精神科の「トンデモ」クリニックを見分けるコツ

「トンデモ」クリニックとは?

 がん、アトピーなど、既存の治療、いわゆる「保険診療」に絶望して、エビデンスレベルの低い治療法に藁をもすがる気持ちで頼る患者が少なくない。著名人でも、そういう治療に手を出さなければ、治癒ないし延命できていた可能性のある人もいるだろう。

科学的根拠がまったくない、個人の感想や経験だけに基づいた、しかも健康保険の適応外であり法外な金額を求められる治療が、公然と放置されていることは事実である。

 これらの医療は、インチキ、詐欺という意味で、「トンデモ」と呼ばれるようになってきた。聞いたことのある人は多いと思うし、耳にしたことがないという人は、よほど健康かあるいは医療に関しては情報弱者になっているといっていい。

 トンデモ医療を放任している医療界、行政の責任はもちろんだが、これらを放任どころか宣伝役としてサポートしているマスメディア、出版社は、もっとも罪深いとわたしは考えている。

 第一線で活躍されている腫瘍内科医であり、SNS発信も多い日本医科大学の勝俣範之教授は、ツイッターでトンデモクリニックを見分ける三つの点を挙げている。

「インチキクリニック代表。がんのインチキクリニックを見分けるコツ。1.保険が効かない自由診療。2.がんが消えた、治ったとのうたい文句。3.効果のあった患者さんの例が紹介されている。しっかりと当てはまる。」

 わかりやすい、明解な解答だ。これに怪しげな一般書や講演を頻繁に行っていれば、トンデモの可能性は限りなく高い。

ガンの場合は、抗がん剤の投与でかえって早死にしたなど、ネガティブな情報が根強い。しかも、そのような事例がゼロではないのも事実である。また進行してしまったガンには、近代医学は冷淡である。

 「トンデモ」にすがりたくなる患者の気持ちは理解できる。しかしその藁をもすがりたい気持ちが、トンデモ運営側にとっては、いい金づるなのだ。善意が少しでもあれば、あのような法外な金額を提示できるはずがない。

では本テーマに帰って、精神科・心療内科の領域の「トンデモ」とは、どういった医療機関なのかを考えてみたい。「トンデモ・メンタルクリニック」を見分けるコツは、はたしてあるのだろうか。

「トンデモ・メンタルクリニック」を見分けるコツ

 自分が精神障害になった、あるいは自分の家族に精神障害が疑われ、クリニック選びをしなければならないと仮定し、「トンデモ」精神科医に出くわさないにはどうしたらいいかを、考えてみた。インターネットでも、精神科・心療内科の選び方は数え切れないくらいに載っている。肯けるものもあれば、「薬は絶対に飲んではいけない」など、反精神医学に凝り固まった偏った情報もある。

  1. 初診の診察時間が、30分以下である

初診は、患者の治療方針だけでなく、医師との治療関係を結ぶためにも、非常に重要な機会である。できれば、一時間はほしいところだが、患者が多いクリニックでは現実的に一時間割くことは難しい。

保険診療である以上、毎回長時間の診察時間は取れない。初診でしっかり情報を共有しておけば、二回目以降の診察は初診ほどの長さを要しない。そのためにも、初診の場合は予約がやはり望ましい。

  1. 患者が多すぎる

すでに飽和しており、当然ながら、一人当たりの診察時間は短くなる。医師も多くの患者への診察で疲弊してしまい、患者にイライラをブツけるなど精神的平穏を保ちづらくなる。患者の症状の変動を、薬剤の増量だけで対応している可能性もある。

  1. 開院して長いのに、患者がほとんどいない

患者側が医師を見放している、寄りついていない可能性がある

  1. 初回の診察で3種類以上の薬が処方される

2016年の改定で薬剤を多剤処方した場合の診療報酬が減算され、さすがに初回から多剤処方をする医者は減ったはずだが、例外もいるかもしれない。

  1. 医師の経歴

医学部卒業後5年以内で開業している医師は、知識や経験が偏っている可能性が強い。開業していなくても、総合病院などを経験せずにクリニックを転々としている医師にも、わたしが患者ならば診てもらいたくない。

  1. 自説を押しつける

「論文でも評価されているこの薬がいい」

「薬は百害だらけで、精神分析が最適」

など、患者と相談して治療を進めていこうという意思ゼロ。

  1. 日常生活への質問がまったくない

生活指導は、精神科治療のイロハである。食事、睡眠、仕事については、最低限はチェックするものである。

  1. 最新機器だけで診断を下す

ロクに問診もせず経過も追わず、光トポグラフィの結果だけで「うつ病ですね」などと診断する。状態評価もせずいきなり磁気刺激法なども論外。

 ネットで見かける悪評は、あまり気にしない方がいいと思う。一人の執着的な患者が、悪評をあちこちにバラまいていることが多いからだ。もっとも、「一度に5種類の薬が出された」などの事実記載には、参考にしたほうがいいだろう。

 

 よく、「目を見てくれず電子カルテばかり見ている」というクレームも多い。ただわたしが患者ならば、この点はあまり気にしない。なぜなら、医者には自閉スペクトラム症と疑われる人も多く、アイコンタクトを取れない人が多いからだ。彼・彼女らに悪気はなく、よく勉強しており、融通は利かないが治療には熱心なことが多いからだ。

 

 ただ精神科の場合で特殊なのは、他の診療科以上に患者と医師との「相性」が重要なことだ。相性が悪い医者-患者関係では、治療はうまくいかない。わたしも、あなたとは相性が合わないから担当医を変えてほしいと要求されたことが何回かある。治療者としても、相性が合わない患者とつき合いたくないのが人情だ。

 幸いわたしの場合は、あからさまに主治医交代を求められたのは、医師経験20年ほどだが3,4人レベルで済んでいる(内心では、違う医者がいいと思っていた患者は多いだろうが)。良い「相性」を築くのが下手な医者もいて、それはその医者の能力不足ということになるだろう。同じように、医者と良い「相性」を築けず、ドクターショッピングばかりしている患者もいる。5人の医者と出会えば、一人ぐらいはまずまずな相性の医師に出会えるのではないか。わたしの先輩医師が教えてくれたことだが、5人医者を代えても合う医者がいないと言われるときには、医者よりもその患者のほうに問題があるという。

 ネット時代の現代では、昔と違って他者の評価を家にいながらにして知ることができるの。しかし、アマゾンや食べログのレビューがしばしばヤラセや炎上などで問題となるように、ネットの情報は、玉石混淆である。まして医者との相性を数値化するのは、人工知能が発達した現在でも不可能だ。今日ご紹介した情報を参考にして、アナログに進めていくしかないのが現状だと思う。