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プレーオフの顔ぶれ決まる。共通点は?/リーグワンD1第14節ベスト15【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
ワイルドナイツのガンター。シーズン中盤から戦列復帰(写真提供=JRLO)

 今季の国内リーグワン1部では第14節でプレーオフに進む上位4チームの顔ぶれが固まった。

 5位のコベルコ神戸スティーラーズがクボタスピアーズ船橋・東京ベイに対してミスを重ね、敗北したのを受け、3、4枠目が東京サントリーサンゴリアス、横浜キヤノンイーグルスになった。

 進出一番乗りだった埼玉パナソニックワイルドナイツはこの日もトヨタヴェルブリッツにいくつかチャンスを与えながら、堅守を披露。1人目がタックルし、起立し、その間に2人目が球に絡む。40-7で快勝し、1位を堅持した。

 シーズン中は怪我人を複数、出しながら、多彩なメンバー構成で目指す型を高次で再現した。よい選手を揃えると同時に、そのよい選手を一定の枠組みのもとで運用するという、本当の意味での選手層を有していた。

 南アフリカ代表78キャップのセンター、ダミアン・デアレンデは淡々と言う。

「いままでのところ、いいシーズンを送れています。プレーオフでは相手がタフになることが予想できます。自分たちがやってきてうまくできていたことを継続し、改善できるところもあるのでそれを改善する。(決勝で)トロフィーを持ち上げるまでは、取り組み続けたい」

 2番目にプレーオフ行きを決めていた東芝ブレイブルーパス東京は、この第14節で、入替戦行きの決まっていた三重ホンダヒートに0—7とリードされるも終盤に巻き返す。

 この日は正司令塔のリッチー・モウンガを家庭の事情で欠いていたうえ、空中戦の軸たるワーナー・ディアンズら主軸の多くがリザーブ、もしくはメンバー外に回っていた。それでも最後はヒートが最後にエラー、反則を重ねていたのもあり、ブレイブルーパスは8-7と逆転した。

「ここまでのゴールを達成するのに3つのことが大切だった。まずは選手層。昨日の試合でも選手の変更があったが、何とか勝てた。内部でも競争が高まっている証拠です。もうひとつはチーム内でのリーダーシップ。自分たちのここまでの戦いをご覧になってわかったと思いますが、厳しい試合でも勝てた。リーダーシップが発揮されている証です。あとは一貫性。これは、自分たちにとってすごく大事なこと。すべての試合で大事なことです」

 こう語るのはトッド・ブラックアダーヘッドコーチ。27日には3位の東京サントリーサンゴリアスとぶつかる。場合によっては5月19日のプレーオフ準決勝で再戦の可能性もあるが、指揮官はこうだ。

「最初は自分たちにフォーカスし、パフォーマンスを出す。できるパフォーマンスをして、できる限りの学びを持って帰る。準決勝には準備ができた状態にする」

 かたやサンゴリアスの田中澄憲監督も、このスタンスだ。

「(プレーオフでフル出力するために)リーグで…という余裕もないですし、1戦、1戦、準備、成長していく」

 サンゴリアスは14節で、静岡ブルーレヴズと31-31のドロー。スティーラーズの敗戦を受けプレーオフ行きこそ決めたが、試合当日は序盤の逸機、終盤の反則過多に反省しきり。府中ダービーでは、プレーオフを勝つのに値する集団であるのを証明したい。

 スクラムハーフの齋藤直人は、テクニカルな改善点を挙げる。

「ディフェンスではファーストタックル。アタックでは(防御の近くで)オフロードをするかどうかというプレーのセレクション、また、ブレイクダウン周り。(特に後者は)自分たちのラグビーをやるためにこだわり続けないと。東芝も、そこに(圧をかけて)来ると思うので」

 サンゴリアスはカテゴリーCと呼ばれる海外出身者に怪我人が続出。それでもシーズン中の敗戦から、トップリーグ時代に5度の優勝を勝ち取ったクラブの「スタンダード」の何たるかを見つめ直してこの領域に達した。

 同じタイミングでプレーオフ行きを決めたイーグルスもまた、カテゴリーC勢のうち2名の離脱にさいなまれながらも複層的な攻めを貫いた。途中、痛い星を落としながらも走り切った。

 ファフ・デクラークが抜けたスクラムハーフでレギュラーの座を争う荒井康植は、ライバルの同僚と「助け合いながらやっていこう」と切磋琢磨してきた。かねて、こう述べていた。

「もしプレーオフ行けなかったら、何か、世間は『ファフ・デクラークがいなかったから…』って、思うと思うんですけど、それだけは凄く嫌で。まずは試合に出て、必ずトップ 4(入り)に貢献して行きたい」

 プレーオフ争いでは、集団としてのタフさが問われていた。

リーグワン ディビジョン1 第14節 結果

東京サントリーサンゴリアス 31—31  静岡ブルーレヴズ

横浜キヤノンイーグルス 43―19 三菱重工相模原ダイナボアーズ

トヨタヴェルブリッツ 7—40 埼玉パナソニックワイルドナイツ

三重ホンダヒート 7―8 東芝ブレイブルーパス東京

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 39―29 コベルコ神戸スティーラーズ

花園近鉄ライナーズ 34―23 リコーブラックラムズ東京

リーグワン ディビジョン1 第14節 私的ベストフィフティーン

1,田中健太(花園近鉄ライナーズ)…好スクラム。スイープ。

2,江良颯(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…突然の登場で鋭いタックルを重ねた。

3,ショーン・ヴェーテー(静岡ブルーレヴズ)…途中出場からインパクト。スクラムとぶちかまし。

4,ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…チョークタックル、モール防御、突破役としてもよく前に出た。

5,フランコ・モスタート(三重ホンダヒート)…タックル、ラインアウトスティール自陣ゴール前でのモールディフェンス。

6,ベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…自陣でのジャッカル、エッジでのラインブレイク。

7,ラクラン・ボーシェー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…果敢にジャッカル。翌球出しを鈍らせた。

8,アマナキ・レレイ・マフィ(横浜キヤノンイーグルス)…キャリー、ジャッカル。

9,藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…前半20分頃に防御ラインの広範囲をひとりでカバー。32分には一時勝ち越しのトライをループプレーで演出。総じて鋭い持ち出し、ボールアウトへのプレッシャーが光った。

10,田村優(横浜キヤノンイーグルス)…鋭い防御と入れ違うような仕掛け、パス、対角線上は奥側への絶妙のキックでチャンスを創出。

11,竹山晃暉(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…ロングキック。持ち場と逆側でのチャンスメイク。

12,梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス)…深い角度を保って大外へさばいたり、ゲインライン上で仕掛けて味方を活かしたり。

13,ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…相手のキックパスへの反応。鋭い出足の防御。

14,尾﨑晟也(東京サントリーサンゴリアス)…逆方向へのスイング、持ち場での快走。ロングキックとチェイス。

15,李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)…イグジットのキックが伸びた。途中からセンターに回っても躍動。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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