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コロナ禍、トンガ災害にリーグワンはいま&ディビジョン1第2節ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
ついに日本デビューのデュトイ(写真:REX/アフロ)

 ラグビー界も社会と不可分にある。この1週間、そう再認識した愛好家はどれほどいるだろうか。

 リーグワンの第2節があった日本時間1月15日午後1時頃、トンガ沖で海底火山の大規模噴火が発生した。同リーグの各クラブにはトンガにルーツを持つ選手が多く、翌日の試合後は多くのメディアがトンガ出身者へ談話を求めた。

 東京・味の素スタジアムでの東京サントリーサンゴリアス対トヨタヴェルブリッツの一戦では、試合後に両軍の指揮官、主将の記者会見のほか、各チームから2名ずつの選手が取材に応じた。

 敗れたヴェルブリッツからはトンガ出身のフェツアニ ラウタイミが登壇し、「昨日昼過ぎに家族と連絡していたら、途中で(回線が)切れちゃって。夜も『家族、大丈夫かな』となかなか寝られなくて…」。勝ったサンゴリアスにはやはりトンガ出身で現日本代表のテビタ・タタフがいるものの、チームスタッフがこう話すにとどめた。

「タタフ選手には試合後のロッカールームでコメントを求めました。家族と連絡が取れていないので、言葉が見つからない、という返事です。きょうは試合へ集中してきたなか、終わったらロッカールームで携帯の着信を確認する状態でした」

 日本ラグビーフットボール協会(日本協会)の岩渕健輔専務理事は、1月19日の定例理事会後にこう話した。

「トンガ(のラグビー)協会には私も個人的に知っている人がいてコンタクトをしていますが、いまだ連絡は取れておりません。情報をいち早く収集し、必要な支援をおこないたいです」

 現地のニーズを把握するのも難しい状況にありながら、災害後最初の理事会後に声明を出したわけだ。来年6月の理事改選への準備も着々と進めるリーダーは、「短期的には経済的、物的な支援を。中長期的には前向きになれるようなイベントを。いつというタイミングを言える段階ではないですが、何かを考えて、動かす」とも示唆した。

 日本協会と別組織が運営するリーグワンでも、クボタスピアーズ船橋・東京ベイが動く。

 22日にノエビアスタジアム神戸でおこなわれるコベルコ神戸スティーラーズとの第3節では、水色のセカンドジャージィに赤い靴下を合わせる。トンガの国旗と同じ色をつけ、支援の思いを伝える。

 チームの岩爪航広報は、16日の段階でコーチ陣から「何かできないか」と問題提起がなされ、いくつかのアイデアのうち今回の施策が18日に採用されたと話す。

 かくしてクラブは契約先のメーカーへ連絡して現物を揃え、19日までに21日発表予定のメディアリリースを作成。20日に実施したマルコム・マークスの合流会見後、公式発表よりも1日早い情報提供へ踏み切った。

 今週のアクションと言えば、昨季トップリーグ王者の埼玉パナソニックワイルドナイツが活動を再開させた。

 1月3日以降に新型コロナウイルスの感染者が続出し、7日の東京・国立競技場での開幕戦(対スピアーズ)、さらには16日の埼玉・熊谷ラグビー場でのホーム初戦(対グリーンロケッツ東葛)を不戦敗としていた。

 ようやくグラウンドへ出られたのは17日から。18日の公開練習時も、マスクをつけながらゆっくりとした動きで攻防の連携を確認していた。坂手淳史主将は言う。

「1週間かけて、ゲームのできる身体をつくらないといけない。火曜(18日)の段階ではそこまで(状態は)高くはないと思いますが、ラグビーへのメンタルとやる気はあるので、それを身体に落とし込んでいけるかが大事だと思っています」

 オミクロン株への置き換えが進んでいると言われるウイルスに、ラグビー界は相変わらず悩まされている。

 9日の開幕節の前日に動きを止めた静岡ブルーレヴズは、第3節を終えてからの本格リスタートを目指せるようになった。

 しかし本稿執筆中の20日、リコーブラックラムズ東京で複数の陽性者と濃厚接触者が発生。22日に味の素スタジアムで予定されていた、東芝ブレイブルーパス東京との第3節を辞退することとなった。

 ディビジョン1開幕から3週間が経ち、予定された6試合中5試合以上がおこなわれた例はない。現場の指導者はこのような趣旨で口を揃える。

「選手にも家族があり、妻が共働きだったり子どもが学校へ通ったりしている。既存の感染対策で全てを抑え込むのは難しい」

 優勝を占う鍵は、それまで「クラブ文化」「指導陣のマネジメント」「選手層」の積にあると言われていた。今回はその項目に「保健所との連携を含めた健康管理」も加えられそうだ。

<ディビジョン1第2節 私的ベストフィフティーン>

 実施された計4試合から選抜。( )内はチーム愛称のみ。背番号は出場時と異なる場合あり。

1、石原慎太郎(サンゴリアス)…自陣で効果的なロータックルを連発。スクラムも概ね優勢。

2、庭井祐輔(イーグルス)…ジャッカルで向こうの攻めをスローダウン。スクラムハーフ周辺のユニットで迷わず身体を当てる。

3、オペティ ヘル(スピアーズ)…突進役として効いた。守っては防御に辛い笛が吹かれるなか、チョークタックルで流れを止めようと奮闘した。

4、ツイ ヘンドリック(サンゴリアス)…グラウンドの端側から折り返す攻撃で最初にパスをもらい、ゲインラインを破る。ターンオーバー、キックチャージも。

5、ジェイコブ・ピアズ(ブレイブルーパス)…タックルまたタックル。相手ボールのラインアウトでも好スティール。

6、ピーター・ステフ・デュトイ(ヴェルブリッツ)…大敗したチームにあってひとり気を吐く。大きく駆け戻っての強烈なタックルにインゴールライン上でのジャッカル。失点されるまでの過程でも、この人が刺さった局面では流れが止まりかけている。

7、ショーン・マクマーン(サンゴリアス)…同じフォワード第3列の下川甲嗣、小澤直輝とともに地上戦でハードワーク。攻めても上記デュトイに当たり勝つ。

8、アマナキ・レレイ・マフィ(イーグルス)…防御の壁にクラッシュ。勝負どころでのジャッカルとカウンターラック。

9、流大(サンゴリアス)…自陣では味方が圧をかけやすいエリアにボックスキックを落とす。スクラム脇での防御も光った。

10、田村優(イーグルス)…自陣から攻め続けるプランを遂行するにあたり、浅め、深めと多角度へのパスを操る。バックスペースへのキックも精度が高い。

11、羽野一志(シャイニングアークス)…果敢に防御を破る。

12、中村亮土(サンゴリアス)…バックスペースへのキック、ゲインライン上でのおとりの動きでチャンス作る。強烈なタックルと素早い起立も80分間、全うした。

13、梶村祐介(イーグルス)…ジャッカル、突破時のフットワーク。

14、ジョネ・ナイカブラ(ブレイブルーパス)…快足を飛ばしてビッグゲイン。

15、小倉順平(イーグルス)…スペース切り裂く走り。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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