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ソフトバンク・中村晃の打撃フォーム「完コピ」を目指す韓国の打者 32歳で初の打率3割へ

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表
チョ・ヨンホの打撃フォーム(写真:kt wiz 中継画面から提供)

韓国KBOリーグの昨年の覇者・KTウィズ。そのKTの不動の1番打者として役割を果たす外野手のチョ・ヨンホは、日本のある選手の打撃フォームを取り入れ、30歳を境にレギュラーに定着し好成績を残している。

「プレミア12(2015年)で見て以来、ソフトバンクの中村晃選手に関心を持っています。中村選手は他の選手に比べてテイクバックを早く始めて、ボールを長く見られるタイミングで打っているのが参考になる点です」

チョ・ヨンホは試合前の早出特打とチームの全体練習を終え、顔から滝のような汗を流しながら熱っぽく語った。

身長170 cm、体重75kg、左打ちのチョ・ヨンホ。彼は自身と同じくプロ選手の中では小柄で、高い打撃技術を誇る中村晃に注目し続けた。チョ・ヨンホに中村晃の打撃時の連続写真を見せると、以下のように解説してくれた。

「テイクバックをとって上げた前の足(投手側の右足)を下ろした時に、しっかりと「壁」が作れています。スイングを始動した時にも壁が崩れず、トップの手の位置も理想的です。僕のように体が大きくなくてパワーヒッターではなくても、持っている力を十分に生かせる形になっています」

チョ・ヨンホは中村晃のプレー動画を繰り返し見て研究を重ねている。また中村晃の「脇パカパカ」と一部で表現される、腕を動かしながらタイミングを取る構えもチョ・ヨンホは行っている。

「まだ100%真似は出来ていませんが、どの時点でスイングを始動し、手の位置がどこにあるのかという、タイミングの取り方を一番気にして見ています」

ソフトバンク・中村晃のフォームを研究しているチョ・ヨンホ(写真:kt wiz)
ソフトバンク・中村晃のフォームを研究しているチョ・ヨンホ(写真:kt wiz)

チョ・ヨンホは1989年生まれの現在32歳。中村晃と同い年だ。しかしプロ入りは中村晃より6年遅い。アマチュア時代、ドラフトが近づくとケガに見舞われ、指名される機会を逃してきたからだ。

チョ・ヨンホがプロ入りしたのは大学、独立球団、軍服務を終えた24歳。SKワイバーンズ(現SSGランダーズ)にテストを経て育成選手として入団した。

1軍初出場はプロ4年目。6年目の2019年に無償トレードでKTに移ると1軍に定着し、30代になった翌20年に初めて規定打席に到達した。その年の成績は132試合に出場し、打率2割9分6厘。今季はここまでの前半戦で打率3割5厘、6月2日にはプロ1632打席目で初ホームランを放っている。

チョ・ヨンホ(写真:kt wiz)
チョ・ヨンホ(写真:kt wiz)

チョ・ヨンホに「もし中村晃と会えたら、どんな話をしたいか?」と尋ねるとすぐに答えが返ってきた。「投手がワインドアップの時とセットポジションの時で、スイングの始動にどのような差があるか聞きたいです」

チョ・ヨンホは結果を残し続ける手立てとして、これからも中村晃の姿を追い続けていく。

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韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FMコザ)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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