6月20日、鹿児島県奄美地方の6月29日に続き、7月13日に九州南部で梅雨明けしましたが、関東~東海は少雨が続き、週間天気予報によると今後も晴れの日(所により雷雨)が続きますので、梅雨明けのタイミングがむつかしくなっています(図4)。

図4 東京と名古屋の週間天気予報
図4 東京と名古屋の週間天気予報

ちなみに、梅雨明けの平年値は、九州北部で7月19日(昨年7月18日)、四国で7月18日(7月18日)、中国で7月21日(7月18日)、近畿で7月21日(7月18日)、東海7月21日(7月28日)、関東甲信7月21日(7月29日)、北陸7月24日(7月19日)、東北南部7月25日(7月29日)、東北北部7月28日(7月29日)です。

昨年より多い真夏日

全国での真夏日(日最高気温が30度以上の日)の累計をみると、今年は5月下旬に真夏日が多かったものの、6月に入ってからは少しずつしか伸びていません。日射が強まっても、北からの寒気が入っているなかですので、気温は極端にあがらなかったからです。

しかし、7月に入ると、強い日射が続いたことにより気温が高くなり、7月10日には累計の真夏日日数が昨年を超えています(図5)。

図5 真夏日の日数の累計(2016年と2017年)
図5 真夏日の日数の累計(2016年と2017年)

梅雨明け前ですが、梅雨とは思えぬ晴天のときは、平成2年の猛暑以降充実している紫外線情報に注意し、紫外線に対する警戒が必要です。

また、ちょっとした寒気が上空に入ってきても、地表面付近の気温が高くなっていますので大気が不安定となり、積乱雲が発達して雷や突風、局地的豪雨となることがあります。広い範囲ではありませんが、遭遇した時への備えは必要です。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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