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リーグワン、初めて上位層揃い踏みか?&ディビジョン1第3節ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
昨年日本代表入りのライリー(写真は前年度のトップリーグより)(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 最後のトップリーグで優勝した埼玉パナソニックワイルドナイツが、約2週間遅れでリーグワンの開幕を迎えた。

 1月23日、熊谷ラグビー場。2連勝中と勢いに乗る横浜キヤノンイーグルスのピック&ゴーや、複層的なラインによる大外への展開で防御網を破られるも、最後の最後は決壊を防ぐ。

 10—3とリードして迎えた前半終了間際、正確なタックルと球への絡みで自陣22メートルエリアでのピンチをしのぐ。

 後半開始早々にも、自陣ゴール前での相手ボールスクラムで反則を誘発。続く同12分頃には、フルバックの野口竜司が自陣から蹴り上げたハイパントを、敵陣10メートルエリアまで追いかける。

 ジャンプ。

 空中で競り合った相手の落球を誘い、追加点を促す自軍ボールスクラムを獲得できた。

 まもなくスコアは17―3と広がり、最後は27—3と快勝した。

 堅い防御網を敷いてスマートにキックを使い分け、最後は少ない手数で点を取る。それがこのクラブの文化と言える。ワイルドナイツでは、本来のオープニングゲームの直前に部内でクラスターが発生。イーグルス戦の約1週間前まで2週間ほど活動が止まり、試合勘や体力面で不安の声もあった。

 ただし、多少のブレイクがあったくらいでは文化は廃れなかった。

 殊勲のインサイドセンター、ハドレー・パークスはこうだ。

「コントロールできることを、コントロールする。勢いのあるチームに対し、自分たちから仕掛けることを意識しました」

 ワイルドナイツでは今週も1名の陽性者が出たようだが、チーム発表によるとこうだ。

「1月25日に実施しましたチーム内での新型コロナウイルス感染症の自主検査において、1名が陽性疑いの判定を受け、医療機関にて陽性の判定となりました。検査結果を踏まえ、管轄の保健所に報告の上、これまで陰性判定を受けている者を対象に再検査を行った結果、対象者全ての陰性が確認できたこと、また25日のトレーニングに万全な感染防止対策を実施したことで、管轄の保健所の調査では、今回、濃厚接触者に該当する者が無かったことが確認できました」

 確かにイーグルス戦前の練習では、それぞれマスクを着けたまま汗を流していた。

 また、ここまで陽性者や濃厚接触者疑いの発生で試合を止めたチームも相次ぎカムバック。本稿執筆時点では、開幕から3試合を休んだ静岡ブルーレヴズを含めてディビジョン1全12チームが初めて揃い踏みしそうだ。

 第3節のうちディビジョン1の試合ができたのは計4チームに限られた点を考えると、快挙とも取れる。

<ディビジョン1第3節 私的ベストフィフティーン>

1、クレイグ・ミラー(ワイルドナイツ)…正確なタックルで向こうの走者を仕留め続ける。0―3で迎えた前半には、敵陣中盤での一撃を同僚パークスのジャッカルに繫げ、同点ペナルティーゴールを引き出した。

2、堀江翔太(ワイルドナイツ)…ラックで相手のジャージィを掴み、相手のピック&ゴーを抑制。前半22分頃には、接点に先回りしてのジャッカルでピンチを防いだ。

3、オペティ ヘル(スピアーズ)…自陣からでも強烈な突進で壁を破った。ビッグタックルを仕掛けて球をもぎ取り、突進したシーンもあった。

4、コリー・ヒル(イーグルス)…突進、タックル、ジャッカルと圧巻の仕事量と推進力。

5、アニセ サムエラ(イーグルス)…グラウンド中央付近でのピック&ゴーが効いた。ぶつかり合いの局面へ顔を出す頻度とその折のインパクトが、現体制発足前とはかなり違うような。

6、トゥパ フィナウ(スピアーズ)…巧妙なランコースを駆けてトライ。スイープが激しい。

7、布巻峻介(ワイルドナイツ)…自陣の深い位置での接点でボールへ絡み、向こうのリサイクルを遅らせた。試合開始早々のピンチでもグラウンディングを防ぐ。

8、アマナキ・レレイ・マフィ(イーグルス)…再三のターンオーバー、相手を蹴散らすキャリー。前半9分には、自陣22メートル線付近右でバッキングアップを成功させた。スピードと執念。

9、谷口和洋(スピアーズ)…落ち着いた球さばきが連続攻撃の安定感を生んだ。

10、アーロン・クルーデン(スティーラーズ)…開幕からの連敗を2で止めた要因のひとつは、攻撃ラインに深さを保って相手の圧力を軽減させたから。8点差に迫られた後半35分、相手のコンバージョンゴールをチャージして逃げ切りの下地を作る。橋本大輝主将は「あれがなかったら負けていたかもしれない」。

11、山下楽平(スティーラーズ)…相手の死角で球をもらい、追いすがる防御はフットワークでいなす。キックチェイスでも魅した。

12、ライアン・クロッティ(スピアーズ)…防御を引き付けながらのパスで味方の突破を促す。

13、ディラン・ライリー(ワイルドナイツ)…前半終了間際のハードタックルでピンチ脱出を招く。その他の場面でも相手を仰向けにさせ、攻めては上体を複数の相手に見せながら狭いスペースへパスを送らんとした。速くて強いのに、その速さと強さに頼らない。

14、マリカ・コロインベテ(ワイルドナイツ)…端側、接点付近とあらゆるところで持ち味の突破力を披露。ワークレートの高いメンバーが揃うワイルドナイツのバックスラインに、破壊力のあるこの人が加わるのは脅威。

15、野口竜司(ワイルドナイツ)…チーム初トライはこの人のカウンターアタックから。捕球後にまず中央へ切れ込み、防御をおびき寄せてから大外へ走ってタッチライン際へパス。前掲のようにキック合戦でも光った。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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