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週末再始動に向け要チェック。リーグワン・ディビジョン1前半戦活躍選手総まとめ【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
マクマーンは八面六臂の活躍。(写真:つのだよしお/アフロ)

 今年1月に発足したジャパンラグビーリーグワン。感染症による試合の中止、クラブの活動停止に関する報道に揺れながらも、非日常的空間の創出と複数の接戦を提供している。

 本稿では、2月上旬まであったディビジョン1の全5節までのベストフィフティーン、暫定のMVP、MIP、新人賞を私的に選定する。

ディビジョン1第1~5節 私的アワード

★暫定MVP ショーン・マクマーン(サンゴリアス)

★暫定MIP オペティ・ヘル(スピアーズ)

★暫定新人賞 ワーナー・ディアンズ(ブレイブルーパス)

★ベストフィフティーン

1、石原慎太郎(サンゴリアス)

2、堀江翔太(ワイルドナイツ)

3、オペティ・ヘル(スピアーズ)

4、ツイ ヘンドリック(サンゴリアス)

5、ジェイコブ・ピアス(ブレイブルーパス)

6、ピーターステフ・デュトイ(ヴェルブリッツ)

7、ショーン・マクマーン(サンゴリアス)

8、アマナキ・レレイ・マフィ(イーグルス)

9、齋藤直人(サンゴリアス)

10、アイザック・ルーカス(ブラックラムズ)

11、マリカ・コロインベテ(ワイルドナイツ)

12、サム・ケレビ(サンゴリアス)

13、ディラン・ライリー(ワイルドナイツ)

14、ジョネ・ナイカブラ(ブレイブルーパス)

15、野口竜司(ワイルドナイツ)

ずっと激しい、ずっと強い

 最も顕著な活躍をしたMVPは、1度の不戦勝を含め5戦負けなしのサンゴリアスから選んだ。

ショーン・マクマーンは、激しい部内競争と過酷な社会情勢のもと、開催されたすべてのゲームで身体を張った。

 ブレイブルーパスとの第1節でプレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝き、その翌週以降にこそ本領を発揮。まずヴェルブリッツを50-7で下した第2節では、大量点差をつけて迎えた後半も好タックルを重ねて大味な展開になるのを防いだ。

 大幅なスコッドの入れ替えを余儀なくされていた第3節では、消化不良気味の感があった試合序盤から接点脇でのラインブレイク、走者のサポートのさなかにギアチェンジを施してのトライと、要点を押さえる。

 味方にレッドカードが出てからは防御で献身。自陣深い位置でのターンオーバー、相手のモールに身体を差し込む動作は、ブラックラムズを36-33と下すのに必要なファクターだった。

 MIPはスピアーズのオペティ・ヘル。球を持てば必ず防御を蹴散らし、タックルがきれいに入れば相手を一気に押し返す。防御でもインパクトを残す。

 スティーラーズに22-27と迫った第3節では、11-19と8点差を追う後半10分頃にグラウンド中盤でビッグタックルを放つや、そのまま相手のボールをもぎ取り前進。その後の連続攻撃から相手の反則を誘い、ペナルティーゴール成功をもたらした。 

 身長190センチ、体重127キロのサイズでスクラム最前列の右プロップに位置。入団3季目も昨季不出場といった背景も踏まえれば、この人の活躍は前半戦最大のサプライズと言えよう。

ディアンズの凄さとは

 新人賞は、2021年4月以降に日本の大学や高校から加わったルーキーを対象に選考した。

 プロデビューの前に日本代表の試合に出たブレイブルーパスのワーナー・ディアンズは、第2節のハイタックルにより出場停止を経験も、復帰するや低く鋭いタックルを披露した。

 身長201センチ、体重117キロのサイズを活かしたラインアウト、キックオフ、チョークタックルに加え、接点の周りで球をもらう際のフットワーク、防御に近づきながらの深い角度のパスと、器用さも示す。

 下川甲嗣は、熾烈な競争を強いられるサンゴリアスのフランカーとして開幕から2戦連続で先発した。強力な外国人もなぎ倒すタックルとその後の起き上がりが光り、攻めては防御を引き付けながらのパスを繰り出す。

 タフで器用な新人と言えば、津嘉山廉人はイーグルスの正右プロップとして突進とタックルで光った。

防御で気を吐いたフロントロー

 毎節選定のベストフィフティーンは、開催された試合でチームの勝利に直結する(しうる)働きを全うした選手を優先的にリストアップしてきた。今回のラインナップには、その並びに入ったか、入ってもおかしくなかった回数が多いメンバーを並べた。30試合中9試合が中止になった現状を鑑み、出場試合数は選考項目としなかった。

 サンゴリアスの左プロップ、石原慎太郎は、自陣ゴールラインが近づくほどに好タックルを重ねる。フォワード同士の衝突だけではなく、脚力のあるバックスの走路を抑えての一撃もあった。防御で魅した背番号1にはほかに、不動の日本代表でワイルドナイツの稲垣啓太クレイグ・ミラーがいる。この3名は、2月26日の第7節での競演が期待される。

 ワイルドナイツと言えば、フッカーの堀江翔太も存在感を発揮。クラスター発生のため第2節まで不戦敗も、第3節で際立つ。

 対するは、当時2連勝中のイーグルス。接点の真上を突破するピック&ゴーで活路を見出さんとしていた。それに対して堀江は、接点の周りにあえて滞留する。イーグルス勢のジャージィを掴む。抜け出した相手に反応してのジャッカルでも光り、27-3とノートライに抑えた。

 スティーラーズを41-37と逆転で下した第4節でも、堀江はフットワークとフィジカリティを活かしたボールキープで自軍ペースの展開に持ち込んだ。同じフッカーでは、スピアーズのマルコム・マークスもジャッカル、チョークタックルで強さを発揮した。

望遠鏡の先にいるか

 ロックでは、サンゴリアスのツイ ヘンドリックがフランカーから転向して身体を張った。本職でプレーした第4節では、後半終了間際に自陣でのラインアウトをスティール。その前の局面ではターンオーバーも決めた。

 本職組も負けていない。ブレイブルーパスに新加入したジェイコブ・ピアスは、ヘルに負けず劣らずの驚きをもたらす。防御ラインに素早く立ち並び、相手が攻め込む箇所へ先回り。適宜、高低のタックルを放ち、要所でのジャッカルでも光る。

 ラグビー観戦では、人と人とがぶつかり合う瞬間を望遠鏡などで追いかけ続ければ誰が献身的か、もしくはインパクトを残しているかがわかりやすい。その視線でゲームを追いかけた際に映えるのがピアスであり、スピアーズのロックとしてチョークタックル連発のルアン・ボタであり、ヴェルブリッツのフランカー、ピーターステフ・デュトイである。

 デュトイはサンゴリアスに大敗した日も強度の高いタックル、カバー防御が光り、ブレイブルーパスを33-23で下した第4節でも中盤でのビッグタックル、キックオフ直後のジャッカルで目立った。

 ナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィは、近年よりもフィットした様子で好突破と大きく駆け戻ってのジャッカルを連発。フォワード第3列ではほかに、ブレイブルーパスのマット・トッド、サンゴリアスの小澤直輝、ヴェルブリッツの古川聖人が地上戦で一貫性を保った。

 ワイルドナイツに加わったばかりのラクラン・ボーシェーも、第4、5節ではスーパーラグビーでお馴染みの鋭いジャッカルを披露。同僚のベン・ガンターとともに、リーグ中盤戦以降の主役となりうる。

チャンスメーカーの共通点?

 主役と言えば、目立つ星のもとに生まれた1人に齋藤直人が挙がる。

 2020年春からサンゴリアスに加わり、いまやリーダー陣の1人。ブラックラムズとの激闘ではゲーム主将を任され、自陣深い位置でのタックルで相手の落球を誘った。

 それと前後し、抜け出した味方へトップスピードで駆け寄ってはトライを量産。初戦では「50/22」ルールを利したキックも放った。

 齋藤のいるサンゴリアスで開幕時の先発スクラムハーフだった流大は、滞空時間の長いハイパントで味方の鋭いチェイスを引き出す。またこの位置ではほかに、スピアーズの谷口和洋が安定していた。味方を前に引き出すようなパスを投げ続け、隙があれば接点の脇に仕掛けた。

 その谷口と司令塔団を組んだバーナード・フォーリーは、深い角度から仕掛けて大外にパスを放り、チャンスを広げた。1敗同士で迎えたイーグルスとの第5節では、相手スタンドオフの田村優のハイパントを捕球してからのランでトライを演出した。

 今度の第6節では、アイザック・ルーカスを対面に迎える。ルーカスは、忍者の動き、相手を引き付けながらのパスでブラックラムズをけん引するプレーメーカー。競技の構造上マッチアップは少ないだろうが、注目の同ポジション対決となろう。

 ハードワークでファンの感動を呼ぶブラックラムズでは、インサイドセンターのメイン平も出色の働き。サンゴリアス戦の前半終了間際には、自陣で相手を引き付けながらのパスを決めるや左大外へ回って好突破。続くヴェルブリッツとの第5節では、後半5分、相手の芯から逃れる走りでトライをマークした。

 もっとも本欄のセンターでは、サンゴリアスのサム・ケレビ、ワイルドナイツのディラン・ライリーを配列。いずれも攻守で相手を切り裂いたり、ゲインライン上で仕留めたりする頻度が際立った。ケレビは防御を巻き込んでのオフロードパス、ライリーは複数の防御の間に駆け込みながらのパスで味方を活かした。

 メインを含む三者が共通するのは、身体の正面のどこかをゴールライン、もしくは対面に向けながらスペースにボールを放っていることか。

バックスリーの無形の力

 仕留め役のウイングは爆発力のある2人。まずブレイブルーパスのジョネ・ナイカブラは、文句なしのスピードと強烈なタックルが光った。ワイルドナイツのマリカ・コロインベテは、ラインブレイクで魅したうえに防御のカバーリングでも存在感を示した。

 反対側の竹山晃暉は球をもらう瞬間に大外へ駆け出したり、防御がグラウンド中央側を向いている隙にその背後へ回り込んだりと、「トライへの嗅覚」ならぬ、トライを取るまでの合理的な道筋を探る力を発揮した。かような資質はスティーラーズの山下楽平、サンゴリアスの尾崎晟也にも見られた。

 身体能力のみに頼らぬ無形の力が見られたのは、フルバックの野口竜司も同じ。高い打点でのハイボールキャッチ、スペースへ仕掛けながらの長短を織り交ぜたキック、敵陣ゴール前で球を得てからのフットワーク…。堅守速攻型のワイルドナイツを最後尾から支えた。

 ヴェルブリッツのフルバックで抜群のキック力を誇るウィリー・ルルーとのバトルは、3月12日の第9節で見られるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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